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【9】お前やから、好きなんや
しおりを挟む季節は巡り、もう十一月。
入試まで、あと二ヶ月弱――
一月の本番までは、もうカウントダウンや。
ハルと付き合いだして、もうすぐ三ヶ月。短いはずの時間が、やけに濃くて、あっという間に過ぎていく。
「どうしても、受からせたい」
そう思うたび、俺は週に三回はハルの家に通ってる。
勉強を教えるため――やけど、それだけやない。
たしかに昔から女の子に困ったことなんてなかった。けど、心から「可愛い」とか「好き」とか…そう思えたことは、ほとんどなかった。
なのに、なんでやろな。
ハルの素直さ、真っ直ぐな目、時々見せる無防備な笑顔――気づいたら全部に落ちてた。
見てるだけで、胸が温かくなる。ハルやから、俺は好きなんや。
「ね?ここ、どうやって解くの?」
ペンを握ったまま、隣の席で問題集を覗き込むハル。
「ん?どこや?」
思わず口元が緩む。ハルの真剣な横顔が可愛すぎて、問題よりもそっちに集中してしまう自分に苦笑した。
「集中できひんやろ?」
意地悪く笑ったら、ハルがムッとして、またペンを握る。
その横顔を見て、胸の奥がじんわり温かくなる
勉強会は、いつの間にか俺にとって甘い拷問みたいや。
もっと触れたい、もっと近くにいたい――
でも、今はこの時間を大事にしたい。
試験が終わるまで、ちゃんと我慢できるんやろか… 俺。
今日も、いつも通り勉強の休憩タイム。
「ちょっとご飯作るから、座って待ってて」
腰にエプロンをつけたハルがキッチンに立つ。
その背中がやけに近く見えて、俺はふらりと近づいた。
「……ねぇ、ユウヤ!熱いから離れて!」
「お前が作ってるもんより、今はこっちの方が熱いわ」
耳元で囁くと、ハルの手が止まり、耳まで赤くなる。
わざとらしく笑って、腰に回した腕をゆっくり離す。
食卓には、カルボナーラと野菜スープ。
「いただきます」
フォークをくるくる回し、一口食べると――口の中に広がる濃厚な味。
「……うまいな。店出せるで」
「大げさだよ」
そう言いながらも、ハルは嬉しそうに笑う。その笑顔が、また俺をダメにする。
食後、少しだけ勉強を再開。
窓の外が群青色に染まる頃、俺はペンを置いた。
「今日はそろそろ……」
立ち上がろうとした俺の袖を、ハルが小さく引く。
「……泊まって。母さん、出張でいないんだ」
ハルはノートの端を弄びながら、目を合わせてこない。
心臓の鼓動の音が、自分でも聞こえそうやった。
「……ほんまに、ええんか?」
「……だって、まだ一緒にいたい」
ゆっくりと歩み寄り、顎を指先で持ち上げた。
「そんなこと言われたら、帰れるわけないやろ」
低く囁くと、ハルは一瞬瞬きをして、すぐに頬を染める。
唇が触れた瞬間、時間が止まったような感覚になる。
軽く触れるだけじゃ足りなくて、もう一度深く口づける。
指先はハルの頬から首筋へ――。
「……なぁ、ハル」
名前を呼ぶだけで、唇が触れそうな距離。
その瞳を覗き込むと、瞬きすら忘れたみたいに俺だけを見てる。
「……お前、ほんま罪なやつやな」
低く甘い声が自分の喉から零れ落ちる。
「そんな顔されたら、もう止まらんやろ」
ハルの喉が小さく上下して、耳まで真っ赤になる。
その仕草すら愛しくて、俺はゆっくり距離を詰めた。
「……今夜は、離せそうにないわ」
そう囁いて、ぎゅっと抱きしめた。
ハルの鼓動と俺の鼓動が重なって、夜が静かに深まっていく――。
続くー♡
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