じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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6章 風の守護する都

13-1 王女の決意

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13-1 王女の決意

翌朝。俺たちは王都の門を抜け、緩やかな傾斜の草原を歩いていた。この道は北部街道と呼ばれ、この先には大きな坑道があり、さらにその向こうには、この国最北端の町がある。俺たちはエラゼムが探している、女城主のいるらしい北を目指すことにしたのだ。

「恩に着ます、桜下殿」

エラゼムがかしゃりと兜を垂れる。

「いいって、どうせどこに行ったっていいんだし。もう後ろを追っかけてくる奴らはいないもんな」

今までは追手を意識しない日はなかったからな。それに比べりゃ、今の旅路は気楽すぎて空も飛べちまいそうだ。

「しかし、よろしかったのですか?いえ、行き先のことだけではなく……王都に、今しばらくとどまってみては、という意味ですが」

「ああ、それな……」

エラゼムがこう言うのにはわけがある。今朝、王都はずいぶんとざわついていたのだ。俺たちはロアからもらった軍資金で、最低限の買い出しだけしてから街を出たんだけど、その時にこの騒ぎの原因を聞くことができた。というのも、今回起こった反乱について、王城が正式に会見を開くとの告示を出したらしいのだ。

「まぁ気にならなかった、と言えば嘘になるけど……でもさ、十中八九、俺たちについて触れられるだろ?そん時に王都にいたら、なにかと面倒に巻き込まれそうじゃないか」

反乱軍を倒したのは実質俺たちみたいなもんだから、それに触れないことはできないだろう。それの説明をする場に、当の本人がいたらどうなると思う?俺のカンでは、ぜーったい面倒くさいことになるぞ。

「ま、ロアがなんとかするだろ。これ以上足止めされるのはカンベンだ」

「左様ですか。出過ぎたことを申しましたな」

「いいって。あーでも、もしテレビ中継でもしてくれれば、この場でも見られるのになぁ……」

だが、さすがにそれは無理な相談だろう。王都のどこにも、家電量販店は見つからなかったし。

「桜下さん、テレビチューケーって、なんですか?」

ウィルが不思議そうな顔でたずねる。

「うん?ああ、そっか。えーっと、離れていても声とか映像が見れてさ……」

その時だった。ドンピシャのタイミングで、俺たちしかいないはずののどかな草原に、突如大量の人のざわめきが流れ出した。ざわざわ、ひそひそ、がやがや、どよどよ……

「わっ。な、なんだ!?」

「カバン!あなたの荷物だ!」

フランが鋭く叫ぶと、俺は大慌てでカバンをひっくり返した。音を発しているのは、カバンの底で布に包まれていたもの……どうやら昨日ロアに渡された、あの水晶玉が発信源のようだ。

「きっ……きゃあー!ほ、ほんとうに、呪いの水晶玉じゃないですか!」

ウィルが真っ青になって叫ぶ。なんだよ、昨日の俺の作り話、馬鹿にしてた割に、真に受けてんじゃねーか。

「っと、そんなことより。いったい何なんだ、こいつは?」

俺は布をはがして、中の水晶玉を取り出す。すると水晶の中には、大勢の人々の姿が映し出されていた。声はその人たちのざわめきらしい。

「な、なんだこれ?」

『……どうやら、魔道具の一種のようです。遠くの映像を映し出す、遠視結晶クレボンストーンの一種でしょうか……』

アニが首の下でつぶやく。遠くの映像を映すって、なんてタイムリーな……てことは、これは小さいテレビみたいなもんってことだろ?

「でも、じゃあこの景色はどこのものなんだろう」

俺は水晶玉の中を覗き込んでみた。みんなも俺のそばに近づき、顔を近づける。どうやら、人々がどこかの広場に集まって、集会みたいなものが開かれているようだ……



ざわざわ、ひそひそ、がやがや、どよどよ……
集まった何万と言う人たちは、互いにささやき合い、ひたいを近づけ、これから始まる出来事について期待を高めていた。
ここはギネンベルナの王都ペリスティル、そこの王城門前の広場だ。今日という日だけは特別に、城門は一般にも開かれ、誰もが城内に入れるようになっている。そこに、城下町に住むほぼすべての町民が押しかけているのだ。城の玄関ホールには到底入りきらず、急きょ玄関の外の広場に誘導したのだが、それでも溢れた人々が城門からもはみ出し、堀に掛かる橋の上まで列をなしている。これほどの数の町民が城に集まったことは、過去の勇者出立に際した祈祷会ですらなかったことだ。それだけこの後に行われる出来事への関心が高いという表れでもあった。
町民がざわつき続ける中、城の正面玄関の上に設けられたテラスに、一人の兵士がやってきた。町民たちはいっせいに口を閉じ、その倍の数の目が一人に集中する。

「ご、ごほん……これより、王女ロア・オウンシス・ギネンベルナ殿下の会見を執り行う」

その兵士は立派な鎧に身を包んでいたが、その動きはどこかを怪我しているかのようにぎこちなかった。立派な鎧の兵士は視線にすこしだけたじろいだが、それでも負けじとセリフを言いきった。
ごくり。ここにいる町民全員が、一斉につばを飲み込んだような音がした。

「では、王女殿下。こちらへ……」

カツ、カツ、カツ。ヒールのかかとを鳴らして、町民たちの前に王女ロアが姿を現した。

「……」

ロアのすこし血色の悪い顔は、下から見上げるとより一層幼く、頼りなく見えた。

「皆の者……」

ロアのかすれた声が響き渡る。その声は魔法で拡張されており、ここに集まった全員の耳にしっかりと届いた。が、それにしてもかすれ過ぎである。ロアもそれを感じたのか、んんっ、と咳払いしてからもう一度言い直した。

「皆の者、今日はよく集まってくれた。これから、一昨日に起こった大規模な暴動について、諸君らに私自ら説明を行いたいと思う」

ロアは手元の羊皮紙を広げると、つらつらと説明を読み上げ始めた。

「先の暴動は、北東部ザキュン領領主、ハルペリン卿を筆頭に起こされたものである。彼らはこの王都に攻め込み、暴力をもってこの国を手に入れんと企てたのだ」

町民たちにざわざわとどよめきが走る。

「それってつまり、反乱ってことじゃないか……」
「王城でも火の手が上がってたわよね?じゃあもしかして、相当危なかったんじゃ……」

ロアはざわつく町民たちの上から、ぴしゃりと言いつけた。

「しかし!今日こうして私が諸君らの前に顔を出しているように、かの者たちの野望はすでに打ち砕かれた。われらはかの者たちを鎮圧し、すでに拿捕だほしている」

ロアがすっと片手を上げると、城の正面玄関が開かれ、中から車輪付きの檻に入れられた、囚人服姿のハルペリン卿が、兵士たちにひかれて姿を現した。

「諸君らもよく知ってはいるだろうが、かの者たちはこの王都で暴虐の限りを尽くし、城下町にも多大な被害をもたらした」

大勢の町民が、うらめしそうに檻の中の男を睨んだ。しかしハルペリン卿はすっかり失意のどん底に沈んでいて、終始檻の床を見つめるばかりであった。

「此度の暴動で被害のでた者たちには、王城から特別手当の支給をする予定だ。対象の者たちは城に申請に来るように……」

「俺たちは、そんなことを聞きに来たんじゃないぞー!」

突然、ロアの声を遮るように、群衆の中から大声が上がった。



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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