異世界大使館雑録

あかべこ

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大使館4年目・夏(22~23部分)

たなばたさま

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7月、酷暑から逃れるように入った地下街は冷房が効いててとても涼しい。
『ほんと、わざわざ地下に街を作るんだからこの国の人たちの熱意はすごいよね』
何かを呟く彼女の真意はわからないが、その呆れたような口ぶりから褒めてないのは察する。
けれどこの酷暑の大都会で涼しい地下街は言わば命を守る道でもあるのであんまり貶さないで欲しくもある。
のんびりと歩いているとふと足を止めて何かを見つめている。
「ルリ、アレナニ?」
「ああ……七夕飾りかあ」
大きめの笹に五色の短冊が飾られたそれは季節に合わせた七夕の笹飾りだ。
小さな子どもが笹飾りに短冊をかけ、大人達はふと目についた短冊に夏を感じている。
魔術での意思疎通を用いて七夕について伝えると「へえ」と呟いて笹に近づいていく。
この七夕飾りの短冊は自由に書いて飾ることが出来るらしく、笹のそばに置かれた机にはペンと短冊が無造作に置かれている。
「カイテイイ?」
チラッと私を見た彼女に「良いよ」と答えると、彼女は私にもペンを寄越してきた。
(私も書くでしょ?ってことよねこれ)
そんなことを考える私を尻目に当の本人は短冊に下手くそなひらがなでなにかを書きつけている。
さて、私は何を書こうか?と考えてみる。
もう良い大人になってしまったものだから、特に神頼みしてでも得たいものが思いつかない。
しばらく考えてからペンの蓋を取って、シンプルにひと言書いてみた。

【日本と金羊国がずっと友好的であり続けてくれますように】

工事現場の総監督として私が関わるその道が、平和と友好のために使われること。こればかりは神様にお願いするしかないことだろう。
「デキタ」
まだ拙い日本語で「けんきゅうがいっぱいできますように」「るりといっぱいなかよくできますように」と書かれた緑とピンクの短冊を私に見せてきた。
……いっぱい仲良しという文章に変な意味が含まれてないか聞きたいけど、もし変な意味込みだったらちょっと揉めそうなのでスルーしておこう。彼女も拙い日本語力ではそんな意味まで込めてはないだろう。
『日本語問題なさそう?』
情報伝達魔術でそう聞いてきた彼女に『大丈夫』と伝えた後、笹の空いてるところに短冊を吊るす。
笹の葉のまだほんのりと青い香りの中に短冊が下げられて揺れている。
(こういうの見ると夏って感じだなあ)
まだまだ仕事の完遂までは程遠いけれど、こういう息抜きもまた楽しい。
『ルリ、お昼ご飯どうする?』
情報伝達魔術でそう聞いてきたので『そうめん食べに行こう』と伝えると、彼女はニッと笑って頷いた。



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相模さんとヴィトワール上級魔術官の七夕
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