異世界大使館雑録

あかべこ

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大使館4年目・秋(24部分)

ロングロングドライブ

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※24-7の裏話

傍らにファンナルを乗せて車は東名道から東海環状自動車道へ入る。
前の車が妙にノロノロ運転なのが癪に触って舌打ちが漏れる。
「そんなのんびり走んなら一般道行けよ……」
「アケノ、疲れてるのか?」
「そりゃもう3時間ぐらいずっと走ってるしな」
東名で渋滞にはまったせいで予定より遅くなっており、ここからはもう上限まで飛ばしたいぐらいの気持ちなのだ。
(こんな事なら最初から新東名で良かったな)
ファンナルに海老名や浜名湖のデカいサービスエリアを見せてやろうと思って東名にしたのだが、それが結果的に命取りとなった訳だ。
「……俺が運転出来たらよかったんだがな」
「今度問い合わせするか?自動車教習所通う時間作ってもらう必要はあるだろうけどな」
「日本側が許しても時間が取れなさそうだ」
ファンナルが困ったように笑うので「早く後継育てて楽になった方が良いな」と答える。
あちらの世界では一般的に獣人は人間より寿命が短いとされていることを思えばなおさらだ。
「後継の育成には時間がかかる」
「知ってるよ」
そう話していると前の車がインターの降り口へ繋がる車線に移動した。
「やっとスピード出せるな」
私はアクセルを踏んでスピードを上げると、車は一段ぐんと早くなる。
他の車もいないのを幸いに高速道路の上限ギリギリの速さを出した私にファンナルが「えっ」と小さい声を上げた。
「だいぶスピード出てないかこれ?」
「順法の範囲内だよ、これぐらい出しとかないと遅れを取り戻せない」
ガソリンもまだいくらか余裕があるので高速降りるまでなら問題はない、むしろ速さに不慣れなファンナルの方がちょっとビビってる感がある。
この調子だと新幹線とか乗れないんじゃないだろうか?飛行機は―……ファンナルは鳥系でよく空飛んでるから大丈夫だと思うが。
「ホントに大丈夫なんだよな?」
「ビビるなビビるな、未来の嫁を信じろ!」

*****

高速道路を降りて長良川そばの道の駅で休憩を取ると、ファンナルは「ちょっと怖かったな」と言う。
「でもこれくらいの速度で走らないもっと時間かかるぞ?」
「いや、そうなんだが……思いのほか速さに慣れてなかったんだな、って……」
地元産生乳のシュークリームを食べる私に対し、ファンナルは食欲が失せ気味なようで水しか飲んでいない。
「慣れれば平気?」
「たぶん」
「じゃあ帰りはもうちょい人少ないとこ通って、速さに慣れてもらうしかないな」
東名・新東名だと渋滞がありそうなので、高山を抜けて松本から都内まで中央道ならもうちょい慣れる余裕が作れるだろうか。まあ中央道も小仏トンネルという混雑の名所があるからタイミングによりけりかもしれないが。
「……アケノの実家に行くたびに俺は速さに怯えることになるのか?」
「たぶんね」
実家までは30分弱だが、山道なのでスピードは出せないので多分速さに怯えることは無い。
「この後はゆっくり走るから安心してよ」
「なんか悪そうな顔してないか?」
「気のせい気のせい」
ちょーっと酷道にビビるファンナルが見れたらいいなあ、なんて思ってませんよ?ええ。
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