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番外編 〈第25.5話~〉
カルゾメイドの溜息!〈sideナルド〉part6
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「ぅ……つっ……痛って……」
痛み止めが切れてきたようで、息をすると響くようになってきました。
「大丈夫ですか?ナルドさん……」
心配そうに駆けつけてきたのは部下のマリン。
「やっぱり、今日はもうお休みされた方が。肋骨折れてるんですから」
近くのソファーに座るように促され、私は倒れるように沈みこみました。あまりの痛みに脂汗がじっとりと浮かんでくるのが自分でもわかります。
「はい、どうぞ」
タイミングよく、水の入ったコップと痛み止めの錠剤が私の目の前に差し出されました。
「すまない、マリン」
遠慮なく受け取って性急に身体に痛み止めを流し込みました。
「は……ぁ……」
これが効いてきたら動けるようになるでしょう。もう、すこしの辛抱です。
「効くといいですね?」
近頃は露骨に若い女の子に避けられていたのに、マリンは平気なようです。
先日もソーヴェ様の命令とはいえ、私を支えて医務室まで運んでくれたのは彼女でした。
しかし、マリンってこんな、甲斐甲斐しく人の世話を焼くタイプだったんですねぇ。
あんまり人の世話とか興味のない、ドライなタイプかと思ってたんですが……。
こないだ、裏庭で例の箱の処分をしているところを見られてから、やたらと私に構ってくるような気もします。
あの時は隠し通せたと思いますが、結局机に置かれたモノを見られちゃってますから……。
若い子にありがちな興味本位でしょうか。
あの箱の中身が気になるとしたら、あんまりいい趣味とは言えませんね。
……おや?
なぜか今も私をガン見してますけど、どうしたのでしょう。
「マリン、何か私の顔についてます?」
私の言葉にさっと顔を赤らめるマリン。
「?」
「あの~、ナルドさん……」
「……はい?」
「最近、無くしたものとかありませんか?」
「無くしたものですか?」
財布とかを想定して聞かれているのでしょうか?
鞄も鍵も……特に思い当たるものは、ありません。
「いや、特に」
暫く考えてから返答をしました。
「大事なモノ、とか。人に見られたくないものとか?」
「人に見られたくないもの、ですか……」
そう言われると、ついあの箱を思い浮かべてしまいますが、アレは見られたくなくても見られちゃってますからねぇ……。
「実は私、お渡したいものが……」
「マリン!交代の時間!」
マリンの同僚のパロマがバタバタとかけ込んできました。
「あら、お邪魔だったかしら?」
パロマは私とマリンの顔を交互に見て、ニヤニヤしています。
「別に邪魔なんかじゃないわよ……!」
マリンは慌てて事務室を出ていきました。
「どうしちゃったんでしょうか。マリン……」
「執事長、気づきません?」
からかうような口調でパロマが近寄ってきました。
「は?何がですか?」
「恋する乙女の視線ですよ」
「はぁ?全くそんな感じは私は思い当たりませんが……」
「じゃあ、最近やたらとモジモジ、マリンに話しかけられてませんでした?執事長はあからさまに逃げておいでだったから、わかってたんじゃないかと思ってましたけど?」
いや、それは……。
あの箱の中身を知られた後に、裏庭で何をしてたのか?と追及されると嫌だったからですが……。
全く、メイドの若い子たちはコイバナばっかりですね。
こないだまで、筋トレメニューが一番の話題だったカルゾ邸が、最近はヴィンセント様もソーヴェ様もそんなことばかりに振り回されてる気がします。
「そんなに私、あからさまに逃げてました?」
「それは分かりやすく」
「……」
「そんなんだから、執事長はヴィンセント様にも遊ばれてしまうんですよ」
「は?」
「大体、あの箱の中身も執事長のものじゃないですよね?」
「えっ!?」
さすが、頭脳戦が得意なカルゾが誇る天才娘パロマというべきか。気づいていたなら、止めてくれ~!
「パロマ。気づいていたなら何故……?」
結構、私を監禁変態執事呼ばわりして喜んでましたよね?
「すみません、面白くてつい」
パロマがペロッと舌を出す。
「私は何一つ面白くありませんよっ、……痛っ……」
興奮して大声を出したら、胸に響いてしまいました。
「大丈夫ですか?」
「ご心配なく。痛み止めが大分効いてきましたから……」
「今回のケガといい、案外執事長って無茶されますよねぇ」
「ケガとは?」
「その傷ですよ。それ、わざと正面から受けたものですね?何故です?
執事長なら、ソーヴェ様の拳も蹴りもギリギリ避けられたんじゃないですか?少なくとも逃げることはできたと思いますけど」
「……天才にはかないませんね……」
小娘に見抜かれてしまいました。
私がつまらない、ヴィンセント様への対抗心?もしくは武術家としてのプライドで、自分でもソーヴェ様の攻撃を真正面から受け止めきれるのではないか、と判断を誤ったことを。
結果、まだまだ鍛錬も足りず、判断も甘かったことを露呈しただけ、というあまり部下には知られたくない結果になってしまったのですが……。
「あまり、弱い上司をいたぶらないで貰えます?」
「弱いなんてとんでもない。今の手負いの状態でも、この邸でソーヴェ様とヴィンセント様以外に勝てる者はいないと思いますよ」
「買い被りじゃないといいですが」
自嘲する私。
「私の分析力を疑います?」
「いや、信頼していますよ。貴女の分析力はこの国で一番だと思っています」
パロマは本人の希望でメイド兼務になっていますが、軍師としてだけでカルゾ軍に就職しても充分通用するでしょう。
カルゾ邸の事務室でコマゴマとした庶務的なことをさせるのは勿体ない人材です。
疲れていた私は乱れた髪をかきあげつつ、ソファーから身体を起こし、ストレートに思ったまま彼女に言葉にして伝えました。
こうやって起き上がってみると、だいぶ今日一日、身体はムリをしたようですね。う~ん、眼も潤んできました。微熱でしょうか……。
(「はぁ~。マリンが落ちた正体はこれかぁ……」)
何故かマリン同様、パロマは私を見つめて顔を少し赤らめて何かを呟きました。
「執事長、本当にだいぶお疲れみたいですよ……?とりあえず、あとの処理はは引き受けましたので早くお帰り下さい」
パロマは溜め息を一つ、ついたかと思うと私から日報を取り上げ、グイグイと事務室から追い出してきました。
一体、カルゾのメイドたちに何が起こっているのでしょうか。
私は痛む肋骨を擦りつつ、明日の舞踏会のお供に備えて早々にベットで休むことにいたしました。朝にはヴィンセント様が領地からお戻りになられるハズです。
久しぶりに明朝まで、ゆっくりさせていただきます。
それでは、おやすみなさい。
痛み止めが切れてきたようで、息をすると響くようになってきました。
「大丈夫ですか?ナルドさん……」
心配そうに駆けつけてきたのは部下のマリン。
「やっぱり、今日はもうお休みされた方が。肋骨折れてるんですから」
近くのソファーに座るように促され、私は倒れるように沈みこみました。あまりの痛みに脂汗がじっとりと浮かんでくるのが自分でもわかります。
「はい、どうぞ」
タイミングよく、水の入ったコップと痛み止めの錠剤が私の目の前に差し出されました。
「すまない、マリン」
遠慮なく受け取って性急に身体に痛み止めを流し込みました。
「は……ぁ……」
これが効いてきたら動けるようになるでしょう。もう、すこしの辛抱です。
「効くといいですね?」
近頃は露骨に若い女の子に避けられていたのに、マリンは平気なようです。
先日もソーヴェ様の命令とはいえ、私を支えて医務室まで運んでくれたのは彼女でした。
しかし、マリンってこんな、甲斐甲斐しく人の世話を焼くタイプだったんですねぇ。
あんまり人の世話とか興味のない、ドライなタイプかと思ってたんですが……。
こないだ、裏庭で例の箱の処分をしているところを見られてから、やたらと私に構ってくるような気もします。
あの時は隠し通せたと思いますが、結局机に置かれたモノを見られちゃってますから……。
若い子にありがちな興味本位でしょうか。
あの箱の中身が気になるとしたら、あんまりいい趣味とは言えませんね。
……おや?
なぜか今も私をガン見してますけど、どうしたのでしょう。
「マリン、何か私の顔についてます?」
私の言葉にさっと顔を赤らめるマリン。
「?」
「あの~、ナルドさん……」
「……はい?」
「最近、無くしたものとかありませんか?」
「無くしたものですか?」
財布とかを想定して聞かれているのでしょうか?
鞄も鍵も……特に思い当たるものは、ありません。
「いや、特に」
暫く考えてから返答をしました。
「大事なモノ、とか。人に見られたくないものとか?」
「人に見られたくないもの、ですか……」
そう言われると、ついあの箱を思い浮かべてしまいますが、アレは見られたくなくても見られちゃってますからねぇ……。
「実は私、お渡したいものが……」
「マリン!交代の時間!」
マリンの同僚のパロマがバタバタとかけ込んできました。
「あら、お邪魔だったかしら?」
パロマは私とマリンの顔を交互に見て、ニヤニヤしています。
「別に邪魔なんかじゃないわよ……!」
マリンは慌てて事務室を出ていきました。
「どうしちゃったんでしょうか。マリン……」
「執事長、気づきません?」
からかうような口調でパロマが近寄ってきました。
「は?何がですか?」
「恋する乙女の視線ですよ」
「はぁ?全くそんな感じは私は思い当たりませんが……」
「じゃあ、最近やたらとモジモジ、マリンに話しかけられてませんでした?執事長はあからさまに逃げておいでだったから、わかってたんじゃないかと思ってましたけど?」
いや、それは……。
あの箱の中身を知られた後に、裏庭で何をしてたのか?と追及されると嫌だったからですが……。
全く、メイドの若い子たちはコイバナばっかりですね。
こないだまで、筋トレメニューが一番の話題だったカルゾ邸が、最近はヴィンセント様もソーヴェ様もそんなことばかりに振り回されてる気がします。
「そんなに私、あからさまに逃げてました?」
「それは分かりやすく」
「……」
「そんなんだから、執事長はヴィンセント様にも遊ばれてしまうんですよ」
「は?」
「大体、あの箱の中身も執事長のものじゃないですよね?」
「えっ!?」
さすが、頭脳戦が得意なカルゾが誇る天才娘パロマというべきか。気づいていたなら、止めてくれ~!
「パロマ。気づいていたなら何故……?」
結構、私を監禁変態執事呼ばわりして喜んでましたよね?
「すみません、面白くてつい」
パロマがペロッと舌を出す。
「私は何一つ面白くありませんよっ、……痛っ……」
興奮して大声を出したら、胸に響いてしまいました。
「大丈夫ですか?」
「ご心配なく。痛み止めが大分効いてきましたから……」
「今回のケガといい、案外執事長って無茶されますよねぇ」
「ケガとは?」
「その傷ですよ。それ、わざと正面から受けたものですね?何故です?
執事長なら、ソーヴェ様の拳も蹴りもギリギリ避けられたんじゃないですか?少なくとも逃げることはできたと思いますけど」
「……天才にはかないませんね……」
小娘に見抜かれてしまいました。
私がつまらない、ヴィンセント様への対抗心?もしくは武術家としてのプライドで、自分でもソーヴェ様の攻撃を真正面から受け止めきれるのではないか、と判断を誤ったことを。
結果、まだまだ鍛錬も足りず、判断も甘かったことを露呈しただけ、というあまり部下には知られたくない結果になってしまったのですが……。
「あまり、弱い上司をいたぶらないで貰えます?」
「弱いなんてとんでもない。今の手負いの状態でも、この邸でソーヴェ様とヴィンセント様以外に勝てる者はいないと思いますよ」
「買い被りじゃないといいですが」
自嘲する私。
「私の分析力を疑います?」
「いや、信頼していますよ。貴女の分析力はこの国で一番だと思っています」
パロマは本人の希望でメイド兼務になっていますが、軍師としてだけでカルゾ軍に就職しても充分通用するでしょう。
カルゾ邸の事務室でコマゴマとした庶務的なことをさせるのは勿体ない人材です。
疲れていた私は乱れた髪をかきあげつつ、ソファーから身体を起こし、ストレートに思ったまま彼女に言葉にして伝えました。
こうやって起き上がってみると、だいぶ今日一日、身体はムリをしたようですね。う~ん、眼も潤んできました。微熱でしょうか……。
(「はぁ~。マリンが落ちた正体はこれかぁ……」)
何故かマリン同様、パロマは私を見つめて顔を少し赤らめて何かを呟きました。
「執事長、本当にだいぶお疲れみたいですよ……?とりあえず、あとの処理はは引き受けましたので早くお帰り下さい」
パロマは溜め息を一つ、ついたかと思うと私から日報を取り上げ、グイグイと事務室から追い出してきました。
一体、カルゾのメイドたちに何が起こっているのでしょうか。
私は痛む肋骨を擦りつつ、明日の舞踏会のお供に備えて早々にベットで休むことにいたしました。朝にはヴィンセント様が領地からお戻りになられるハズです。
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