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石榴の②②
石榴の月~愛され求められ奪われて~
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そうだ、そうすれば良かったのだ。
こんなに苦しむのであれば、お民をゆかせるのではなかった。お民が嘉門の許に行くと言った時、お民を殺して、自分もすぐに後を追えば良かったのだ。
今からでも遅くはない。源治は普段はしまっている匕首を取り出してきて、手にした。
この刃でお民の白いふくよかな胸を刺し貫き、自分もまた、同じ刃で生命を絶つ。最早、この胸の苦しみから逃れるためには、それしかすべはない。
源治が匕首を手にして立ち上がったその時、源治の手にふわりと誰かの手のひらが重ねられたような錯覚を憶えた。
やわらかなこの感触は―。
「お民ッ!?」
源治は慣れ親しんだ女の手の温もりを確かに己れの手の上に感じたのだ。
刹那、源治の瞼に今朝方、別れたばかりのお民の顔が甦った。今にも泣き出しそうな顔で、それでも最後だから泣くまいと必死で我慢していた―。
自分を犠牲にしても、石澤という男の無茶な要求を受け入れ、徳平店を守るのだと言っていたお民。
皆の生活を、徳平店を守るために人柱になったも同然のお民の生命を奪うような資格など、源治にはない。
今、己れがあの不器用で、優しすぎるほど優しい女にしてやれるたった一つのことは、ここで、あの女がその身を挺してでも守ろうとしたこの徳平店で彼女を待つだけだ。
一年後、お民が晴れて戻ってきた時、ここで笑顔で出迎えてやること、それがあの女に示せる唯一の真心だろう。
たとえ、今、源治が匕首を懐に忍ばせて石澤の屋敷に乗り込んだとしても、本懐を遂げるどころか、無礼討ちになるのが関の山といったところだろう。それに、自分の醜い嫉妬―お民が石澤に抱かれていることへの妬心だけで、お民を死出の旅の道連れにするとは、とんだ身勝手な話だ。
お民だって、今は辛い想いに―惚れてもおらぬ男の慰みものになるという汚辱の想いに耐えているのだ。自分だけが死ぬほどの苦しみや葛藤に苛まれているわけではない。
待とう、ここであの女の帰りをひたすら待とう。何より、お民と自分は約束したではないか。〝げんまん〟と言って指を差し出してきたときのお民の泣き顔を思い出し、源治は込み上げる涙をこらえた。
もし、お民が帰ってきた時、源治がここにいなかったら、あの女は泣くだろう。とことんお人好しで、優しくて、いつも自分より他人のことばかりにかまけている女。
―人生で最高の、たった一人の女に俺は出逢ったんだな。
お民こそ、俺のたった一人の女だ。だからこそ、お民との約束を破るわけにはゆかない。
源治は明かり取りの窓から差し込む細い光に眼を細める。
紫紺の夜空に琥珀色の眉月が浮かんでいる。どこからか、かすかな梅の香が夜風に乗って運ばれてきた。
【四】
どうやら浅い微睡みにたゆたっていたようだ。お民はうっすらと眼を開く。
ここは一体、どこなのだろう。ゆるりと視線をめぐらしてみる。まるで細い一本の銀糸を思わせるような鎖が四方に網の目状となって張り巡らされており、その銀の糸の至る所には露の煌めきを思わせる小さな光の粒が宿っていた。
―きれい。
お民は思わず眼を見開き、刻一刻と様々な色に染まり、光り輝く露の雫を眺めた。
が、次の瞬間、烈しい驚愕と衝撃が襲った。
きらきらと輝く光の雫に触れようとして差しのべた手のひら、いや、腕そのものが微動だにしないのだ。
―何故? どうして?
著しい恐慌状態に陥りながら、お民は懸命に手脚を動かそうとするが、一向に動かない。
ふと自分の手脚を眺めやり、お民は絶望の呻きを上げた。煌めく光の粒を宿した銀の糸がお民の身体中―手脚に絡みついている。
いや、糸ではない、これは鎖だ。頑丈な、鋼(はがね)の細い鎖がお民の身体中に纏いつき、離れない。何とか縛(いまし)めから逃れようともがけばもがくほどに、鎖は執拗にお民の手や脚に絡みついてきて、これでもかといわんばかりに締めつけてくる。
シュルル・・・という不気味な唸り声が低く耳に聞こえ、お民は我に返った。わずか前方に、巨大な―大の大人数人ほどの大きさをした蜘蛛が待ち構えていた。
まさか、この銀の鋼は化けもののような蜘蛛の巣?
そう考えた途端、戦慄にも似た烈しいおののきと恐怖がひたひたと押し寄せてきた。
巨大蜘蛛は低い咆哮を上げつつ、じりじりとお民に向かって間合いをつめてくる。
お民はあまりの怖ろしさに、このまま意識を手放してしまいたいとさえ願った。
と、お民は、愕然とした。
真正面から次第に近づいてくるお化け蜘蛛の顔は、何と人のものだ! しかも世にも二つとない怖ろしげな人面蜘蛛の顔は他ならぬ石澤嘉門のものだった。
夜毎、お民の身体を犯し、責め立てる男。その男と瓜二つの顔をした蜘蛛が囁く。
―俺の子を生め。そなたは、俺の子を生むために、ここに連れられてきたのだ。
蜘蛛がパックリと割れた大きな口を開くと、チロチロと紅い舌を出す。その舌があたかも蔓が伸びるかのように妖しく長くなる。
―いやっ。誰か、助けてっ。
銀の糸に全身を縛められたお民は、一糸まとわぬ全裸だった。
巨大な蜘蛛の紅い舌は禍々しいほど鮮やかで血の色のよう。そのちろちろと動く舌が長く伸び、お民の白い身体を舐め回す。ふくよかな胸乳から、豊かな腰、下腹部へと紅い舌が這い回る。
ペチャペチャと淫らな水音まで聞こえるような気がして、お民は思わず両眼を固く瞑った。
―俺の子を生め。
耳許で嘉門と同じ顔を持つ蜘蛛がまた、囁く。
―俺の子を生め。
二月の末、初めて臥床(ふしど)を共にしてからというもの、嘉門は毎夜、離れに通ってきた。むろん、お民を抱くためであり、お民は一晩中、嘉門の執拗な愛撫に耐えなければならなかった。
情事の後、あるいは最中に、嘉門は必ずこう囁くのだ。
―俺の子を生め、良いか、必ず、俺の子を身籠もるのだぞ。
そのひと言は今や、お民の耳に不吉な呪(まじな)い言葉のように灼きついて離れない。
「―おい、お民、お民?」
誰かがどこかで呼んでいる。
私を呼んでいるのは誰―?
お民は、かすかな希望を持ってそっと眼を開ける。
だが、次の瞬間、彼女の儚い願いは無惨に打ち砕かれる。
お民が身を横たえているのは薄くて粗末な布団ではなく、絹のふかふかの立派なものだ。
しかも、隣に寝ているのは誰より逢いたいと願う良人ではなく、あの忌まわしい―先刻、見たばかりの妖しい夢に現れた蜘蛛と全く同じ顔をした男だった。
「随分とうなされていたようだが」
お民は嘉門の傍らにゆっくりと身を起こす。何も身につけてはおらぬ裸の肩に、嘉門が背後からそっと夜着を着せかけた。
「汗びっしょりだ。こんなに濡れて」
嘉門の指摘のとおり、まだ弥生の下旬に差しかかったばかりだというのに、お民の白い身体には汗がうっすらと滲んでいた。
嘉門がゆっくりと近づき、お民の身体を褥に横たえる。
男の顔がお民の波打つ乳房の間に埋まった。生温かい舌がお民の桃色の先端や乳輪をゆっくりとなぞってゆく。
お民の乳房を吸いながら、嘉門は膚に滲んだ汗の玉をもゆっくりと口で吸い取っていった。
―あの夢と同じ。
お民は、乳房を口に含む男の口中の生温かさや、時折、先端を舐める舌の感触にたまらないおぞましさを憶えずにはいられなかった。
こうやって、あの夢のように、お民は夜毎、男に犯され慰みものにされてゆく。
自ら覚悟していたつもりでも、お民にとっては辛い日々だった。いっそのこと気でも触れてしまえば、夜毎辱めを受けることへの抵抗も哀しみも感じなくて済むのかもしれない。
でも、お民には源治との約束があった。たとえどんなことがあっても、生きて惚れた男の許に戻らねばならない。込み上げそうになった涙を眼の裏で乾かし、お民は障子越しに閨に差し込んでくる蒼白い光に眼を向けた。
東の空が白々と明るくなっているようであった。夜明けが近いのかもしれない。源治のことを思い出しながら、嘉門に抱かれるのはとりわけ辛かった。
お民はつとめて惚れた男のことを考えないようにしながら、虚ろに見開いた眼でぼんやりと夜明け前の光を見つめていた。
その間にも、嘉門の愛撫は烈しさを増してゆく。それを止めるすべもないままに、お民は苦痛とも快楽ともつかぬ微妙な感覚の中に全身を委ねながら、それでも意識だけは不思議なほどに醒めた頭でとりとめもないことを考え続けた。
こんなに苦しむのであれば、お民をゆかせるのではなかった。お民が嘉門の許に行くと言った時、お民を殺して、自分もすぐに後を追えば良かったのだ。
今からでも遅くはない。源治は普段はしまっている匕首を取り出してきて、手にした。
この刃でお民の白いふくよかな胸を刺し貫き、自分もまた、同じ刃で生命を絶つ。最早、この胸の苦しみから逃れるためには、それしかすべはない。
源治が匕首を手にして立ち上がったその時、源治の手にふわりと誰かの手のひらが重ねられたような錯覚を憶えた。
やわらかなこの感触は―。
「お民ッ!?」
源治は慣れ親しんだ女の手の温もりを確かに己れの手の上に感じたのだ。
刹那、源治の瞼に今朝方、別れたばかりのお民の顔が甦った。今にも泣き出しそうな顔で、それでも最後だから泣くまいと必死で我慢していた―。
自分を犠牲にしても、石澤という男の無茶な要求を受け入れ、徳平店を守るのだと言っていたお民。
皆の生活を、徳平店を守るために人柱になったも同然のお民の生命を奪うような資格など、源治にはない。
今、己れがあの不器用で、優しすぎるほど優しい女にしてやれるたった一つのことは、ここで、あの女がその身を挺してでも守ろうとしたこの徳平店で彼女を待つだけだ。
一年後、お民が晴れて戻ってきた時、ここで笑顔で出迎えてやること、それがあの女に示せる唯一の真心だろう。
たとえ、今、源治が匕首を懐に忍ばせて石澤の屋敷に乗り込んだとしても、本懐を遂げるどころか、無礼討ちになるのが関の山といったところだろう。それに、自分の醜い嫉妬―お民が石澤に抱かれていることへの妬心だけで、お民を死出の旅の道連れにするとは、とんだ身勝手な話だ。
お民だって、今は辛い想いに―惚れてもおらぬ男の慰みものになるという汚辱の想いに耐えているのだ。自分だけが死ぬほどの苦しみや葛藤に苛まれているわけではない。
待とう、ここであの女の帰りをひたすら待とう。何より、お民と自分は約束したではないか。〝げんまん〟と言って指を差し出してきたときのお民の泣き顔を思い出し、源治は込み上げる涙をこらえた。
もし、お民が帰ってきた時、源治がここにいなかったら、あの女は泣くだろう。とことんお人好しで、優しくて、いつも自分より他人のことばかりにかまけている女。
―人生で最高の、たった一人の女に俺は出逢ったんだな。
お民こそ、俺のたった一人の女だ。だからこそ、お民との約束を破るわけにはゆかない。
源治は明かり取りの窓から差し込む細い光に眼を細める。
紫紺の夜空に琥珀色の眉月が浮かんでいる。どこからか、かすかな梅の香が夜風に乗って運ばれてきた。
【四】
どうやら浅い微睡みにたゆたっていたようだ。お民はうっすらと眼を開く。
ここは一体、どこなのだろう。ゆるりと視線をめぐらしてみる。まるで細い一本の銀糸を思わせるような鎖が四方に網の目状となって張り巡らされており、その銀の糸の至る所には露の煌めきを思わせる小さな光の粒が宿っていた。
―きれい。
お民は思わず眼を見開き、刻一刻と様々な色に染まり、光り輝く露の雫を眺めた。
が、次の瞬間、烈しい驚愕と衝撃が襲った。
きらきらと輝く光の雫に触れようとして差しのべた手のひら、いや、腕そのものが微動だにしないのだ。
―何故? どうして?
著しい恐慌状態に陥りながら、お民は懸命に手脚を動かそうとするが、一向に動かない。
ふと自分の手脚を眺めやり、お民は絶望の呻きを上げた。煌めく光の粒を宿した銀の糸がお民の身体中―手脚に絡みついている。
いや、糸ではない、これは鎖だ。頑丈な、鋼(はがね)の細い鎖がお民の身体中に纏いつき、離れない。何とか縛(いまし)めから逃れようともがけばもがくほどに、鎖は執拗にお民の手や脚に絡みついてきて、これでもかといわんばかりに締めつけてくる。
シュルル・・・という不気味な唸り声が低く耳に聞こえ、お民は我に返った。わずか前方に、巨大な―大の大人数人ほどの大きさをした蜘蛛が待ち構えていた。
まさか、この銀の鋼は化けもののような蜘蛛の巣?
そう考えた途端、戦慄にも似た烈しいおののきと恐怖がひたひたと押し寄せてきた。
巨大蜘蛛は低い咆哮を上げつつ、じりじりとお民に向かって間合いをつめてくる。
お民はあまりの怖ろしさに、このまま意識を手放してしまいたいとさえ願った。
と、お民は、愕然とした。
真正面から次第に近づいてくるお化け蜘蛛の顔は、何と人のものだ! しかも世にも二つとない怖ろしげな人面蜘蛛の顔は他ならぬ石澤嘉門のものだった。
夜毎、お民の身体を犯し、責め立てる男。その男と瓜二つの顔をした蜘蛛が囁く。
―俺の子を生め。そなたは、俺の子を生むために、ここに連れられてきたのだ。
蜘蛛がパックリと割れた大きな口を開くと、チロチロと紅い舌を出す。その舌があたかも蔓が伸びるかのように妖しく長くなる。
―いやっ。誰か、助けてっ。
銀の糸に全身を縛められたお民は、一糸まとわぬ全裸だった。
巨大な蜘蛛の紅い舌は禍々しいほど鮮やかで血の色のよう。そのちろちろと動く舌が長く伸び、お民の白い身体を舐め回す。ふくよかな胸乳から、豊かな腰、下腹部へと紅い舌が這い回る。
ペチャペチャと淫らな水音まで聞こえるような気がして、お民は思わず両眼を固く瞑った。
―俺の子を生め。
耳許で嘉門と同じ顔を持つ蜘蛛がまた、囁く。
―俺の子を生め。
二月の末、初めて臥床(ふしど)を共にしてからというもの、嘉門は毎夜、離れに通ってきた。むろん、お民を抱くためであり、お民は一晩中、嘉門の執拗な愛撫に耐えなければならなかった。
情事の後、あるいは最中に、嘉門は必ずこう囁くのだ。
―俺の子を生め、良いか、必ず、俺の子を身籠もるのだぞ。
そのひと言は今や、お民の耳に不吉な呪(まじな)い言葉のように灼きついて離れない。
「―おい、お民、お民?」
誰かがどこかで呼んでいる。
私を呼んでいるのは誰―?
お民は、かすかな希望を持ってそっと眼を開ける。
だが、次の瞬間、彼女の儚い願いは無惨に打ち砕かれる。
お民が身を横たえているのは薄くて粗末な布団ではなく、絹のふかふかの立派なものだ。
しかも、隣に寝ているのは誰より逢いたいと願う良人ではなく、あの忌まわしい―先刻、見たばかりの妖しい夢に現れた蜘蛛と全く同じ顔をした男だった。
「随分とうなされていたようだが」
お民は嘉門の傍らにゆっくりと身を起こす。何も身につけてはおらぬ裸の肩に、嘉門が背後からそっと夜着を着せかけた。
「汗びっしょりだ。こんなに濡れて」
嘉門の指摘のとおり、まだ弥生の下旬に差しかかったばかりだというのに、お民の白い身体には汗がうっすらと滲んでいた。
嘉門がゆっくりと近づき、お民の身体を褥に横たえる。
男の顔がお民の波打つ乳房の間に埋まった。生温かい舌がお民の桃色の先端や乳輪をゆっくりとなぞってゆく。
お民の乳房を吸いながら、嘉門は膚に滲んだ汗の玉をもゆっくりと口で吸い取っていった。
―あの夢と同じ。
お民は、乳房を口に含む男の口中の生温かさや、時折、先端を舐める舌の感触にたまらないおぞましさを憶えずにはいられなかった。
こうやって、あの夢のように、お民は夜毎、男に犯され慰みものにされてゆく。
自ら覚悟していたつもりでも、お民にとっては辛い日々だった。いっそのこと気でも触れてしまえば、夜毎辱めを受けることへの抵抗も哀しみも感じなくて済むのかもしれない。
でも、お民には源治との約束があった。たとえどんなことがあっても、生きて惚れた男の許に戻らねばならない。込み上げそうになった涙を眼の裏で乾かし、お民は障子越しに閨に差し込んでくる蒼白い光に眼を向けた。
東の空が白々と明るくなっているようであった。夜明けが近いのかもしれない。源治のことを思い出しながら、嘉門に抱かれるのはとりわけ辛かった。
お民はつとめて惚れた男のことを考えないようにしながら、虚ろに見開いた眼でぼんやりと夜明け前の光を見つめていた。
その間にも、嘉門の愛撫は烈しさを増してゆく。それを止めるすべもないままに、お民は苦痛とも快楽ともつかぬ微妙な感覚の中に全身を委ねながら、それでも意識だけは不思議なほどに醒めた頭でとりとめもないことを考え続けた。
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