異世界大使館雑録

あかべこ

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大使館3年目・夏(16部分)

竹に短冊七夕祭り

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異世界の小国に派遣されてもうすぐ一年、東京よりも過ごしやすい暑さ(矛盾しているようだがそうとしか言いようがない)の夏が近づいて来ている。
「で、ささはなんで急にお菓子買って来た訳?」
「久しぶりに本社に行ったら、週末七夕だって松原さんが言ってたから」
我らが支社長・河内舞花は腑に落ちないような顔をして僕の渡すお菓子を眺めていた。
「七夕でお菓子は繋がらなくない?」
「僕の地元だと、七夕は蝋燭貰いって言ってお菓子を貰いに行く日だったんだよ」
「ふうん。じゃあ、貰っていい?」
「いいよ、ただ蝋燭貰いの事を思い出してちょっと甘いもの食べたくなっただけだから」
本社からの帰り道にコンビニで買ったお菓子とお茶を机の上に広げると、現地採用の子達が遠くからソワソワした目で見ていることに気づく。
「ささ、丁稚の子にもあげな」
そんな事を言いつつ早速シフォンケーキとアイスコーヒーを取っているあたり、しっかりしている。
『みんなのおやつもあるから、これ分けて食べな』
大袋入りのお菓子の詰め合わせを丁稚の子達に渡すと、彼らは珍しい異世界のお菓子に目を輝かせて受け取った。
「ただいまー、ってみんなおやつ食べてる!」
大使館へのお使いを終えて戻って来た高槻くんと部下の子が「俺らの分は?!」と聞いてくる。
「高槻くんには牛乳寒天にしたよ。ほら、いちおうアスリートだし太らないようにカロリー高いものは控えたほうがいいかなーって」
プロ復帰を目指し最近関東サッカーリーグのチームに入って頑張る高槻くんの健康を思うとハイカロリーなものは喜ばれないかなーと思って選んだのだが、嬉しいような困ったような「あー……」というつぶやきと共に受け取ってくれた。
ちなみに高槻くん付きの部下の子も他の丁稚の子達と同じく、大袋の菓子を分け合っている。
「ナリ、これもささの愛だよ」
「支社長は普通にシフォンケーキ食っててずるい!」
「そりゃあ私はここのボスとして頑張ってるし、ナリみたいに体重気にしたりする必要無いからねえ」
「うう……サッカーは続けたいけど栄養バランスとか気にせず美味しいお菓子食べたい……」
「えっと、なんか、ごめんね?」
「さささんのせいじゃないです」
そう言いながら高槻くんは牛乳寒天に口をつけると「うま」と言うつぶやきが漏れた。
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