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「お前たちは昇格を逃した、約束通りチームは3月いっぱいで解散だ」
社長が冷徹に言い放った言葉に俺は膝から崩れ落ちた。
入れ替え戦での敗退の傷跡をまだ抱えたままではあったが、それはシーズン開始前から公言されており俺たちに抗う事は出来ない。
「ただし、3月末までにチームの身売り先を見つけられればその時は施設ごと売り払っても構わん。社業に専念したい者は引き受けるが、それ以外の選手及び設備はすべて手放す」
1月ももう下旬に差し掛かり、残り2か月半で身売り先を見つけられなければチームはなくなる。
「何か反論は」
「……了解しました」
俺は頭を下げて社長室を出る。
白い雪で縁取られた窓に移る俺は青白い顔をしていて、北日本鉱業専務取締役の肩書もキタニチ札幌ホワイトアローズ部長の肩書も今だけはあまりにも重い。
重い足取りで本社を出ると白と灰色に染まったオフィス街が俺を閉じ込めるように立っている。
ああ、練習場に行かなければ。スタッフと選手が待っている。
駐車場に留め置いた車も薄く雪が積もり景色に同化しており、どれが俺の車か判別が難しい。


「キタニチ札幌ホワイトアローズの桜井さんですね?」

振り返ると桜色のコートを羽織った一人の女がいた。
「お話、よろしいですか」


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