最初からここに私の居場所はなかった

kana

文字の大きさ
56 / 73
オーギュスト王国編

56 ~レイドリック(レイ)視点~

しおりを挟む
更新が滞って申し訳ございません。






~レイドリック(レイ)視点~



俺は強くなるために騎士団の練習に参加することにした。そこであの小さな少女リリーシアを見つけた時は運命だと思った。

『りりーちあでしゅ。よろちくおねがいちましゅ』

か、可愛い!
めちゃくちゃ可愛い!
舌っ足らずなところも、それを恥ずかしそうにしているところも。

自己紹介が終わると騎士たちが注意事項を述べている間も俺の目は彼女にくぎ付けだった。。

『まずは鬼ごっこだ』

と言った騎士の言葉に周りの子供たちは喜びの悲鳴をあげて嬉しそうに走り出した。
その後ろをリリーシアもついて行くのだが⋯⋯遅い。あれは走っているのか?歩いているのではなく?
子供たちの走る後ろ姿を見たリリーシアの慌てた顔を見て本人は一生懸命に真剣に走っているのだと気付いた。
すぐにでも鬼に捕まってしまいそうなリリーシアに俺は思わず手を差し出していた。

『こっちだよリリーシア』

突然手を掴んだ俺に驚いた顔をしたリリーシアも可愛かった。

『僕と一緒に逃げよう!』

俺よりも小さな手はぷにぷにしていてそこも可愛かった。

結果は言わずもがな⋯⋯一番に捕まった。




『⋯⋯ごめんなしゃい』

小さなリリーシアが申し訳なさそうに謝ってきた。

『僕のほうこそごめんね』

『でも、ありあとう』

照れくさそうだけれど、そう言って笑顔を向けられた。
嬉しくなった俺はここぞとばかりに自然を装って自分の愛称をリリーシアに呼んでもらうことにした。
(昔の俺ってなんてマセていたんだろう)

『僕はレイドリック。レイドリック・マシュー。と呼んで』

『れい?』

舌っ足らずなリリーシアだったが、俺の名はきちんと言えたことに嬉しさが増した。

『そう。僕もリリーシアと呼んでもいいかな?』

調子に乗った俺は不自然にならないように彼女の名を呼べるよう誘導した。

『いいよ~』

素直なリリーシアは笑顔で名を呼ぶことを許してくれた。

この日から俺はリリーシアのになった。
まだ幼かった俺はそれだけで満足だった。

そのうち、いつも元気で裏表のないリリーシアはみんなの人気者になっていった。

ただ⋯⋯訓練遊びが終わる時間になると毎回クロイツ殿下がリリーシアを迎えにきて、土でドロドロだろうが、汗まみれだろうが自身が汚れることも厭わず抱き上げて去って行く。
俺は口にこそ出さなかったが、その姿を見る度に面白くない⋯⋯不満が積み重なって行くのを感じた。

騎士たちに聞けばリリーシアはクロイツ殿下のお気に入りだとか⋯⋯
お気に入り?

毎回リリーシアを揶揄いながら抱き上げ、残った俺たちには綺麗な笑顔を向けて去って行くクロイツ殿下。

当時は分からなかったが、あれは⋯⋯お気に入りなんて可愛いものじゃない。
あれは⋯⋯
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私たちの離婚幸福論

桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

一年だけの夫婦でも私は幸せでした。

クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。 フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。 フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。 更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。

比べないでください

わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」 「ビクトリアならそんなことは言わない」  前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。  もう、うんざりです。  そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……  

あなたの仰ってる事は全くわかりません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。  しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。  だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。 全三話

年に一度の旦那様

五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして… しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

処理中です...