大人になっても、恋は止まらない。──独占と余裕のあいだで

氷月

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Lesson 1独占と余裕のはじまり「──お前のおはようで一日が始まる」

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俺は御影悠哉──ユウヤ(22)

この春、大学を卒業して社会人になった。
研修も終えて、今は広報や広告の部署で働きながら、
時々カメラマンのアシスタントも任されるようになった。

いずれは父の会社を継ぐ身──御影悠哉として、責任は重い。
けど、その重さに押し潰されそうになる時でも俺には帰る場所がある。
まだまだ慣れんことも多いけど、

毎朝「おはよう」って迎えてくれる恋人がいるから、
どんな仕事も頑張れる。

琴森晴(ハル)。
青蘭美術大学の二年で、もうすぐ二十歳や。
去年の秋から同棲を始めて、俺にとっては掛け替えのない存在や。

最近のハルは、ほんま垢抜けてきた。
艶のあるリップに、長いまつ毛が影を落とす目元。
白いトップスに黒の細身パンツのシルエットは、まるで大人の雑誌から飛び出したみたいや。
ピアスが小さく光るたびに、胸の奥がざわつく。
けど……俺の目には、まだまだ“可愛いガキ”にしか見えん。
守りたい、独占したい、誰にも渡したない。
その気持ちは強くなる一方や。

――朝。

「おはよう、ユウヤ」

キッチンから振り向いたハルが、少し眠たげな笑顔で言う。

……その笑顔に、心臓が跳ねた。

ネクタイを整えてた手が止まる。
気づいたら俺は立ち上がって、
ハルを後ろから抱きしめてた。

「おはよう。……お前の声聞いたら、出勤したくなくなるやんけ」

「も、もう……ユウヤ、時間大丈夫?」
頬を赤くして焦るハル。

俺はわざと耳元に唇を寄せる。

「大丈夫や。……ハルが可愛すぎて遅刻した言い訳ぐらい、なんぼでも考えたる」

「そんなんダメだよ……」って俯くその仕草が、また堪らん。

唇に軽くキスを落としてから、ハルの目をじっと見つめた。

「……お前の全部は俺のもんや。忘れんなよ」

ハルは顔を真っ赤にして、俺の胸を軽く叩いた。
「……いってらっしゃい」

「行ってきます」

玄関で振り返ると、ハルが小さく手を振って「いってらっしゃい」って笑う。

……あかん、あの笑顔、反則や。
会社行く前から心臓わし掴みにされてる。

ネクタイを指で直して外に出る。
夏の匂いが混じった風がスーツを揺らす。

「今日も頑張れる理由は、やっぱりあいつやな」

そう呟いて、俺は会社へと向かった。


Lesson2 へ続く
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