異世界大使館雑録

あかべこ

文字の大きさ
107 / 154
大使館3年目・夏(16部分)

深大寺くんの双海公国見聞録1

しおりを挟む
無事に帰りついたら双海公国についての報告書を書いて欲しい、と言われたので手帳とペンを持ち歩いている。
スマホでも良いんだけど見慣れない器具は不審がられるから気を使ってまだこちらでもギリ見慣れてそうな藁半紙をまとめたメモ帳とボールペンを持ち歩くことにしたのだ。
借金のカタとしてヤマンラール公爵邸にいるので普通1人での外出は許可されないが、僕の場合はカウサル女公爵に気に入られているのでカウサル女公爵に同行する形でのみ外出することができる。
「少々特別扱いが過ぎると言われたけどね」
そう苦笑いを溢しつつ、今日はカウサル女公爵と共に街の郊外を目指している。
公爵邸のある国の中心部から馬車で少し走ると景色は果てしない綿花畑へと変わっていく。
この国は人が暮らす地域と田園地域が結構明確に分かれてるから、中心部から少し走るとこんな風に畑しかない状態になるのだ。
「で、今日は僕にどんな意見をお求めで?」
「娼館についてかな。そもそもそっちの国には娼館ってある?」
「日本だと法律上では禁止されてますが事実上娼館のような役割を担うお店はいくつかありますね、正式に認めてる国もありますけど」
「ふうん、人間の欲は世界共通だねえ」
馬車が大きな門の前で止まると馬車を降りるように指示されると、門番に守られた大きな石門がある。
横には馬車を停める大きな駐車場もあって小さいながらも街の入り口のようになっている。
「ここが娼館街なんですか?」
「いや、この塀の向こうで一つの娼館だよ」
「ええ……」
門を抜ければそこは大きな庭のようになっており、そこを縦横無尽に人が行き交う。
よく見ると男女ともに胸や太ももの出た露出の多いティアンドルのようなセクシーな服を着た人が配膳を担っており、お客さんも男性6:女性4ぐらいの比率で混在している。
「娼館というかオクトーバーフェストみたいな……」
「食事の後の締めで配膳する人を買って奥の建物の部屋で抱くんだよ」
ここで食欲と性欲をまとめて満たせると考えると効率はいいような気がする。
「僕が思ってるものよりもなんか健康的な印象ですね」
「もしそっちから客人が来てももてなしに使える?」
「うーん……日本人であれば中年以上であれば、ですかね。たぶん若い人は娼館ってだけで嫌がると思います」
個人的には接待でキャバクラより抵抗感を感じるのでそう言い回しになる。
(まあ好きな人には良いだろうけどねえ?)
「ふうん、服装は?」
「良いんじゃないですか?ボディラインや肌の出た服はそういう目的で来た人には良さそうですし」
「ちなみに、他にいい感じの服装知らない?ここの運営任せてる爺さんが新しい制服導入したいから案無いかってうるさくてさ」
「うーん……バニーガールとか?」
「どういう感じ?」
うろ覚えでバニーガールの服を描き上げると「うさぎの耳と尻尾は導入出来なさそうだけど、案としては良さそうだね」とつぶやく。
「うさぎのつけ耳はダメなんですね」
「割と嫌がられるね。娼館にいるとはいえ人は人として扱わないといけないんで侮辱行為認定されると、土地の提供者である私のところにも苦情が来てうるさいし。他には?」
ああだこうだと案を捻り出すと興味深そうに話を聞いてくれるので、色々と案を出すと「助平だねえ」とニヤニヤと笑う。
「うう……」
「まあ嫌いじゃないけどね、面白いし」
「面白いってなんですか?」
「褒めてるんだよ。ちなみに私は何が似合うと思う?」
面白そうにそう聞いてくるので、羞恥で染まる脳裏を動かしながら全部似合う気がして余計に頬が赤くなるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

異世界大使館はじめます

あかべこ
ファンタジー
外務省の窓際官僚・真柴春彦は異世界に新たに作られる大使館の全権特任大使に任命されることになるが、同じように派遣されることになった自衛官の木栖は高校時代からの因縁の相手だった。同じように訳ありな仲間たちと異世界での外交活動を開始するが異世界では「外交騎士とは夫婦でなるもの」という暗黙の了解があったため真柴と木栖が同性の夫婦と勘違いされてしまい、とりあえずそれで通すことになり……?! 毎週土曜日(まれに水曜日にも)更新。 チート・俺TUEEE/ハーレム(男×女複数)成分なし。異性愛や男性同士や女性同士の恋愛、獣人と人間の恋愛アリ。ほんのり逆ハー(女×男複数)成分含みます。 不定期更新。表紙はかんたん表紙メーカーで作りました。 作中の法律や料理についての知識は、素人が書いてるので生ぬるく読んでください。 一緒に読むと楽しい番外編https://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/633604170 読むと世界観が広まるスピンオフhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/924954517 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/397954498 同一世界線のはなしhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/905818730 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/687883567 カクヨム版ありますhttps://kakuyomu.jp/works/16817330651028845416

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...