じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

文字の大きさ
217 / 860
6章 風の守護する都

12-1 ロアからの手紙

しおりを挟む
12-1 ロアからの手紙

「よかったんですか、桜下さん?」

ウィルが俺の隣をふわふわと浮かびながらたずねた。

「よかったってのは、どういう意味だよ?」

「だから、あの王女様にいいように利用される形になってってことですよ」

俺たちはいま、王城の裏門から出て、城下町までの林道を歩いている。ロアと話し込んでいるうちに、外はすっかり茜色に染まっていた。もうじき夕暮れだ。

「別に、一方的に不利になったわけじゃないだろ。俺たちは最大限の利益を得て、それでいて最小限の犠牲で済むようにしたつもりなんだけど」

「う~ん……まあ、そうなのかもしれませんけど……」

ウィルは納得していない顔で、腕を組んで黙り込む。するとライラが、俺とウィルの間にひょこっと顔を出して、俺の腰をつっついた。

「でも、よかったの桜下?だって、勇者ってのになってれば、お金もいっぱいもらえたんでしょ?」

「まあ、な。でも、いまそんなに金が必要なわけでもないだろ。ギリではあるけど、日々暮らしていけてるんだしさ」

「でもでも、ほかにもいっぱいイイことありそうだったじゃん」

「それと引き換えに、俺は自由に旅をさせてもらえなくなるんだよ。ライラたちの未練を探すことも、しづらくなっちゃうんだぞ」

「う。それは、ヤかも……」

「だろ?俺は豪華な馬車でお偉いさんと一緒に旅をするより、お前たちと気ままに行くほうが楽しいよ」

「へへへ、そっか」

ライラはにこりと笑うと、俺の腰にぎゅっと抱き着いた。

「でも、ありがとね。森のこと」

「よせよ、あれこそ俺が勝手に決めたことだ。少しでもライラの気が晴れればよかったけど……」

と、そこまで口にして。俺は、あることに気付いた。

「……ていうか、俺がいろいろ決めちゃったけど。みんな、あれでよかったっけ……?」

俺がいまさら不安そうな顔をすると、ウィルがぷっとふきだした。

「それ、いまさらすぎません?文句があったら、あの場で言ってますよ」

エラゼムもそれにうなずく。

「吾輩としては、桜下殿の頭の回転の速さにただ驚くばかりでした。あの場で、よくあれだけ隙のない交渉をできるものですな」

「そうか?細かいところはぜーんぶロアに投げただけなんだけどな。けっこうしっかり筋書を考えないと、あっさりばれて裏目に出るかも……」

「それはそれ、王女たちが知恵を絞るでしょう。しかし、あれだけ桜下殿が譲歩したのですから、うまく事を運んでもらいたいものです」

「ほんとにな。これでロアがクビになっちまったら、俺との約束もパァだ」

ロアは、なんというか、いっぱいいっぱいな印象なんだよな。そのせいで向こう見ずな行動をしがちに見えるけど、冷静に、慎重に行動してくれれば……

「……」

俺たちがおしゃべりするなかで、フランだけがずっとむっつり黙り込んでいた。あまり機嫌は良さそうじゃないけど、俺は内心でほっとしていた。セカンドミニオンについて、フランは特に疑問を持たなかったみたいだから。俺は人差し指をぬっと伸ばすと、フランのむすっとした後頭部をつんつんつっつく。

「ふらーん。なに拗ねてんだよ」

「拗ねてるわけじゃ……ただ、わたし。あの王女のこと、キライ」

おお、こりゃまた、ずいぶんストレートだな。

「だってあいつ、結局開き直ってた。あなたのこと殺そうとしてたくせに、結局あなたに頼って、生き延びようとしてる。あいつ、自分を悲劇のヒロインかなにかだと思ってるんだよ」

「いや、まぁそれなりに、しんどい立場にいるとは思うけど……」

「……なに?こんどはあいつの肩を持つの?」

「に、睨むなよ。俺だって、ロアを……というか、あの城の在り方すべてを認めたわけじゃないよ。やっぱり、あの勇者召喚の仕組みはおかしい。あんな簡単に、人が殺されていいわけないからな」

「……それでもあなたは、あの女を助けたの?」

「まあ、ロア本人に関しては、そこまで悪いやつじゃないのかもってえ思えたからな。あいつはあいつで、いろいろなしがらみに囚われてるんだろ。それに、ロアが王女を続けてくれたほうが、この先いいことがあると思うんだ」

「いいこと?」

「俺たちは今回の一件で、ロアに貸しを作れただろ?少なくとも、顔見知りにはなれた」

「王家とのパイプができたって言いたいの?」

「それもあるけど、もし俺がこのまま生き残り続ければ、新しい勇者は呼ばれないかもしれないだろ。勇者が増えすぎると管理が大変だって言ってたし、今は戦争もそんなに激しくないらしいからな」

あとでアニに詳しく聞いたところ、勇者は基本的に、一国につき一人しか呼ばれないらしい。そらそうだ、勇者は下手したらこの世界の誰よりも強い。そんなのがうじゃうじゃいたら、逆に征服されちまうもんな。

「つまり、俺が生きてるとロアが知っている限り、新たな犠牲者は生まれない。ロアは俺の能力のこともよく知ってるし、これ以上危険なやつを増やそうとは思わないだろ」

「ああ、そういうこと……あなたって、ほんとに……」

「……ほんとに、なんだよ?」

「なんでもない」

フランは意味深にはぐらかした。なんだろう、ほんとにバカだって言いたいんじゃないだろうな。

「ねえ、それより。あの女からもらったものって、結局何だったの?」

「ああ、これな」

俺はカバンから、ロアに渡された小包を取り出した。あの話し合いの後、すぐに王城を出ようとする俺たちを呼び止め、ロアが渡してきたものだ。人気のないところで見るようにと言われたから、ここまでずっと広げずにいた。

「なぁーんか、いろいろ入ってるんだよな。ごろごろしてるし」

「……開けたら、爆発したりして」

「じょ、冗談言うなよ……」

まさかな……竜宮城の、玉手箱じゃあるまいし。

「でも、あんまりほっとくのも、それはそれで怖いな。どっか、落ち着ける場所で確認したいけど」

「どうせ今夜は、王都の宿に泊まるんでしょ?そこで見てみよう」

「それもそうだな」

思い返せば、今日は朝から昼まで寝て、その後ロアと話しただけで日が沈んでしまった。長いような、短いような一日だったな。



つづく
====================

読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

====================

Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。

↓ ↓ ↓

https://twitter.com/ragoradonma
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...