アラフォーの悪役令嬢~婚約破棄って何ですか?~

七々瀬 咲蘭

文字の大きさ
88 / 150
番外編〈第一部 終了ボーナストラック〉

番外編 カイロス時間~part5 夜這いは楽し?

しおりを挟む
 抜けるような青空に白い花が浮き上がっていた。有華ユッカ城の庭に植えられた早咲きの桜は今が見頃である。

「昼間っから昼寝とは優雅ですね」
 まだ、午後になったばかり。日ははるか上空高い。

「どうした。敏尖人ヴィンセント
「実は夜這いをしたんです」
「は?」
 俺は居眠りをしていた縁側で敏尖人の台詞に目を擦った。

 こないだコイツが姫を拐っていった時、幸いなことに悲鳴を聞きつけた蒼部ソーヴェ様が変態行為に及ぼうとしている息子を止め、あの時は事なきを得たのだったのだが……。

 蒼部様、だいぶお怒りだったなぁ。


「お前……まだあきらめてなかったのか」
「昨夜も母上の見張りを眠らせて、姫の部屋に侵入したんですが」
 敏尖人は澄ました顔でそう続けた。

「それが……」
 眠っている有瑠アル姫の寝所を目指して、足音を潜めて潜り込んだが、寝所は空っぽだったという。

「どう思います?」
「単にバレて逃げたんじゃないのか?」
「毎日ですか?」
「お前、毎日忍び込んだのか?」
「姫の布団でこの一週間は寝ましたよ。それで実は頼みがあって……」
「やなこった!!」
 俺は速攻で断った、はずだったのだが……。 


§§§

「しっ」
「誰か姫の寝所から出てきたな」
「男か?」
 何故か、俺は有瑠姫の寝所の前で敏尖人と一緒に身を潜める羽目になっていた。

「許嫁がいるというのに、男を引き込むとはなかなかやるな」
「……捕まえましょう」
「あんまり酷いことをするなよ」
 俺は釘を指した。
 無言で頷く敏尖人。

 本当にわかってるかな?


「さて、やっと捕まえましたよ。有瑠姫」
「まさか」
 いや、こっちの世界のアルトならありえるか。アイドルのアルルになるぐらいだからな。

「そのまさかです。私の目は誤魔化されませんよ」
「離せ!」
 敏尖人に腕を掴まれてもがく男は……、有瑠姫と同じ顔をしていた。

 まぁ、予想通り。
 でもどっちかな。男なのか、女なのか。

「本当は男ですね」
 何でわかるんだ、敏尖人。 

「くっ……」
「こんな本能寺からの知らせが来た夜にどこへ行くつもりです?」
「聞かなくてもわかってるだろう。ここを出るつもりだった。どうせ人質の価値がなければ返すつもりだろ?ここは見逃してくれよ」
 懇願する有瑠姫。いや、有瑠斗か?どっちだ。

「まさか。お返しなどいたしませんよ」
 冷たく笑う敏尖人。
「僕は女として育てられたが、男子だ。次の国主たるお前が嫁取りしても子はできない。全く意味をなさないぞ?」  
「それはやってみないとわからないですねぇ」

「え?」
 敏尖人の台詞を聞いて有瑠姫はさぁっと青ざめた。
「実は南蛮渡来の秘薬がありましてね。この世界は広いですから、貴方が孕めるようになるものもきっとありますよ。一緒に頑張りましょうねぇ」
「えぇえ!?」
 有瑠姫の顔が恐怖に歪む。
 未遂だったらしいが、こないだコイツに一体何をされたのやら……。

「さっ、早速色々試しましょうねぇ」
 嬉しそうに有瑠姫を抱えて歩きだす敏尖人。

「いやぁぁぁ……!!お願い、誰か助けてぇぇぇ……!」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...