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第一章
第69話/Succubus
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第69話/Succubus
「キャーーー!変態ーーー!」
「うわぁ!違うんだ!」
「……ん?なんだか騒がしいね」
「あら、よそ見?今夜はあたしだけを見てくれるんじゃなかったの?」
「おっと、そうだった。おいで、仔猫ちゃん。たっぷり可愛がってあげよう」
ラミーは、下品な指輪がたくさんはめられた手を、あたしの腰にまわした。どうでもいいけどこいつの指、太いのよね。指輪のせいで、縛られたハムに見えるわ。
「さあ、ここだ。ようこそ、我々の愛の宮殿へ……」
ラミーが個室の扉を開けた。
中はいたって普通のホテル、といった風体だった。ベッドに薄紫の天蓋がかかっているのが実に悪趣味だわ。
(どこが宮殿なんだか……)
内心呆れながらも、にこりと笑顔を返しておく。
「さて……」
腰にまわされたラミーの手が、あたしの体をいやらしく撫でた。
「……あら。おはなしするんじゃなかったの?」
「話ならさっき十分しただろう?それより、きみの違った声が聞きたいな……」
「ふぅん……たとえば?」
ラミーはあたしのお尻をわし揉んだ。もう片方の手が肩を撫でる……盛りがついてきたわね。
「そうだな……きみのそのクールな声が、興奮で上擦るように……熱く喘がせてあげよう……」
あたしの背後に回ったラミーは、両手で押しつぶすように胸を揉んだ。あまりに馬鹿力で揉むもんだから、肺が押されて思わずうめき声が漏れる。
「ふっ……うっ……」
だがそれを嬌声と勘違いしたのか、ますますラミーは鼻息を荒くした。
もう!これ以上付き合ってられないわ!
「こーら!がっつかないの」
あたしはラミーの手の中をするりと抜け出した。
「夜はこれからでしょう?ゆっくり楽しみましょうよ」
「ふむ……」
お預けを喰らって不満そうなラミーの顔に、あたしはそっと両手を添えた。
「……このお髭は剃った方がよさそうね」
「そうかね?みなは私のチャームポイントだと言うんだがね」
「だって、キスする時に邪魔だもの。くすぐったくて笑っちゃいそうだわ」
「ほっほ、なるほど。それは考えなかったな」
「うふふ。ねぇ、捕まえてみて?」
あたしは誘うように、ラミーから数歩離れて見せた。
「ようし。捕まえたら、何をくれるのかな?」
「あら、報酬をお望み?そうね……あたしを好きにできる、ってのはどう?」
「……乗ったよ」
ラミーは両手をわきわきさせると、ガバッと飛びかかってきた。それをひょいとよけると、あたしはたたたっと部屋の真ん中まで駆けた。
「ほらほら、手の鳴る方へ?」
ぱんぱんと手を叩くと、ラミーは目をぎらつかせながらにじり寄ってきた。
またも飛び込んできたところを、わきをすり抜けてかわす。だがすれ違いざま、あたしは手首をつかまれて、そのまま乱暴にベッドへ引き倒された。
「きゃっ」
「ふっふふふ。捕まえたぞ……さあ、愉しませてもらおうか」
「あらあら、乱暴ね」
「いっとくが、もう辛抱できんぞ。いい加減我慢の限界なんだ」
はぁはぁと、ラミーは荒い息をしている。相当血が昇っているようね。
強引にドレスの裾を掴まれ、脱がされる。半裸にされかけたところで、あたしはラミーの唇にぴと、と指をつけた。
「まって。ねぇ、胸よりも“イイトコロ”があるでしょう?」
そう言って、あたしは自分のおへその下をつうっと撫でた。
「あたしのオンナノコのところ、見てみたいと思わない?」
ベッドの淵に腰掛けると、あたしは誘うように、大きく股を開いた。ドレスがずり下がり、太ももが露わになる。
「……!」
ごくりと生唾を飲むと、ラミーは許しを請うかのように、がっくりと膝をついた。血走った眼は、一心不乱にあたしの真ん中へと向けられている。
「……ねぇ。あなたが、脱がして」
あたしがささやくと、ラミーはわなわなと震える手で、ドレスの端を掴んだ。ゆっくりと、覆いがはがされていく。
「そう、上手よ……そのまま、ゆっくり……」
やがて布が完全に外され、あたしの“ソレ”が露わになった。
「ほら……じっくり見て」
ラミーの目が、それをまじまじと見る。と同時に、グリンと白目を剥いて動かなくなった。
「……おやすみ。いい夢見てね」
そうつぶやくのと、ラミーがぶっ倒れるのはほぼ同時だった。
「……っ!アプリコット、戻ったか!」
「ああ、ユキ。ええ、終わったわ。帰りましょ」
「あ、おう。てことは、うまくいったんだな」
「万事問題ないわ。ただ、ちょっと疲れちゃって……ここ、空気最悪。気分が悪いわ」
「大丈夫か?よし、なら早く出よう。どっちにしても、長居は無用だ」
俺は顔色の悪いアプリコットを庇いながら、人波をかき分け出口へ急いだ。
「……ぷはぁ!」
そとに出るなり、アプリコットはバサリと髪をかきあげた。結っていた部分がほどけ、かくれていた耳があらわになる。
「はーあっ!息が詰まりそうだったわ!」
「お疲れさま。怪我はないか?」
「ええ。イチコロだって言ったでしょ?」
「ああ……そうだな」
確かに、見たところアプリコットに傷はないようだ。しかし、本当に彼女は、そんなに武術に秀でているのだろうか?刺青の力もわからないままだし……
すっきりするどころか、胸の中のもやはいっそう増すばかりだった。
「あ!おーい、ユキ!アプリコット!」
む。向こうから走ってくるのはキリーだ。みんなも後に続いている。
「おかえり!無事だったんだね!」
「それで、どうでした?うまくいきましたか?」
「ええ。ばっちりよ」
「さすがだねぇ……すごいよ、アプリコットちゃん!」
「ふふん。もっと褒めなさい!」
アプリコットは耳をピコピコさせて、嬉しそうだった。
今は、水をさすのはよそう。
「それで、なんすけど。ラミーってやつは、けっきょく何物だったんすか?」
「そうね。ここじゃあれだし、人気のないところに行きましょうか」
アプリコットが、薄暗い路地をあごでしゃくった。
狭い路地のなかに、俺たちはぎゅっとひしめき合った。
「さて……ラミーの正体だけど、マフィア上層部と繋がりのある人物で間違いないわ。だけど、幹部というわけではないみたい。ずっぽりだけど、いちおうカタギよ」
「ふむ……それはカタギとよんでいいのか怪しい代物だな」
「ま、実際そうね。そいつは金を援助する見返りに、裏の汚い仕事をやらせてるみたい。政治絡みの不正とか、邪魔者を消させてもいるそうよ」
「何でもありっすね……!事が済んだら、かならず逮捕してやるっす」
「あら、それはきっと大変だと思うわよ?」
「……どういう意味っすか」
「別にアンタたちを侮ってるわけじゃないわ。ただ、そういう輩はラミーだけじゃないってことよ」
すると、リルが不思議そうに首を傾げた。
「おや、他にもいるのかい?」
「らしいわね。政府高官から名の知れた資産家、正確な数は分からないくらいなんですって」
「なるほど……謎が一つ解けたね。連中の武力の源はそれだよ」
「つるんでるやつらが財源ってこと?」
「それもあるだろうし、もっと単純に、武器そのものを援助されてる可能性さ。国の上層部がそれだけいるのなら、軍の人間がいてもおかしくないからね」
「ふーん……筋は通ってるわね」
リルの言っていることが本当なら、一国の軍相当の武装をマフィアが持っていることになる。
暗い話に、ウィローはふうとため息をついた。
「ですが、それだけでは……マフィアどもの底が知れないということしか分かりませんね」
「そうだな……せめてもう少し、内情が知れたらよかったんだが……」
「うふふ。ところが、それだけじゃないのよね。もう一つ興味深い話を聞いてるわ」
アプリコットがウィンクすると、キリーは嬉しそうに手を叩いた。
「おお!さすがアプリコット、盛り上がりどころが分かってるぅ!」
「どうも。それで、これが最後に聞けた話なんだけど。マフィア連中は、自分たちのことをファミリーと称してるってことは知ってるわよね?」
「うん。わたしたちの“一家”と同じ意味だよね」
「そう。だけど、マフィアのそれは、文字通り“家族”としての意味を強く持つみたいなのよ」
「え?どういうこと?」
「マフィアはね、全ての幹部を統括する頂点に立つ人を“ゴッド・ファーザー”として崇めて、絶対的に信頼……いいえ、信仰してるのよ」
ゴッド・ファーザー……マフィアたちのボスは、そう呼ばれているのか。
「もちろん、みんながみんなそうじゃないわ。末端に行くほど信仰心は薄れていくけど、それこそ上位層に食い込んでるようなやつらは狂信的なレベルだそうよ」
「へぇ~……すごいねぇ。メイダロッカはもともと家族みたいなものだけど」
「ま、それをより狂気じみさせたもんってとこかしらね。でも、そこがとっても重要なの。幹部はファーザーには絶対服従。ファーザーがイエスと言えばイエス、ノーと言えばノーになるわ」
「それってつまり、ファーザーがマフィア全体の頭脳ってこと?それなら……」
「……それなら、ファーザーを叩けば、マフィア全体を止めることができるかもしれないな」
「そゆこと」
「ふむ……不確定要素はおおいが、闇雲に突っ走るよりかはよっぽど効率的だね。だけど、一つ問題がある」
「え?わたしはいい考えだと思うけど……」
「思考そのものは間違っていないさ。けれど、肝心のファーザーとやらは一体誰なんだろう?」
「あ……」
「……そこなのよね。マフィアたちも、そういう弱点には気付いてるみたい。ファーザーの正体は、本当に信頼できる一部の人間しか知らないらしいわ。もちろん、ラミーごときが知ってるはずもない」
「そこだな……けど、大きく前進だ。少なくとも、指針は決まった」
「……ユキ、聞かせてくれる?」
「ああ……ファーザーの正体を突き止め、そいつを叩く。頭を跳ねて、マフィア全
体をぶっ潰すんだ」
つづく
「キャーーー!変態ーーー!」
「うわぁ!違うんだ!」
「……ん?なんだか騒がしいね」
「あら、よそ見?今夜はあたしだけを見てくれるんじゃなかったの?」
「おっと、そうだった。おいで、仔猫ちゃん。たっぷり可愛がってあげよう」
ラミーは、下品な指輪がたくさんはめられた手を、あたしの腰にまわした。どうでもいいけどこいつの指、太いのよね。指輪のせいで、縛られたハムに見えるわ。
「さあ、ここだ。ようこそ、我々の愛の宮殿へ……」
ラミーが個室の扉を開けた。
中はいたって普通のホテル、といった風体だった。ベッドに薄紫の天蓋がかかっているのが実に悪趣味だわ。
(どこが宮殿なんだか……)
内心呆れながらも、にこりと笑顔を返しておく。
「さて……」
腰にまわされたラミーの手が、あたしの体をいやらしく撫でた。
「……あら。おはなしするんじゃなかったの?」
「話ならさっき十分しただろう?それより、きみの違った声が聞きたいな……」
「ふぅん……たとえば?」
ラミーはあたしのお尻をわし揉んだ。もう片方の手が肩を撫でる……盛りがついてきたわね。
「そうだな……きみのそのクールな声が、興奮で上擦るように……熱く喘がせてあげよう……」
あたしの背後に回ったラミーは、両手で押しつぶすように胸を揉んだ。あまりに馬鹿力で揉むもんだから、肺が押されて思わずうめき声が漏れる。
「ふっ……うっ……」
だがそれを嬌声と勘違いしたのか、ますますラミーは鼻息を荒くした。
もう!これ以上付き合ってられないわ!
「こーら!がっつかないの」
あたしはラミーの手の中をするりと抜け出した。
「夜はこれからでしょう?ゆっくり楽しみましょうよ」
「ふむ……」
お預けを喰らって不満そうなラミーの顔に、あたしはそっと両手を添えた。
「……このお髭は剃った方がよさそうね」
「そうかね?みなは私のチャームポイントだと言うんだがね」
「だって、キスする時に邪魔だもの。くすぐったくて笑っちゃいそうだわ」
「ほっほ、なるほど。それは考えなかったな」
「うふふ。ねぇ、捕まえてみて?」
あたしは誘うように、ラミーから数歩離れて見せた。
「ようし。捕まえたら、何をくれるのかな?」
「あら、報酬をお望み?そうね……あたしを好きにできる、ってのはどう?」
「……乗ったよ」
ラミーは両手をわきわきさせると、ガバッと飛びかかってきた。それをひょいとよけると、あたしはたたたっと部屋の真ん中まで駆けた。
「ほらほら、手の鳴る方へ?」
ぱんぱんと手を叩くと、ラミーは目をぎらつかせながらにじり寄ってきた。
またも飛び込んできたところを、わきをすり抜けてかわす。だがすれ違いざま、あたしは手首をつかまれて、そのまま乱暴にベッドへ引き倒された。
「きゃっ」
「ふっふふふ。捕まえたぞ……さあ、愉しませてもらおうか」
「あらあら、乱暴ね」
「いっとくが、もう辛抱できんぞ。いい加減我慢の限界なんだ」
はぁはぁと、ラミーは荒い息をしている。相当血が昇っているようね。
強引にドレスの裾を掴まれ、脱がされる。半裸にされかけたところで、あたしはラミーの唇にぴと、と指をつけた。
「まって。ねぇ、胸よりも“イイトコロ”があるでしょう?」
そう言って、あたしは自分のおへその下をつうっと撫でた。
「あたしのオンナノコのところ、見てみたいと思わない?」
ベッドの淵に腰掛けると、あたしは誘うように、大きく股を開いた。ドレスがずり下がり、太ももが露わになる。
「……!」
ごくりと生唾を飲むと、ラミーは許しを請うかのように、がっくりと膝をついた。血走った眼は、一心不乱にあたしの真ん中へと向けられている。
「……ねぇ。あなたが、脱がして」
あたしがささやくと、ラミーはわなわなと震える手で、ドレスの端を掴んだ。ゆっくりと、覆いがはがされていく。
「そう、上手よ……そのまま、ゆっくり……」
やがて布が完全に外され、あたしの“ソレ”が露わになった。
「ほら……じっくり見て」
ラミーの目が、それをまじまじと見る。と同時に、グリンと白目を剥いて動かなくなった。
「……おやすみ。いい夢見てね」
そうつぶやくのと、ラミーがぶっ倒れるのはほぼ同時だった。
「……っ!アプリコット、戻ったか!」
「ああ、ユキ。ええ、終わったわ。帰りましょ」
「あ、おう。てことは、うまくいったんだな」
「万事問題ないわ。ただ、ちょっと疲れちゃって……ここ、空気最悪。気分が悪いわ」
「大丈夫か?よし、なら早く出よう。どっちにしても、長居は無用だ」
俺は顔色の悪いアプリコットを庇いながら、人波をかき分け出口へ急いだ。
「……ぷはぁ!」
そとに出るなり、アプリコットはバサリと髪をかきあげた。結っていた部分がほどけ、かくれていた耳があらわになる。
「はーあっ!息が詰まりそうだったわ!」
「お疲れさま。怪我はないか?」
「ええ。イチコロだって言ったでしょ?」
「ああ……そうだな」
確かに、見たところアプリコットに傷はないようだ。しかし、本当に彼女は、そんなに武術に秀でているのだろうか?刺青の力もわからないままだし……
すっきりするどころか、胸の中のもやはいっそう増すばかりだった。
「あ!おーい、ユキ!アプリコット!」
む。向こうから走ってくるのはキリーだ。みんなも後に続いている。
「おかえり!無事だったんだね!」
「それで、どうでした?うまくいきましたか?」
「ええ。ばっちりよ」
「さすがだねぇ……すごいよ、アプリコットちゃん!」
「ふふん。もっと褒めなさい!」
アプリコットは耳をピコピコさせて、嬉しそうだった。
今は、水をさすのはよそう。
「それで、なんすけど。ラミーってやつは、けっきょく何物だったんすか?」
「そうね。ここじゃあれだし、人気のないところに行きましょうか」
アプリコットが、薄暗い路地をあごでしゃくった。
狭い路地のなかに、俺たちはぎゅっとひしめき合った。
「さて……ラミーの正体だけど、マフィア上層部と繋がりのある人物で間違いないわ。だけど、幹部というわけではないみたい。ずっぽりだけど、いちおうカタギよ」
「ふむ……それはカタギとよんでいいのか怪しい代物だな」
「ま、実際そうね。そいつは金を援助する見返りに、裏の汚い仕事をやらせてるみたい。政治絡みの不正とか、邪魔者を消させてもいるそうよ」
「何でもありっすね……!事が済んだら、かならず逮捕してやるっす」
「あら、それはきっと大変だと思うわよ?」
「……どういう意味っすか」
「別にアンタたちを侮ってるわけじゃないわ。ただ、そういう輩はラミーだけじゃないってことよ」
すると、リルが不思議そうに首を傾げた。
「おや、他にもいるのかい?」
「らしいわね。政府高官から名の知れた資産家、正確な数は分からないくらいなんですって」
「なるほど……謎が一つ解けたね。連中の武力の源はそれだよ」
「つるんでるやつらが財源ってこと?」
「それもあるだろうし、もっと単純に、武器そのものを援助されてる可能性さ。国の上層部がそれだけいるのなら、軍の人間がいてもおかしくないからね」
「ふーん……筋は通ってるわね」
リルの言っていることが本当なら、一国の軍相当の武装をマフィアが持っていることになる。
暗い話に、ウィローはふうとため息をついた。
「ですが、それだけでは……マフィアどもの底が知れないということしか分かりませんね」
「そうだな……せめてもう少し、内情が知れたらよかったんだが……」
「うふふ。ところが、それだけじゃないのよね。もう一つ興味深い話を聞いてるわ」
アプリコットがウィンクすると、キリーは嬉しそうに手を叩いた。
「おお!さすがアプリコット、盛り上がりどころが分かってるぅ!」
「どうも。それで、これが最後に聞けた話なんだけど。マフィア連中は、自分たちのことをファミリーと称してるってことは知ってるわよね?」
「うん。わたしたちの“一家”と同じ意味だよね」
「そう。だけど、マフィアのそれは、文字通り“家族”としての意味を強く持つみたいなのよ」
「え?どういうこと?」
「マフィアはね、全ての幹部を統括する頂点に立つ人を“ゴッド・ファーザー”として崇めて、絶対的に信頼……いいえ、信仰してるのよ」
ゴッド・ファーザー……マフィアたちのボスは、そう呼ばれているのか。
「もちろん、みんながみんなそうじゃないわ。末端に行くほど信仰心は薄れていくけど、それこそ上位層に食い込んでるようなやつらは狂信的なレベルだそうよ」
「へぇ~……すごいねぇ。メイダロッカはもともと家族みたいなものだけど」
「ま、それをより狂気じみさせたもんってとこかしらね。でも、そこがとっても重要なの。幹部はファーザーには絶対服従。ファーザーがイエスと言えばイエス、ノーと言えばノーになるわ」
「それってつまり、ファーザーがマフィア全体の頭脳ってこと?それなら……」
「……それなら、ファーザーを叩けば、マフィア全体を止めることができるかもしれないな」
「そゆこと」
「ふむ……不確定要素はおおいが、闇雲に突っ走るよりかはよっぽど効率的だね。だけど、一つ問題がある」
「え?わたしはいい考えだと思うけど……」
「思考そのものは間違っていないさ。けれど、肝心のファーザーとやらは一体誰なんだろう?」
「あ……」
「……そこなのよね。マフィアたちも、そういう弱点には気付いてるみたい。ファーザーの正体は、本当に信頼できる一部の人間しか知らないらしいわ。もちろん、ラミーごときが知ってるはずもない」
「そこだな……けど、大きく前進だ。少なくとも、指針は決まった」
「……ユキ、聞かせてくれる?」
「ああ……ファーザーの正体を突き止め、そいつを叩く。頭を跳ねて、マフィア全
体をぶっ潰すんだ」
つづく
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