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17章 再開の約束
32-6
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32-6
「お前ら全員……一人残らず、消してやるよ」
くっ……!あと一息だと思ったのに、やっぱりダメなのか!
「セカンド!よく考えろ!今しか、引き返す道はないんだぞ!」
「引き返す……?なんだそりゃ。まるでよ、このオレが間違ってるみてぇな言い方じゃねーか」
「なに……?だから、さっきからそう言ってるだろ。お前も分かってるはずだ!」
「いいや、違うね。テメェの話は、そこんとこを再確認させてくれたぜ」
「は?どういう……」
「テメェは言ったな?オレに罪を認めろだとか、新しい土地でやり直せだとか。だがよぉ、なんでオレがどっかに行かなきゃなんねえ?」
セカンドは親指を突き出すと、まっすぐ地面に向けた。
「だったら、テメェらが消えればいい話だ」
「お前……!」
セカンドの目が、狂気に踊っている。
「どうしてオレが悔いる必要がある?オレは努力した。その努力を認めなかったのはテメェらだ。悪いのは、そっちだろうが」
「お前……気は確かか!」
「お前こそ、忘れたわけじゃねぇだろうな?最初に裏切ったのは、そっちが先だぜ」
くっ、勇者の記憶が消されたことを言っているのか。その時の禍根が伸びに伸びて、今にまで影を落としている……!
「けど、確かにオメェの言うことも一理あるぜ。ここまでこじれちまったら、確かに一からやり直したほうが早いな。んじゃまあ、手始めにオレのこと知っている奴ら、みんなぶっ殺してキレイにするか」
「ばっ……!本気で言ってんのか!大陸から人っ子一人いなくなっちまうぞ!」
「いいじゃねえか。海の向こうにも、人間はいるんだろ?そいつら連れてきて飼えばいい。今度は最初から、オレのことを好きになるように調教してな。ほーら、そうしたらオレさまの国ができあがるぜ!」
こいつ……!港で別れたマリカやトネリコたちが、セカンドの奴隷にされている姿を想像すると、全身に鳥肌が立った。
「そんなこと……絶対に、できやしない」
「ハッ、テメェらザコには無理だろうがな。オレの力があれば、なんだってできんだよ。オレだけの大ハーレムを作ることも、オレを神とあがめる王国を創ることだってな!」
「ふざけんな!俺が、させないっつってんだよ!」
「だったらぁ!」
セカンドは弾かれたように立ちあがった。同時にフランが俺の前に立ちはだかり、鉤爪を構える。
「まずはテメェからだ!次にこの場にいる全員!そして国中の連中、みんなぶっ殺してやる!」
こんの、くそったれめ!フランが俺をかばい、後ろに下がらせる。彼女の無言の背中は、これ以上の交渉が無意味であることを語っていた。
「ざぁんねんだったな!テメェの切り札も、オレの鎧を剥がすまでは行かなかった!そしてテメェは、もう一度あの技は使えない!」
もうこちらの手の内はバレバレだ。確かに俺はもう、ソウルレゾナンスを使えない。だが、状況はさっきほど絶望的ではないはずだ。セカンドは強気にまくし立てているが、奴はただ立っているだけで、攻撃をしてこない。それだけやっとという事だろう。
(あいつだって、相当の魔力を消費したはずだ)
現に奴の鎧は、さっきまでの輝きが嘘のように、黒くくすんでいる。エラゼムの刃が、奴をそこまで追い詰めたんだ。
「フラン!こうなったら、ぶん殴ってでも従わせるぞ!頼む!」
今戦えるのは、彼女しかいない。フランはこくりとうなずくと、猛然と駆け出した。
「チィ!骨だけのクズが、うっとぉしいんだよ!」
セカンドは手から槍を生成した。だが次の瞬間、槍は先端からボロボロと崩れ始めた。何かの罠かとも思ったが、違う。セカンド本人が、一番動揺している。フランはその隙を見逃すほど甘くはない。
ガァン!
「ぐああぁ!」
セカンドが、吹っ飛ばされた!今までよろける程度だったのに、奴は勢いよく後方に飛んだ。そのまま地面を転がる。
「く、そ……!?」
ボロ、ボロロッ。奴を包んでいた黒い鎧が、崩れ始めている……!
「……奴の魔力の、限界だ!」
俺の声に合わせるように、フランが奴を仕留めに掛かった。だが、あらゆる武人の力を宿すセカンドの体は、まだ動き続ける。奴は即座に立ち上がると、くるりと背を向け、全速力で走り出した。逃げ出すつもりか……?
「……!まさか、まずい!フラン、そいつを逃がしちゃダメだ!」
奴の背後には、ヘルズニルの城門がある!あいつ、中に逃げ込んで、力を回復させる気だ!あいつの闇の魔法“イーターケルベロス”を使えば、他者の生命力を奪い取ることができる。中に“命”が一つでもあれば、奴は力を回復してしまう!
フランも懸命に後を追うが、わずかにセカンドのほうが早い!奴が奪ってきた超人たちの身体能力は、魔力の量とは関係なしに発揮されるんだ……!
「ヒャハハハ!いい所まで行ったのに、残念だったなぁ!」
くそ!このままじゃ、また振り出しに戻っちまう。そうしたら今度こそ、取り返しがつかないぞ!
フランの必死の追跡もむなしく、セカンドが城の入り口に辿り着く。が、その時だった。グググ……ガラガラガラ!
「っ!?」
「なっ!?」
なんだ!?突然、ものすごい音と共に、大量のがれきがセカンドの頭上に降ってきた!俺は思わず城を見上げる。壁に大穴が空いていて、そこから落ちて来たようだが……
「あの穴……」
俺たちが、化けサソリとの戦闘で空けた穴か?その淵には、何人もの人影が見える。あれは……まさか!
「ヘイズたちか!?連合軍の連中だ!」
ズガガァァァン!ガラガラガラ!
連合軍が落としたがれきの山は、セカンドを直撃した。轟音が響き、粉塵がもうもうと舞う。俺は目を押さえて土煙からかばいながら、前を睨んだ。普通なら、あれだけのがれきがぶち当たって、無事で済むはずがない。奴の魔力が限界に近い今なら、なおのことだ……
「やったのか……?」
土煙が次第に収まってくる。がれきの山は、しんと静かだが……
つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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くっ……!あと一息だと思ったのに、やっぱりダメなのか!
「セカンド!よく考えろ!今しか、引き返す道はないんだぞ!」
「引き返す……?なんだそりゃ。まるでよ、このオレが間違ってるみてぇな言い方じゃねーか」
「なに……?だから、さっきからそう言ってるだろ。お前も分かってるはずだ!」
「いいや、違うね。テメェの話は、そこんとこを再確認させてくれたぜ」
「は?どういう……」
「テメェは言ったな?オレに罪を認めろだとか、新しい土地でやり直せだとか。だがよぉ、なんでオレがどっかに行かなきゃなんねえ?」
セカンドは親指を突き出すと、まっすぐ地面に向けた。
「だったら、テメェらが消えればいい話だ」
「お前……!」
セカンドの目が、狂気に踊っている。
「どうしてオレが悔いる必要がある?オレは努力した。その努力を認めなかったのはテメェらだ。悪いのは、そっちだろうが」
「お前……気は確かか!」
「お前こそ、忘れたわけじゃねぇだろうな?最初に裏切ったのは、そっちが先だぜ」
くっ、勇者の記憶が消されたことを言っているのか。その時の禍根が伸びに伸びて、今にまで影を落としている……!
「けど、確かにオメェの言うことも一理あるぜ。ここまでこじれちまったら、確かに一からやり直したほうが早いな。んじゃまあ、手始めにオレのこと知っている奴ら、みんなぶっ殺してキレイにするか」
「ばっ……!本気で言ってんのか!大陸から人っ子一人いなくなっちまうぞ!」
「いいじゃねえか。海の向こうにも、人間はいるんだろ?そいつら連れてきて飼えばいい。今度は最初から、オレのことを好きになるように調教してな。ほーら、そうしたらオレさまの国ができあがるぜ!」
こいつ……!港で別れたマリカやトネリコたちが、セカンドの奴隷にされている姿を想像すると、全身に鳥肌が立った。
「そんなこと……絶対に、できやしない」
「ハッ、テメェらザコには無理だろうがな。オレの力があれば、なんだってできんだよ。オレだけの大ハーレムを作ることも、オレを神とあがめる王国を創ることだってな!」
「ふざけんな!俺が、させないっつってんだよ!」
「だったらぁ!」
セカンドは弾かれたように立ちあがった。同時にフランが俺の前に立ちはだかり、鉤爪を構える。
「まずはテメェからだ!次にこの場にいる全員!そして国中の連中、みんなぶっ殺してやる!」
こんの、くそったれめ!フランが俺をかばい、後ろに下がらせる。彼女の無言の背中は、これ以上の交渉が無意味であることを語っていた。
「ざぁんねんだったな!テメェの切り札も、オレの鎧を剥がすまでは行かなかった!そしてテメェは、もう一度あの技は使えない!」
もうこちらの手の内はバレバレだ。確かに俺はもう、ソウルレゾナンスを使えない。だが、状況はさっきほど絶望的ではないはずだ。セカンドは強気にまくし立てているが、奴はただ立っているだけで、攻撃をしてこない。それだけやっとという事だろう。
(あいつだって、相当の魔力を消費したはずだ)
現に奴の鎧は、さっきまでの輝きが嘘のように、黒くくすんでいる。エラゼムの刃が、奴をそこまで追い詰めたんだ。
「フラン!こうなったら、ぶん殴ってでも従わせるぞ!頼む!」
今戦えるのは、彼女しかいない。フランはこくりとうなずくと、猛然と駆け出した。
「チィ!骨だけのクズが、うっとぉしいんだよ!」
セカンドは手から槍を生成した。だが次の瞬間、槍は先端からボロボロと崩れ始めた。何かの罠かとも思ったが、違う。セカンド本人が、一番動揺している。フランはその隙を見逃すほど甘くはない。
ガァン!
「ぐああぁ!」
セカンドが、吹っ飛ばされた!今までよろける程度だったのに、奴は勢いよく後方に飛んだ。そのまま地面を転がる。
「く、そ……!?」
ボロ、ボロロッ。奴を包んでいた黒い鎧が、崩れ始めている……!
「……奴の魔力の、限界だ!」
俺の声に合わせるように、フランが奴を仕留めに掛かった。だが、あらゆる武人の力を宿すセカンドの体は、まだ動き続ける。奴は即座に立ち上がると、くるりと背を向け、全速力で走り出した。逃げ出すつもりか……?
「……!まさか、まずい!フラン、そいつを逃がしちゃダメだ!」
奴の背後には、ヘルズニルの城門がある!あいつ、中に逃げ込んで、力を回復させる気だ!あいつの闇の魔法“イーターケルベロス”を使えば、他者の生命力を奪い取ることができる。中に“命”が一つでもあれば、奴は力を回復してしまう!
フランも懸命に後を追うが、わずかにセカンドのほうが早い!奴が奪ってきた超人たちの身体能力は、魔力の量とは関係なしに発揮されるんだ……!
「ヒャハハハ!いい所まで行ったのに、残念だったなぁ!」
くそ!このままじゃ、また振り出しに戻っちまう。そうしたら今度こそ、取り返しがつかないぞ!
フランの必死の追跡もむなしく、セカンドが城の入り口に辿り着く。が、その時だった。グググ……ガラガラガラ!
「っ!?」
「なっ!?」
なんだ!?突然、ものすごい音と共に、大量のがれきがセカンドの頭上に降ってきた!俺は思わず城を見上げる。壁に大穴が空いていて、そこから落ちて来たようだが……
「あの穴……」
俺たちが、化けサソリとの戦闘で空けた穴か?その淵には、何人もの人影が見える。あれは……まさか!
「ヘイズたちか!?連合軍の連中だ!」
ズガガァァァン!ガラガラガラ!
連合軍が落としたがれきの山は、セカンドを直撃した。轟音が響き、粉塵がもうもうと舞う。俺は目を押さえて土煙からかばいながら、前を睨んだ。普通なら、あれだけのがれきがぶち当たって、無事で済むはずがない。奴の魔力が限界に近い今なら、なおのことだ……
「やったのか……?」
土煙が次第に収まってくる。がれきの山は、しんと静かだが……
つづく
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