じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

文字の大きさ
797 / 860
17章 再開の約束

20-3

しおりを挟む
20-3

外には、ずっと待たされてすっかり不機嫌になったアルルカと、同じくずっと待たされてじりじりしているレーヴェがいた。

「っ!終わったカ!」

「ああ。待たせたな」

「じゃあ、もう行けるのカ?」

「いや、もう少し待ってくれ。今はまだ人が多すぎる。もう少し待てば、隊が動き出すはずだから」

「う、うぅ……わかっタ」

じりじり、うずうずするレーヴェと、それを抱えてうんざりするアルルカと一緒に、五分ほど待った。連合軍が次のフロアへと移動を始めたあたりを見計らって、俺たちはさりげなく壁際に寄り、せかせかと歩き始める。すると前から、ウィルがふわふわと飛んできた。

「ウィル。容体はどうだった?」

「ひとまず、命に別状はないと思います。さすがは魔族ですね」

「そうか、よかった。助かったよ」

「でも、起き上がって喋ることはできないと思います。応急処置しかできていませんから」

まあこの場合はしょうがないだろう。完全に治してしまっては、同じことの繰り返しになりかねない。ドルトヒェンには悪いが、しばらく動けないでいてもらおう。

「てことなんだが、レーヴェ。構わないな?」

「……うん。ドルトが生きているって確かめられたラ、それ以上は望まなイ」

よし。それじゃあ……俺たちは壁伝いに、がれきの山が重なっている所までやって来た。さっきの爆発で、倒れた本棚が積み重なっているんだ。仲間たちに周りを囲んでもらって、俺はレーヴェを抱えて、こっそりと屈みこんだ。

「っ。ドルト!」

うおっと、レーヴェがジタバタ暴れたもんだから、危うく落っことしそうになった。

「しーっ!静かにしろよ!それに、言っただろ。まだ起き上がれないって」

「あっ。す、すまなイ……」

レーヴェは自分の口を押えると、哀れみの目でドルトヒェンを見つめる。
ドルトヒェンは、ボロボロだった。体中のあちこちに、酷い火傷の痕がある。いいや、もっと酷いな。生焼け、という表現が一番近いかも。人間なら間違いなく無事じゃ済まないが、それだけ魔族は頑丈ってことか。
地面に仰向けに寝かされたドルトヒェンのわきに、ロウランが膝をついていた。

「……ちゃんと、生きてるんだよナ?」

レーヴェの問い掛けに、ロウランはしっかりとうなずく。

「生きてるの。怪我がひどいから、絶対安心とは言えないけど……でも、たぶん大丈夫だと思うよ」

「うん……信じル。ドルトはきっと、こんなとこで死にはしなイ」

確かに今できることは、祈ることくらいか。レーヴェはじっとドルトヒェンの姿を目に焼き付けた後、俺へと振り返る。

「でも、どうしてこんなことニ。オマエは、どうやってドルトを助けたんダ?」

「ん?ああ、まあ無我夢中だったとしか……」

あの時、ドルトヒェンが自爆する気だと悟った俺は、地面に残っていた泥の塊……その前に、別の魔法で出していたやつだ。それを操って、自分と、彼女との前に、障壁を作り出した。障壁なんて言っても、一瞬の出来事だったから、せいぜい平皿くらいのものだったと思うが、とにかくそいつは、爆発の威力を辛うじて軽減してくれた。爆心地から離れていた俺たちは、それで十分だったが、ドルトヒェンの場合は命を繋ぐだけで精いっぱいだったんだ。

「……どうしてオマエは、レーヴェたちを助けル?」

俺は回想から、目の前へと意識を戻す。

「どうして、か。その質問は、二度目だな。お前との約束だから、じゃダメなのか?」

レーヴェは、ふるふると首を横に振る。

「レーヴェを助けたのは、情報を訊き出すためだろウ。ならドルトは?なぜ他のニンゲンから隠しているんダ?ドルトを連れて行けば、より多くの情報を引き出せるかもしれないだろウ」

なんだ、妙なことを訊いてくるな。つまり、どうしてドルトヒェンを匿うのか訊いてきているってことだよな?うーん、どうしても言われてもな……

「まあ、確かにお前の言う通り、連合軍に引き渡すってのも手だよ。そうして欲しいのか?」

「して欲しくはなイ。そうしたら、ドルトはきっと辛い目に遭ウ……が、これはレーヴェの望みダ。オマエたちは、レーヴェの仲間ではないだろウ」

「あー。まあそうだが……ちっ、面倒だな。ならいいじゃないか。お前の希望は叶うし、俺たちもそれでいいんだから」

「レーヴェには、よく分からなイ」

「人助けに理由がいるのか?」

「うン?」

「人間、打算で動くときもあれば、そうでない時もあるってことだよ。今回は後者だ。俺は助けたいから、ドルトヒェンを助けた。助けた以上、死なれちゃ困るだけだよ」

まったく、たったこれだけのことを、どうしてこんなに丁寧に説明しなくちゃいけないんだ?
レーヴェはしばらく黙って、それからおもむろに口を開いた。

「オマエは、バカなのか?」

「はあっ?」

ば、バカ?俺はあんぐりと口を開けた。アルルカは声を抑えて笑っていやがる。

「ニンゲンは、もっと賢い生き物だと思っていたゾ。だから、あれだけ数を増やせたんだト。けどオマエは、ちっとも人間らしくないナ」

「…………」

アルルカはうつむいてブルブル震えている。あのやろう……覚えとけよ。

「で?俺がバカだと悪いのか?」

「そんなことはなイ。おかげでドルトは助かっタ。オマエのようなバカがいて、レーヴェたちは運がよかっタ」

アルルカはとうとう腹を抱えて笑い出した。あいつは後でぶっ飛ばす。絶対。

「世話になった礼ダ。一つ教えてあげル」

ん?俺が不貞腐れていると、レーヴェがそんなことを言ってきた。礼だって?

「レーヴェの任務のことダ。レーヴェたちは、勇者の能力を探れと命じられていタ。魔王様は、オマエたち勇者を、特別に警戒していタ」

「……勇者を?それと、俺は元勇者だ」

「元でもなんでも関係ない、特別な能力を持つニンゲンのことダ。そしてレーヴェは、きちんとその任務をやり遂げたと思ウ」

つまり、俺たちの手は筒抜けってわけか。まあ、おおむね予想通りだな。

「そりゃ有り難いよ。で?それだけか?」

「あと、もう一つ……魔王様の能力についてダ」

なんだって?そいつは、見逃せないぞ。

「なんなんだ、魔王の能力ってのは」

「うン。魔王様は、闇の魔力を持っていル。ドルトがそう言ってタ」

「闇の魔力……話に聞いてるよ。やっぱり、本当なんだな」

「でも、それだけじゃなイ」

「え?」

「それだけじゃなイ……魔王様には、もっと不思議な力があル」

もっと不思議な……?俺はさっきまでの怒りを忘れて、思わず聞き入っていた。

「それは、なんだ?」

「レーヴェも、よく知らなイ」

がくっ。なんだよ、肝心なところが抜けてるじゃないか。

「でも、気を付けロ。魔王様はコウカツだ。油断するなヨ」

「せいぜい胸に刻んどくよ……でも、いいのか?いちおうお前、魔王軍だろ」

「いい。レーヴェが頑張ってたのは、ドルトのためダ。ドルトが無事なら、後はどうでもいイ」

い、潔いな……この子にとって、ドルトヒェンはそれだけ大きな存在ってことか。

(レーヴェもだけど……ドルトヒェンも、そうだったんじゃないか)

彼女は、レーヴェを何とも思っていないと言っていた。けど俺には最初から、ドルトヒェンは死を覚悟していたように見えたんだ。それに、彼女の最後の言葉。「レーヴェを、よろしくお願いします」、だぜ?今から刺し違えようって相手に吐くセリフじゃない。

(俺たちの保護下に、レーヴェがいることを知った。その上で、妥協や譲歩もせずに、死を選んだ……)

まるで、それ以外に道は無いと言わんばかりに。
彼女はああする以外に、自由になる道はなかったんじゃないか?その上で彼女は、レーヴェのことを守ろうとした。一対一の戦いでなら、俺たち一人一人と対話をすることができる。そのなかに信用できそうなやつが居れば、レーヴェのことを託して、自らは……
これは全部、俺の妄想だ。だけど。

(胸糞わるい話だぜ、ちくしょう……)



つづく
====================

読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

====================

Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。

↓ ↓ ↓

https://twitter.com/ragoradonma
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...