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プロローグ
しおりを挟む本作品に関する質問、誤字の指摘などは、コメントでどんどんお願いします。
あと、今回は一話目なので、かなーり長めです。
ーーーーーーー
夜。
横顔を月明かりに照らされながら、俺、佐藤優太は、住宅街のすみにある公園でブランコを揺らしていた。
現在、俺は過去最大級のピンチに陥っている。
親無し、家無し、金無し、職を見つけるアテも無し。
健全な高校生(17歳)である俺が、なぜそんなピンチに陥っているかというと__________
_________時間を夕方にまで遡る。
俺はいつも通りバイト先である某運送屋に出勤した。
「ばんわー。佐藤優太、今日も元気に出勤しましたー」
「おう、ユウ坊。こんばんわー」
早速、正社員で俺の監督的なことをしているおっさんがあいさつを返してくれた。
他にも段ボールを抱えていた別のおっさん数人があいさつしてくる。
ちなみにユウ坊というのは俺の愛称だ。
「よーユウ坊。もうそんな時間か」
「大丈夫か?高校行って帰って来てすぐこっち来てんだろ?」
「立派だよなぁ~、お前はユウ坊とおんなじ位の年の時.....」
「わーーー!?おい、言うなよ!?絶対言うなよ!?」
「おっ、フリか?言って欲しいのか?」
「ちげえよ!!!」
ドッと笑いが起こる。
見ての通り、ここはかなりアットホームな暖かい職場だ。
俺は毎日、学校帰りにこの愉快なおっさん達と仕事をしていた。
両親が七歳の時に死んでから、血縁者全員にたらい回しにされた俺が、必死に勉強して高校に受かって、家を飛び出し上京してきて、初めて見つけたバイト先がここだった。
最初はちょいちょい怒られたりしたが、今じゃちょっとした憩いの場だ。
と、その時、バンッ!と奥のドアが勢いよく開いた。
奥から陰険小デブメガネハゲこと社長がのそのそと出てくる。
そして笑っていたおっさん達を睨み付けて一言。
「うるさいぞ!仕事をしろ!」
.......。
場の空気が急速に冷めていく。
こういうこと言っちゃうから、このハゲは。
このハゲェェェェ!と、怒鳴りたくなる。
この職場で唯一不満があるとすれば、あのハゲ社長である。
なぜこんな暖かいおっさん達を束ねているのがあのハゲなのか。
甚だ疑問である。
ぐるっとこっちをハゲが睨み付けてきた。
「おいお前!なんだその目は!」
「え、いや.....なんだその目はと、言われましても........」
意味わからんからなんとやら。
と、脳内で俺がふざけていると、ハゲ社長が衝撃発言をした。
「ふん!まあいい!お前は今日をもってクビだ!帰れ!」
「......はぁっ!?」
俺はすっとんきょうな声を上げた。
「ど、どうしてですか!俺、なにもしてませんよ!?」
「そうだ!なにもしていない!だからクビだ!帰れ!」
うわっ、すげえパワハラ。
俺、仕事してない的な意味じゃなくて、悪いことしてないって意味で言ったんだけど......。
しかも毎日ノルマクリアしてるし。
訴えるぞハゲ。
.......あっ、無理だわ、裁判費用無いわ俺。
まさかコイツ、その辺も考慮してやってんのか?
だとしたら流石に引くわ。
その後、おっさん達にも加勢してもらってどうにか撤回させようとしたが、結局俺はその日、アットホームな職場をクビになった。
去り際、おっさん達がなにかを決意したような表情をしていた。
辞表、とか言ってたのも少し聞こえた気がする。
あの運送屋は、長くないのかもしれないな。
そうして職場をクビになった俺は、友達でクラスメイトの賀山 雄平と電話しながら帰路についていた。
「っつー訳で、無職になった」
『いやわかんねーよ。つー訳で無職ってなんだ、意味わかんねーよ。ちゃんと説明しろちゃんと』
「mybestfriendなら、わざわざ俺が言わなくったって感じてくれるはず...!」
『いや、そこまで以心伝心だともう人外だろ。俺は仙人かなんかか?説明めんどくさがんなよ。つかマイベストフレンドって、めっちゃ発音いいなお前』
「わかったわかった、しゃーねーな。出来の悪い友達のために、分かりやすく説明してやるとするか」
『ぶっ飛ばすぞ』
なんていう、 いつも通りのやり取りを終え、俺は詳しい説明をしていく。
ちなみに雄平の偏差値は俺よりけっこう高い。
説明を聞き終えた雄平の言葉には、呆れが混じっていた。
『すげぇなその社長。気に入らねーからクビってか。なあ優太、今って昭和だっけか?』
「バリバリ平成だよ」
だよなぁ?と雄平。
そして、少し心配そうに聞いてきた。
『じゃあお前、金は大丈夫なのかよ?』
「んー.....まあ、学校は奨学金で通ってるから問題無いとして、そうだな。食費を3000円、それから家賃と電気水道その他雑費......」
そして俺はたっぷりタメを作ってから言った。
「全然大丈夫じゃねぇな」
『タメてもカッコよくねーからな』
雄平がさくっと突っ込んでくる。
それから暫く適当に話をして、とりあえず職探すわ、と言って電話を切った。
んー、しかしどうしようか.....
流石にふざけてふわふわ現実逃避している場合ではない。
マジでピンチだ。
と、そろそろ家が見えてくるな。
この角を曲がれば家だ。
上京してきてから住んでいる、建築基準法?は?なにそれ?な時代に建てられた木造ボロアパートである。
悪いところは雨漏り(俺は2階に住んでいる)、家の若干の傾き、すきま風等。
良いところは、家賃が格安、近所に銭湯がある。
以上。
借りてから数日で、将来もし家をまた借りることになったら、絶対に少し値が張ってでもマトモなところにしようと決意したのはいい思い出だ。
角を曲がる。
木造のボロアパートが燃えていた。
_______
______________
_________________________
夜、それもド深夜になってから、俺は解放された。
なにから解放されたかというと、警察の事情聴取からだ。
素直に帰ってきたら燃えていたと言ったら信じてもらえた。
話を聞く限り、どうやら火元は隣に住んでるじいさんの酒とタバコらしい。
遺体で発見されたとかなんとか。
ちなみに家は完全に焼けて灰と化した。
そりゃあもう凄まじい燃えっぷりだった。
感心するくらいよく燃えた。
そして俺の服等も全部燃えた。
現在の俺の所持品は財布、通帳、スマホ、教科書、筆記用具、そして学生服だけだ。
そして話は冒頭に戻る。
「はぁ......」
俺は地面に落ちた自分の影を見詰めながら溜め息をついた。
今後のことを考える。
(普通に考えれば、高校を中退して親戚のとこに帰って、居候させてもらいながら職探しだよな)
そしてまた溜め息をついた。
そして呟いた。
「あーあ、いっそのこと異世界召喚でもされないかな......」
瞬間、足元に、赤く光輝く円が浮かぶ。
「.....はっ!?」
俺は驚いて咄嗟に立ち上がる。
「なんだこれ!?」
よく見れば、その赤い円は俗に言う魔方陣だった。
次の瞬間、俺の意識はスパン、と途絶えた。
_____________
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
クソ長い一話目でしたが、どうだったでしょうか。
次からはもうちっと短くなります。
いやー、毎回これは疲れるので.....
ちなみに、投稿ペースは1日~2日に一話を想定しています。
あ、あと感想、誤字脱字等がもしあれば、コメントお願いします。
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