異世界大使館雑録

あかべこ

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大使館3年目・春(15部分)

宰相殿下も飯を食う

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政経宮という建物は広い、理由としてはここで働く人達の職場のみならず僕の暮らす家も兼ねているからと言うのが一番大きい。
あんまり広いので清掃や食事は専属の人を何人も雇っていて、僕のみならずみんなの食事も作って貰っている。
屋外に設けられた屋根付きの調理場に足を運ぶと「おはようございます」と声が掛けられる。
昨日から泊まり込みで仕事しているエインくんや朝一番でやって来たハルトル隊長とその仲間たちも朝食を待ち侘びているみたいだ。
「宰相陛下、最近米が増えてませんか?」
そう聞いて来たのはエルヴァルくんだ、彼は昨日忙しかったのか少し毛並みが乱れている。
「話してなかったっけ?」
「特に何も聞いてないですね」
エルヴァル君には道や船の行き交いについてを任せてるから食料関係はあまり話していなかったかもなあ、と思い出した。
「去年の秋にヤマンラール女公爵が来たのは覚えてる?」
「日本の大使館に行くついでに顔を出して来たと聞きました」
「その時に日本大使館が双海公国産米を定期購入してるからついでにうちにも買うよう言われてね。双海公国は大陸内における数少ない協力国だし、何より日本と組むにあたって喧しかったエルユヌシ一族を説得して貰った恩を返せって言われてね」
エルユヌシ一族は大陸内で名を馳せる宝石商の一族で、金羊国産の宝石はエルユヌシ一族との超長期的販売契約が為されていた。しかし当時は宝石市場が飽和気味なため購入量を一方的に減らされていた。
そこで日本と手を組む際に日本側へ宝石輸出を検討していると知った途端に契約を反故されたと言い出したのだ。
で、その仲介をしたのがヤマンラール女公爵だった。
そしてエルユヌシ一族への宝石販売量と金額は変更しないかわりに販売契約期間の延長と優先購入権の維持というところで落ち着いた訳だ。
「4年くらい前の話ですよね?」
「そうなんだけどねえ。危うく外貨獲得源を失うところだったのは事実だし、古米は尋常でなく安いから双海公国から輸入するんなら一番マシだったんだよね」
双海公国から米を輸入するのは他の国から麦を輸入するより3割くらい安いし、米を学校への給食用配給に割り当ててしまえば使いきれそうだった。
元々学校での食事提供は以前から検討してたからいいけど、国内の麦生産量がまだ消費量に追いついてなさそうだから給食用に麦は回せないと思ってたしちょうど良かったんだ……貴重な外貨を持ってかれてるけど……と思うことにしている。
「食えるなら何でもいいとは言え米に慣れてないのでキツイものがありますよね」
「日本の食べ方も参考に色々試してるんだけどね」
その辺は政経宮の料理人や日本に派遣した面々に色々調べて貰ってるところだ。
「ごはんどうぞ~」
料理人さんからごはんを受け取る。
今日はにんじんのすりおろしを入れたオレンジ色のお粥だ。
早速食べてみるとにんじんの甘みが塩で引き立っていて、思ったより美味しい。


(さて、今日も頑張らなくちゃ)
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