転生とかもうやめませんか?

ピエロ

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閻魔様

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俺の名前はアキラ。
くそみたいな毎日を過ごしている

毎日が退屈で、まるでメイン動画が再生される前のYouTube広告をずっと見せられているくらい退屈だ

こんな人生なら生まれてくるんじゃなかったなーなんて思う

俺には幼なじみなんていないし、友達と呼べるやつもいない

俺がすごすぎてみんな着いてこれてないのか?

いっその事、異世界にでも行ってリア充ライフ送りてぇよ

死ねばいいのか?

まぁ、俺は童貞じゃねぇし別に死んでもいいか

「プーッ!!!」

「危ねぇ!!」

ドンッ!!



あぁ…体の感覚がねぇ…

クソ…

いや、待てよ?これ異世界ルートじゃないか?
もしくは転生ルートだ!

だいたい人生に嫌気さした辺りでこういう展開が来るんだよ!
きっと目を開ければ美少女が!


「おはよーございます!」

「うぉっ!」

キター!!異世界ルートor転生ルート確定!
しかも俺が好きなロリ体型!これから俺の新たな人生が始まるぜ!!

「ここは…?」

とりあえずとぼけておけばいい。
どうせ時間の問題だったんだ。こっちの世界で新しい人生を…

「聞こえてますよ?」



「ん?」

「心の声、聞こえてます。」

それから一気に景色が変わり、俺はどでかい椅子の前に正座させられていた

そこから横方向に1mほど離れた場所にズラっと俺を挟むように人が並んでいる。この人たちは誰だろう…みんなフードを被ってて顔が見えない。
俺の隣にはさっきの美少女がいる

「これより、ここ『分かれ道』で裁きを決定したいと思います。」

アナウンスが流れると全員がひれ伏せた。

目の前を見るとそこには巨大な男が座っていた

「ふ~む。彼ねぇ」

大男は紙をペラペラとめくりながら俺を見ていた。いや、睨みつけているようにも感じる。

なんだここは

転生…させて貰えるんじゃないのか?

「だから…心の声もれてますから…」

さっきの女の子がヒソヒソ声で俺に話しかける


「彼の名前は小早川アキラ。
職業は学生です。死因は事故死

生前は友達も少なく、かと言って友人を作るような努力もせず、全てを環境のせいにしながら生きていたそうです。
自分より弱いものには強く当たる傾向があり、夢想家でもあります。」

「は?え?夢想家?」

隣の美少女が口早々に俺の事を紹介する。
ありもしないことを…

「それは報告書に書いてあるよ。
君が彼をここに連れてきたのにはわけがあるんじゃないのか?」

この子が俺を連れてきた?
やっぱり!異世界ルートか!?

「…はい、閻魔様」

「閻魔…」

こいつ…閻魔大王か…?

生前の罪を捌くもの…閻魔…

本当だとしたら…まずい…

「この男は生前、少…」
「待て!!!なんだよ!俺を…俺をわざと殺して…おか…おかしいだろ!ええ!!??」

「静かにしろ」

閻魔が呟くと、俺の体は動かなくなりその場で倒れ込んだ。

「くっ…」

「続けます。
この男は生前、少女を対象とし、みだらな行為を繰り返していました。
被害者は近藤あかね10歳、伊藤りょうこ…」

読み上げられていく名前全てに心当たりがあった。

そうだ…

それだけがバレたくなかった。

いつも震えていた。いつバレるのか。

あの子たちがいつ親にチクって俺の人生が終わるのか

このままじゃ…地獄行き…

考えろ考えろ考えろ!!

「ま…て…」

「何か…話したそうだね。
弁明の時間をやろう」

閻魔が俺に指を指すと体の自由を取り戻した

「はぁ…はぁ…そんなのバカげている!!証拠はどこだ!画像でもあるのか!?ええ??
出してみろ!あるなら!」

無いはずだ。
運がいい。

俺は先日、こんなことを繰り返していてはダメだと思い直り、写真を全て消した。
大丈夫…大丈夫…

「ありますが…」

ええーん!あるのぉーん?

「ま…まて…今の世の中そんなの簡単に作れる…そもそも…ここに物体を持ち込めるのか?…分からない…くそ…」

「だから、心の声漏れてますよ?
そうだ。心のフォルダーを見れば簡単なことです。ここに来る直近1時間程度を再生するだけでも分かることでしょう」



『いっその事、異世界にでも行ってリア充ライフ送りてぇよ

死ねばいいのか?

まぁ、俺は童貞じゃねぇし別に死んでもいいか』

『キター!!異世界ルートor転生ルート確定!
しかも俺が好きなロリ体型!これから俺の新たな人生が始まるぜ!!』

「あ…あ…」

「童貞じゃないんですよね。彼女も友達もいないのに。あなたの顔を見る限りモテそうもないですし、モテるような要素ももちあわせていない。そうなると誰かを騙すか無理やりヤるしか方法はないと考えられます。
後半のロリコン発言も証拠となりうるかと思います。

以上です閻魔様」

「なるほど。じゃ、地獄行きで!」

待てよ…

待てって

なんだよそれ…

「俺の…生前の振る舞い全部見て決めるんじゃねぇのかよ!!こんなことで地獄行き?他にももっと酷いことやってるやつたくさんいるぞ!ふざけんじゃねぇよ!!」

俺は閻魔の元に走った
1発ぶん殴ってやる

そう思っているうちに閻魔は視界から消え、目の前には地面があった

「ぐっ…」

叩きつけられたのか?
早すぎて…分からなかった

閻魔は俺の頭を人差し指と親指で掴み、俺を見下ろしていた

「お前の生前全て?
退屈すぎて屁が出る。
なんでつまらないものを俺が見なければいけない?人生つまらないと思ってたんだろ?そう思ってる時点でお前に価値はないんだよ。
お前が行動しなかった結果がこれだ!
少女に手を出す行動力ならいらなかったのにな…ハッハッハッハ!!

よし、連れて行け」

俺はフードを被った奴らに担がれた

「まて…まて!!いやだ!!いやだ!!」






目を覚ますと少し黄ばんでいる白い天井が見えた。

少し横に目をやると母さんが泣いている姿と、看護師さんらしき人の憐れな姿をみる目があった

(母さん)

声が出ない
声帯が潰れているのか?

それなら手を…

手が…無い

足は?…無い…

無い無い無い無い無い無い!!
これじゃ生きてても仕方がない…




「お母様…残念ですがこのまま意識が戻らないようでしたら…いや、戻ったとしても彼はこの先長く生きて行けません。
安楽死という選択肢もありますが…」

そうだ…このまま…

「あきら…あきらぁ!!」

母さんが俺が起きたことに気がついた

母さんのかけているメガネが反射し、一瞬己の姿を確認することが出来た。

顔には包帯が巻かれていたが顎の部分が大きく削れていることがわかった。

「ころ…ひて…」

「なに?生きたいの!?そうよね!生きたいわよね!!私がいるから!私が!!」

殺してくれ…

頼む…

こんな姿で生きていくなんて

地獄だ。






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