1 / 38
Lesson1 「俺様No.1に狙われた子犬」 ―夜の街で始まる、危険で甘い沼の入口。
しおりを挟む今宵も光と影が交錯する舞台。
シャンデリアの下、香水とアルコールが溶け合い、笑い声とグラスの音が渦を巻く。
ここはホストクラブCLUB・A(エース)女たちが夢を買いに来る場所。
俺の名は「レオ」。
それが源氏名。
だが本当は黒咲和希、25歳。
この店でNo.1を張る男——自信と余裕をまとった俺様イケメン。
フロアを歩けば必ず視線が集まり、ひとたび目が合えば誰もが二度と離れられなくなる。
オーナーが俺を呼んだ。
「レオ、今日から新人が入るから頼むな」
「へえ。どんな子っすか?」
口元に笑みを浮かべる。
「お前またからかう気だろ?」
オーナーが肩を揺らして笑う。
「人聞き悪いなあ。俺はいつだって、後輩に“愛のある指導”してるだけですよ」
「ま、期待しとけ。めちゃくちゃ可愛いんだ。俺がスカウトした自慢の新人。子犬みたいだぞ」
「子犬?」
俺の口角がさらに上がる。
(へえ、楽しみだな)
——19時、開店前。
「は、はじめまして……みのるです。二十歳です。お酒は弱いんですけど、指名をいただけるように頑張ります。よ、よろしくお願いします!」
金髪がシャンデリアの光を弾き、澄んだ瞳が不安に揺れていた。
スタッフたちが口々にざわめく。
「え、可愛くね?」
「サラサラの髪……やば」
俺は腕を組んで見やる。
(おいおい、想像以上じゃねぇか。こいつ、本当に仔犬だな)
——開店。
「みのる!こっち来い!」
リツに呼ばれて新人は駆け寄る。
「こちらが当店のNo.1、レオさんだ。……かっこいいだろ?」
「はいっ!めちゃくちゃイケメンですね!」
眩しい笑顔に、胸が一瞬ざわつく。
(なんなんだ、この素直さ。危ねぇ……眩しすぎんだろ)
「よろしくな」
俺は軽く頭を撫でるような声色で告げた。
その直後——
「レオさーん!三番テーブル指名です!」
「今行く!」
手を振ってフロアを滑るように歩き出す。
背後では、みのるがリツに必死で教わっていた。
——三番テーブル。
「レオ~!今日も会いたかった!」
香水の匂いとともに、しつこい常連・さおりが身を乗り出す。
「おー、さおりちゃん!俺、幸せだよ~。マジ?シャンパン開けてくれるの?嬉しい!」
俺は完璧な笑顔で抱き寄せる。
(……けど正直、距離感バグってんだよな。甘えたいのか?それとも俺を試したいのか?)
頭を撫でてごまかすと、彼女はさらに密着してきた。
「レオさ~ん、次は一番テーブルです!」
スタッフが救いの手を伸ばす。
「はーい。……さおりちゃんごめん。また戻るから待ってて?」
甘い声で耳元に囁いて、席を立つ。
フロアを抜ける途中、ふと視界の端に映った。
——みのる。
頬が赤く、グラスを握りしめている。
(おいおい……新人のくせに、あの客に無理やり飲まされてんのか?)
足を止め、つい視線を向ける。
そこには、困った顔で笑う仔犬と、距離を詰めてくる女性客。
俺は迷わずテーブルに歩み寄った。
「はじめまして。俺、レオ」
客の瞳が一瞬で奪われる。
「あ、あら……イケメン」
「ありがとう。君はなんて呼べばいい?」
微笑むと、女は頬を赤らめ「えみちゃんって呼んで」と答える。
「えみちゃんか。かわいい名前だな」
軽く指先でグラスを持ち上げ、視線を絡め取る。
背後でみのるが小さく息をついた。
(助けてくれたんだ……)
その表情を見た瞬間、胸の奥に妙な熱が走った。
(クソ……やっぱ可愛い。仔犬のくせに、人を沼に落とす顔しやがって)
——閉店。
煌びやかなネオンがようやく落ち着き、フロアに「お疲れ様」の声が飛び交う。
時計の針は深夜一時。
「レオ!ラーメン行かね?」
声をかけてきたのはケン。指名No.7ホスト、ケン、トーク力とお調子物。場を盛り上げる会話術と人懐っこさで客を惹きつける
「いや、遠慮しとく」
俺はネクタイを緩めながら答えた。
「なんだよーつれないな。……なぁレオ、みのるのやつ、やっぱ可愛いよな?リツとセイヤがこれから焼き肉に連れてくってよ」
「は?」
思わず眉が動く。
セイヤ——指名No.8
ガタイの良いワイルド系。力任せで雑な性格、枕営業で上り詰めた経歴を持つ
「よし、俺らも焼き肉行くぞ」
「え?あいつらと?なんで?」
ケンが目を丸くする。
「……焼き肉の気分だ」
嘘だ。正直、肉なんて今は欲しくない。
ただ、あの仔犬が気になっただけ。
——韓国風の焼肉店。
ジュージューと肉の焼ける音、タレの香ばしい匂い。深夜の空腹とアルコールで、空気がさらに熱を帯びる。
「かんぱーい!」
ジョッキがぶつかり合い、笑い声が弾ける。
セイヤがみのるに身を乗り出した。
「なぁ、みのるはなんでホストやろうと思ったんだ?」
「僕……実は大学中退しちゃって。田舎に戻りたくなくて……バイト探してたら、オーナーに声かけられて……それで」
「へぇ~なるほどな」
俺は横目で彼を見ながら、わざと軽く問いかける。
「みのる、本名は?」
「……みのるです」
「お前、源氏名が本名かよ」
テーブルは一気にひやかしモードに。
「純粋すぎ~」
「嘘つけなさそうだもんな」
みのるは耳まで真っ赤にして、うつむきながら小声で答える。
「だって……嘘ついたら慣れない気がして」
その言葉に俺はつい笑ってしまった。
「クスクス……お前、ほんと可愛いな」
ケンがじっと俺を見て、口の端を上げる。
(……なんだよ、その目は)
ジュージューと肉が焼ける音。
グラスの氷がカランと溶けていく音。
そして、みのるの素直すぎる笑顔。
胸の奥に、妙な予感が灯る。
——こいつといると、ただの夜じゃ済まなくなる。
Lesson2に続く——
1
あなたにおすすめの小説
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
刺されて始まる恋もある
神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
平凡高校生の俺にイケメンアイドルが365回告白してくる理由
スノウマン(ユッキー)
BL
高校三年生の橘颯真はイケメンアイドル星宮光に毎日欠かさず告白されている。男同士とのこともあり、毎回断る颯真だが、一年という時間が彼らの関係を少しずつ変えていく。
どうして星宮は颯真に毎日告白するのか、そして彼らの恋の行方は?
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる