ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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獅子国編

白角は今までを振り返る

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 儂の娘の赤雪は、小さな頃から、とても綺麗で可愛いと評判の娘であった。赤雪の下に2人の娘もいたが、貴族によくいる普通に綺麗なだけの娘で、赤雪の様に飛び抜けて綺麗ではなかったがのぅ。

 妻の赤穂に一番似ていたのも赤雪であった。その妻も、3人目の娘を産んだ時に亡くしてしまったのだが。

 儂の贔屓目ひいきめがあったが、3姉妹は儂の娘で、亡き妻の残した子なのは変わりなく、下の娘2人も可愛がって屋敷で育てたものだ。

 赤雪は皇妃になった途端に、愛人の子供を産んだり、数え切れない程の男と閨を交わしたりして、気苦労が絶えなかったわ。亡き妻は儂一人だけを見ていてくれたがのぅ、赤雪はチヤホヤされると図に乗ってしまい、元来の奔放さに拍車がかかってしまうのだ。

 何度もその奔放さを矯正しようとしたが、その度に赤雪が逃げてしまいよる。そのせいで後始末をする羽目になったのだが、儂も疲れてしまったわ。娘婿の皇帝にも苦言を言ってしまう程、儂も耄碌したんじゃろう、な。

 儂が死ぬまで赤雪の後始末をするのにも疲れたわい。公爵家当主の地位は下の娘達に譲っておるし、下の娘達で共同統治しておるから、大丈夫じゃろう。

 そうして、皇帝には儂が引退をする事を告げたのじゃ。暫くは、皇帝が儂の影武者を演じて、皇帝と宰相の仕事を皇帝と白星とで分担すると言っておったから、そちらも平気じゃろう。

 儂は王族専用の牢で幽閉されることを望んだのだ。仕事で判らない事を聞きに来る皇帝や白星の姿に満足し、外の情報を密偵が定期的に知らせてくれるので、中々、快適な幽閉生活であったわ。

 ただ、赤雪は、他国でもやらかしていた様じゃ。皇妃であった赤雪に付けた密偵が優秀であったので、他国の王族を巻き込んで揉み消していた様での、儂が気付いた時には手遅れじゃった。

 儂が母を亡くした赤雪が不憫で、望んだ事は何でも叶えたのが間違いだったのだろうと、今は思っておる。だが、下の娘達は自立して、たまに茶を飲むだけだった事を思い出していたんじゃ。

 赤雪は、いつか他国で処刑される様な事をするんだろうて。今でも玩具を欲しがる子供のままでいるんだのぉ、最後まで大人にはならなかった。儂はそれを悔いるだろうが、その感情も、儂が赤雪を育てたせいだろう。甘んじてその感情ごと受け止めようぞ。

 白虹を赤雪が産んだ事に手を回して情報操作をしたが、赤雪は機嫌の良い時は猫可愛いがりをするだけで、機嫌が悪いと八つ当たりや怒りをぶつけていたのぉ。

 白星は産んだすぐ後から乳母に任せっきりで、母親らしい事は何もせんでいた。男の子はよく分からないと言って、文句や要望のある時だけしか話しかけなかったのぉ。八つ当たりはしていたがな。

 孫達には不憫な思いをさせてしまったが、赤雪に巻き込まれないうちに、皇帝に相談して、白虹と青水仙は獅子国から異界渡りであっちの世界に逃がして良かったわ。白星が皇帝になってから、呼び戻せばいいと話はついているからの。

 白星に子が出来たと聞いたし、曾孫が産まれるのが楽しみだのぅ。

 ん?なんじゃ?密偵からの報告か。

「……赤雪が。ナーオ・ロウ国で…。処刑も決まったか…。…そうか、刺客にされた愛人が一緒に死出の旅に出てくれるのか。一人でないだけ、マシじゃろう。…赤雪の処刑の日は儂には知らせなくてもよい。ただ、白虹と白星にはあんなでも母じゃて、知らせておいてくれ。…頼む。」

 密偵にそれだけは伝えてから、考えたのじゃ。赤雪がナーオ・ロウ国で王族の暗殺をたくらみ、ナーオ・ロウ国を手に入れようとしていて、実行しようとしたが未遂で終わったと。
 儂の王太子の婚約者を日本に送った件もバレているだろうのぉ。皇帝が儂になり替わっていたが、それも赤雪がナーオ・ロウへ行く前に引退させているから、儂はまだ殺されないだろうて。

 獅子国としては儂の宰相としての知識をまだ欲しているのだろうからのぉ。ひ孫の顔は見れるだろうな。白星はあれでも、優しいからの。 

 儂も長生きをしたわい。どれ、昼寝でもして、亡き妻の赤穂に赤雪の事を詫びなければな。もう少し、この国の生末いくすえを見てから、赤穂の所へ行くと伝えでもしておこうかの。
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