異世界の国からこんにちわ!

あかべこ

文字の大きさ
17 / 24
本編

16

しおりを挟む
金羊国から帰ったあと大陸標準語が多少分かるスタッフ探しを派遣会社に丸投げしたところ、『そんな人いませんて!』と言うコメントが来た。
「完全に話せる人でなくていいので、異世界に興味があってあいさつといくつかの単語が分かるレベルでいいので……」
派遣会社の担当者は「無茶言いはりますね」とぼやきつつも条件に合いそうな人を探そうと試しに募集したところ、想定の10倍以上の希望者が集まってくれた。
そこから語学力で篩をかけてもらうことで大陸標準語のできる日本人スタッフを欲しいという要望は思いの外あっさりと片付いてしまった。
(みんなどんだけ異世界に興味あるんやろなー……)
スタッフ募集でそれだけ集まるとなると、警備面もある程度気をつけてもらうことになる。そこも考えていかなければならない。
そんなことを考えていくうちに万博開催まで1年を切り、金羊国ブースを設置するコモンズ館も完成した。
下見のために金羊国大使館の人たちにコモンズ感の完成をメールで知らせると「いい感じですね」と返事が来た。
物販版の税金関係だの、スタッフの配置問題だの、展示物と人員の輸送問題だとの日々は飛ぶように進んでいく。
そんな中、上司がある提案を口にした。

「金羊国のナショナルデー、複数日開催にせぇへんか?」

ナショナルデーとは万博期間中に行われる参加国のアピールイベントの日である。
金羊国は今回の参加国の中でも注目度が高いことを踏まえ、人が集まりやすい夏のホリデーシーズンに数日間に渡って行うことを提案して来たのである。
「ナショナルデーって本来単日ですよね?」
「せやけど金羊国は注目度が高いから1日だけにすると見れん人が多くなりすぎるからな、これは局長の提案でもある」
「ナショナルデーのイベントも考えなあかんくなりましたね?」
「そこは先方と相談したってや」
また余計な仕事を増やしやがったと言う気持ちはなきにしもあらずだが、ナショナルデーは全ての万博参加国に設けられているのだから金羊国だけナショナルデーなしというのも変な話になってしまう。
「とりあえず今度来た時に相談しておきますわ」
来る前にナショナルデーにやれそうなことの提案も出しておかないとならないし、まだしばらくバタバタする羽目になるのだろうなと思うと憂鬱だった。

******

「ナショナルデーのイベント、ですか……」
困ったような返事を返されて「ですよねえ」と返さざる得ない。
金羊国からすればナショナルデーなどまだ思考の外であっただろうに、しかもナショナルデーが3日もあるとなれば考えるのも一苦労だろう。
「他国がやってるナショナルデーイベントの概要を集めてきたんですが、記念式典にプラスして自国のプレゼンテーション・自国からパフォマーを招待してのパフォーマンスイベント・料理の展示なんかが主流ですね」
「複数日あるのに記念式典のみだとたぶん物足りない感じになりますよね?」
「記念式典のみの国もありますが、ほとんどの国は式典プラスなんらかのイベントをやってますね」
少し考えてから何かを思いついたように「よし」と呟いて答えを出す。
「パフォーマンスぐらいならやれると思うので、相談してみます」
「無理そうなら式典のみで構いませんよ?」
「大丈夫です、私達の国には素敵なサーカスがありますから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

処理中です...