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大使館3年目・秋(17部分)
作家さんは憂鬱
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日本が異世界と繋がってもうすぐ5年、日本のみならず世界は着実に変わっている。
少量ながら日本に入ってきた異世界産原油による原油価格の下降傾向、金羊国出身のモデルやアイドルがちょこちょこと出始め、東京の各地で獣人による物売りが見受けられるようになった。
そして、ここにもそのあおりを受けた人物が1人……。
「こっちは商売あがったりですよ!」
ドンとビールジョッキを机に叩きつけながらそう叫ぶ友人に「まあ、そうだねえ」と濁した答えを差し出す。
異世界転生ものを主に執筆してきたラノベ作家の友人にとって異世界が実在していたという事は仕事の幅を狭めるような事態だったらしい。
「本当に異世界があるとなるとさー、異世界転生にみんな夢見られなくなっちゃったからさー、売り上げ落ち込み方ホントにすごくてさー」
「うんうん」
「10年以上このジャンルで飯食ってきた身としてさー、このジャンルで食えないとなると新しいのを考えないといけない訳さ」
濃い目のホッピー2杯ですっかり出来上がってしまった友人を尻目に2本目の焼きとんに口をつける。
「異世界物が売れないとなるともう私に書けるのはBLしかないわけでさ?」
元々この友人はBL界隈で活動していた。私と出会ったのもその時だ。
ある時別名義で書いた異世界転生物が売れたので商業化が決まった時に勢いのままにブラック企業を辞め、異世界転生小説とバイトで食い繋ぐ生活を送っている。
「でもBL小説はマジで売れんのよねー……漫画と違って小説は作家買いの人多くて新人は不利なのよなー……」
「SF方面の人に比べればマシじゃない?あっちの人たちは平行世界=異世界ってことをまだ受け止めきれてない気がする」
「あれはもう異世界って言葉がRPG風中世ヨーロッパ世界観と結び付いちゃったせいだからねー、私らラノベ作家の罪ですよ……詫びるしかねえわ」
友人はふふふと死んだ目で笑いながら新しいホッピーを生成していた。
私としてはそんな状況下でも普通にホッピーを作って飲めるその酒への執着がすごいと思う。
「プロ同人作家ルートは?」
「そっちでもいいけどあんまり流行り漫画読めてないしなあ、最近はずっと創作BLばっかだし」
「版権無理そうならナマモノは?異世界担当の官僚さん関係とかすごいよ、結構大規模ジャンルになってる」
「マジで?」
「いやマジの話。男前と平凡ってビジュがオタクにぶっ刺さってるし、同性でペアリングつけて国会出てきた上に高校一緒ってことでオタクがいっぱい転がってる」
友人は「あべとらみたいなもんか」と呟きつつ、鶏かわ串をかじっている。
「試しに放流したらバズるかなー」
「ナマモノだけどね」
「アレが捕まらないんならセーフかな。まあ検討はしてみるわ」
少量ながら日本に入ってきた異世界産原油による原油価格の下降傾向、金羊国出身のモデルやアイドルがちょこちょこと出始め、東京の各地で獣人による物売りが見受けられるようになった。
そして、ここにもそのあおりを受けた人物が1人……。
「こっちは商売あがったりですよ!」
ドンとビールジョッキを机に叩きつけながらそう叫ぶ友人に「まあ、そうだねえ」と濁した答えを差し出す。
異世界転生ものを主に執筆してきたラノベ作家の友人にとって異世界が実在していたという事は仕事の幅を狭めるような事態だったらしい。
「本当に異世界があるとなるとさー、異世界転生にみんな夢見られなくなっちゃったからさー、売り上げ落ち込み方ホントにすごくてさー」
「うんうん」
「10年以上このジャンルで飯食ってきた身としてさー、このジャンルで食えないとなると新しいのを考えないといけない訳さ」
濃い目のホッピー2杯ですっかり出来上がってしまった友人を尻目に2本目の焼きとんに口をつける。
「異世界物が売れないとなるともう私に書けるのはBLしかないわけでさ?」
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「SF方面の人に比べればマシじゃない?あっちの人たちは平行世界=異世界ってことをまだ受け止めきれてない気がする」
「あれはもう異世界って言葉がRPG風中世ヨーロッパ世界観と結び付いちゃったせいだからねー、私らラノベ作家の罪ですよ……詫びるしかねえわ」
友人はふふふと死んだ目で笑いながら新しいホッピーを生成していた。
私としてはそんな状況下でも普通にホッピーを作って飲めるその酒への執着がすごいと思う。
「プロ同人作家ルートは?」
「そっちでもいいけどあんまり流行り漫画読めてないしなあ、最近はずっと創作BLばっかだし」
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「マジで?」
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友人は「あべとらみたいなもんか」と呟きつつ、鶏かわ串をかじっている。
「試しに放流したらバズるかなー」
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「アレが捕まらないんならセーフかな。まあ検討はしてみるわ」
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