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大使館3年目・冬(18~19部分)
木栖直元は憂鬱
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「長らく没交渉状態にあった長兄に連絡を取ろうと思う」と国際電話越しに母から告げられた時、シンプルに思ったのは「大丈夫かな?」だった。
父親の長期入院により金銭的に困窮してきた母からお金を融通して欲しいと頼まれ、その度に支援してきたがそろそろ他の兄弟たちも両親への金銭的支援に限界が見えてきていたからもう頼れそうなのが長兄ぐらいしかいないのは分かる。
けれど、長兄にとって父は自分を拒絶し家から追い出した存在だ。
ただ血がつながってるというだけで金を出してくれるのかは怪しかったし、これ幸いと法的な縁切りをされる可能性すらある。ほぼ賭けみたいなもんだ。
そんな話をしたけれど、母は「あの子は優しいからきっと私達を助けてくれる」と信じていた。
この提案をしてきた次兄は「相手は親だぞ?あの恩知らずのクソでもそれくらいはするだろ」と口悪く返答して来た。次兄が長兄に関して口が悪いのはいつものことだが、こうも喧嘩腰だと誰かがフォローに回らないと空気が重苦しくなることは目に見えている。
下2人は長兄との交流が希薄だったのでフォローは期待出来ない。
(となると、俺がフォローに回るしかなくなるよなぁ……)
ディエゴを日本に連れて行くいい機会と言えなくもないが、面倒ごとに巻き込んでしまう気もする。
『ディエゴ、お前日本行ってみたい?』
『日本?ナオモトの家に行くの?』
『うん。ちょっと実家周りでゴタゴタがあってさ。ばーちゃんちは無理だろ?』
『ばーちゃん、何言ってるかわかんない……』
ディエゴは俺の親友でメキシコ系移民2世のホルヘと言う男の息子なのだが、ホルヘの母親(ディエゴの祖母)はスペイン語のみで生活しており英語が話せない。
それに対してディエゴはホルヘの教育方針で英語が問題無く話せるようになってからスペイン語を学ばせるつもりだったので、現時点では英語しか話せない。
つまりふたりは血縁でありながら意思疎通することができないと言う問題があった。
『なら俺がひとりで留守番しようか?』
『それやると俺が捕まっちゃうからなぁ、お前知らない人苦手だからナニー頼むのもなぁ』
『ええ~……』
アメリカでは未成年を1人で留守番させると逮捕されるので、ナニーを頼むしかないのだが人見知りのケがあるディエゴは難色を示してくる。
『だからお前は言葉が分からないけど面倒見てくれるばーちゃんちに行くか、面倒ごとに付き合うことになるけど俺と一緒に日本に来るかの2択しかないんだけどどっちが良い?』
『それなら日本がいい』
ディエゴはそう答える。
子供を面倒ごとに巻き込むのは少々申し訳無いが、幸いうちの親は義理の孫となったディエゴに友好的なので小遣いとかもらえるに違いない。
『そうか。終わったら日本で遊ぼうな』
ディエゴにとっては初めての日本だ。
せめて悪い思い出とならないよう、俺の身内のゴタゴタはあんまり見せずに楽しめるように頑張るしかない。
父親の長期入院により金銭的に困窮してきた母からお金を融通して欲しいと頼まれ、その度に支援してきたがそろそろ他の兄弟たちも両親への金銭的支援に限界が見えてきていたからもう頼れそうなのが長兄ぐらいしかいないのは分かる。
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(となると、俺がフォローに回るしかなくなるよなぁ……)
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『ディエゴ、お前日本行ってみたい?』
『日本?ナオモトの家に行くの?』
『うん。ちょっと実家周りでゴタゴタがあってさ。ばーちゃんちは無理だろ?』
『ばーちゃん、何言ってるかわかんない……』
ディエゴは俺の親友でメキシコ系移民2世のホルヘと言う男の息子なのだが、ホルヘの母親(ディエゴの祖母)はスペイン語のみで生活しており英語が話せない。
それに対してディエゴはホルヘの教育方針で英語が問題無く話せるようになってからスペイン語を学ばせるつもりだったので、現時点では英語しか話せない。
つまりふたりは血縁でありながら意思疎通することができないと言う問題があった。
『なら俺がひとりで留守番しようか?』
『それやると俺が捕まっちゃうからなぁ、お前知らない人苦手だからナニー頼むのもなぁ』
『ええ~……』
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『だからお前は言葉が分からないけど面倒見てくれるばーちゃんちに行くか、面倒ごとに付き合うことになるけど俺と一緒に日本に来るかの2択しかないんだけどどっちが良い?』
『それなら日本がいい』
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子供を面倒ごとに巻き込むのは少々申し訳無いが、幸いうちの親は義理の孫となったディエゴに友好的なので小遣いとかもらえるに違いない。
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