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再会
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ジェニファーは5人兄弟の真ん中で脳筋の兄が2人と少し理知的な弟とお調子者の妹が居る。
兄弟は皆、年齢が近く脳筋の兄は2人ともまだ結婚していない。
実家に帰ってしばらくは皆ジェニファーのことをそっとしておいてくれた。
一週間ほど経った時、隣国風の庭園を歩いていると弟と妹が何やら言い争っている声が聞こえた。
「Jackのカードは抜く約束だろ?」
「ロニーの方が強いんだからこのくらいハンデだと思ってよ」
「だとしても先に言っておいてくれないと計算が狂うだろ」
どうやらカードゲームをやっているらしい。弟はこの家の子にしては賢く、カードゲームの類ではこの家で彼に敵うものはいない。
「何を騒いでいるの?」
ジェニファーがそう言うと2人は「あっ」と言って顔を見合わせた。2人とも結婚して一年も経たずに夫に先立たれた姉に何と話しかけて良いのかわからないのだ。
「気を使わなくても良いわ。私も前を向かなきゃと思っているのよ」
そう言うとお調子者の妹が顔を輝かせた。
「だったら、カードゲームをしましょう?」
そう言いながら妹は手元でカードを繰っていた。
ジェニファーは妹の提案を受け入れてカードゲームをする事にした。久しぶりのカードゲームは思いの外楽しかった。
3人でカードをしていると鍛錬を終えた兄達もやってきて5人でカードをする。
幼い頃からの5人でよくカードゲームをした。その日常が戻ったようだった。
5人での遊びは夜ご飯を挟んで夜まで続いた。妹のタマラが眠くなったと言って部屋に戻り、会はお開きになった。長兄は仕事が残っていると言って出ていき、次兄と弟と3人で砂糖菓子を食べながらお茶をすることになった。
次兄であるサミュエルがジェニファーにお茶を入れてくれてまったりとした時間が流れる。
「アーロン殿のことは残念だったな」
次兄がジェニファーの手を握ってくれる。
「そうね。初めの頃は取り乱していたのだけれど、そろそろ前を向かなきゃと思ってる」
ジェニファーはそう言って頷いた。
「ミッドラッツェル伯爵は何て?」
そう聞いてきたのは弟のロナルドだ。
「まさか、姉さんのこと追い出したりはしないよね?」
「まさか。伯爵は私はミッドラッツェル家の嫡子の妻なのだからコリンと結婚してはどうかと言ってくれていたわ。アーロンの従兄弟で次、伯爵を継ぐのは彼になるから。」
そう言いながらジェニファーは少し肩を落とした。
「良い話じゃない?」
と気軽に言うのはロナルドだ。ロナルドは少し頭でっかちなところがある。彼からしてみればこれは良い話なのだろう。
しかし、ジェニファーが肩を落としていることにサミュエルが気付いたらしい。
「乗り気じゃなさそうだな。」
脳筋だとばかり思っていた次兄はいつの間にか気のつく男になったらしい。
「そうね。私、コリンには嫌われているみたいで。」
そう言うとロナルドが「姉さんを嫌うなんて」と憤慨した。
サミュエルは落ち着いた様子で
「ジェニーとしてはどうなんだ?」
と聞いてきた。
兄にそう聞かれて「彼が望んでくれるなら喜んで嫁ぐわ」と答えた。
その答えた方で兄にはジェニファーの気持ちがばれた気がした。
「俺もさ、見合いの話が来てるんだ」
ハーブティを飲んだ兄がそう言った。
「えっ?聞いてないんだけど。」
そう言ったのはロナルドだった。
「まだ決まった話じゃないからな。」
そう言いながら兄が続ける。
「ゼッペリン家からの話で、向こうは去年、落馬事故で嫡男を亡くしている。女家系らしく他に男の子が居ないらしい。特別措置で娘さんが急遽家を継ぐことになったんだが、その婿にどうかと言う話だ。」
「ゼッペリンって言うと辺境伯家?」
「赤髪のメリッサ様ですか?」
「そうだな。」
サミュエルは済ました顔で答えているがこれは大事件である。
メリッサ様と言えば麗しの令嬢として有名で誰が彼女を落とせるかと賭けになるような御仁である。
「お知り合いだったのですか?」
ロナルドが不躾にも乗り出して聞く。
「あぁ、まぁ、ちょっとな。でも、まぁ、彼女のお眼鏡に敵わなければ話は無かったことになるし」
サミュエルはしどろもどろ答える。
「実は一度、『あなたなんて大嫌い』と言われているんだ。でも、俺は諦めたくない。だから、今年の社交は頑張るつもりなんだ。」
「社交は苦手ではなかったですか?家を継がない次男には必要ないってあれほど逃げ回っていたのに。」
ロナルドが辛辣にそう言うとサミュエルは恥ずかしそうに頬を掻いた。
「女辺境伯の夫になるのにそうも言ってられまい?俺はな、何もせずに彼女を失って後悔したくないんだ。」
そう言ってサミュエルはジェニファーを見た。その目はとても力強かった。
(だから、お前も後悔しないように動けってことね)
ジェニファーはサミュエルを見て頷いた。
兄は嫌いだと言われても頑張るのだと言う。何も言われていないのに諦めようとしていたジェニファーは自分を情けなく感じた。
「私も前を向いて頑張らなきゃいけないわね」
そう呟いてからのジェニファーの行動は早かった。ジェニファーは元来、前向きでガッツがあるタイプなのである。
ジェニファーは次の日に早速ミッドラッツェル伯爵家とコリンに手紙を書いた。コリンには春に友人の結婚式があるのでエスコートをお願いしたいと書いた。
彼からは承諾の旨の手紙がすぐに返ってきた。
もしかすると手紙を無視されたり断られるかもしれないと思っていたのでとても嬉しかった。
コリンの字は縦に長くとても綺麗な字だった。
それからは、ナットの結婚式に向けてドレスを注文したりと忙しい日を過ごした。
日に日に陽射しが強くなってきた。
結婚式は隣の領地で行われる。日帰りできる距離であるがショウ家から参列する人数も多いので結婚式の日は一泊する予定である。
その一週間前からコリンはショウ家に滞在する手筈になっていた。
ジェニファーをエスコートする為の揃えの衣装を手直しする事を考えるとそのくらいは時間が必要なのだ。
コリンが来る日、ジェニファーはいつもに増してそわそわしていた。
事情を知っているサミュエル兄さんが苦笑しながら、ほら、馬車の音がするからコリン殿が来たのではないか、と扉を開けた。
遠くの馬車が少しずつ大きくなり、屋敷の馬車留めまで来た。
春の陽射しで見たコリンはとても煌めいていて、こんなにカッコよかったかしら、と思った。
兄弟は皆、年齢が近く脳筋の兄は2人ともまだ結婚していない。
実家に帰ってしばらくは皆ジェニファーのことをそっとしておいてくれた。
一週間ほど経った時、隣国風の庭園を歩いていると弟と妹が何やら言い争っている声が聞こえた。
「Jackのカードは抜く約束だろ?」
「ロニーの方が強いんだからこのくらいハンデだと思ってよ」
「だとしても先に言っておいてくれないと計算が狂うだろ」
どうやらカードゲームをやっているらしい。弟はこの家の子にしては賢く、カードゲームの類ではこの家で彼に敵うものはいない。
「何を騒いでいるの?」
ジェニファーがそう言うと2人は「あっ」と言って顔を見合わせた。2人とも結婚して一年も経たずに夫に先立たれた姉に何と話しかけて良いのかわからないのだ。
「気を使わなくても良いわ。私も前を向かなきゃと思っているのよ」
そう言うとお調子者の妹が顔を輝かせた。
「だったら、カードゲームをしましょう?」
そう言いながら妹は手元でカードを繰っていた。
ジェニファーは妹の提案を受け入れてカードゲームをする事にした。久しぶりのカードゲームは思いの外楽しかった。
3人でカードをしていると鍛錬を終えた兄達もやってきて5人でカードをする。
幼い頃からの5人でよくカードゲームをした。その日常が戻ったようだった。
5人での遊びは夜ご飯を挟んで夜まで続いた。妹のタマラが眠くなったと言って部屋に戻り、会はお開きになった。長兄は仕事が残っていると言って出ていき、次兄と弟と3人で砂糖菓子を食べながらお茶をすることになった。
次兄であるサミュエルがジェニファーにお茶を入れてくれてまったりとした時間が流れる。
「アーロン殿のことは残念だったな」
次兄がジェニファーの手を握ってくれる。
「そうね。初めの頃は取り乱していたのだけれど、そろそろ前を向かなきゃと思ってる」
ジェニファーはそう言って頷いた。
「ミッドラッツェル伯爵は何て?」
そう聞いてきたのは弟のロナルドだ。
「まさか、姉さんのこと追い出したりはしないよね?」
「まさか。伯爵は私はミッドラッツェル家の嫡子の妻なのだからコリンと結婚してはどうかと言ってくれていたわ。アーロンの従兄弟で次、伯爵を継ぐのは彼になるから。」
そう言いながらジェニファーは少し肩を落とした。
「良い話じゃない?」
と気軽に言うのはロナルドだ。ロナルドは少し頭でっかちなところがある。彼からしてみればこれは良い話なのだろう。
しかし、ジェニファーが肩を落としていることにサミュエルが気付いたらしい。
「乗り気じゃなさそうだな。」
脳筋だとばかり思っていた次兄はいつの間にか気のつく男になったらしい。
「そうね。私、コリンには嫌われているみたいで。」
そう言うとロナルドが「姉さんを嫌うなんて」と憤慨した。
サミュエルは落ち着いた様子で
「ジェニーとしてはどうなんだ?」
と聞いてきた。
兄にそう聞かれて「彼が望んでくれるなら喜んで嫁ぐわ」と答えた。
その答えた方で兄にはジェニファーの気持ちがばれた気がした。
「俺もさ、見合いの話が来てるんだ」
ハーブティを飲んだ兄がそう言った。
「えっ?聞いてないんだけど。」
そう言ったのはロナルドだった。
「まだ決まった話じゃないからな。」
そう言いながら兄が続ける。
「ゼッペリン家からの話で、向こうは去年、落馬事故で嫡男を亡くしている。女家系らしく他に男の子が居ないらしい。特別措置で娘さんが急遽家を継ぐことになったんだが、その婿にどうかと言う話だ。」
「ゼッペリンって言うと辺境伯家?」
「赤髪のメリッサ様ですか?」
「そうだな。」
サミュエルは済ました顔で答えているがこれは大事件である。
メリッサ様と言えば麗しの令嬢として有名で誰が彼女を落とせるかと賭けになるような御仁である。
「お知り合いだったのですか?」
ロナルドが不躾にも乗り出して聞く。
「あぁ、まぁ、ちょっとな。でも、まぁ、彼女のお眼鏡に敵わなければ話は無かったことになるし」
サミュエルはしどろもどろ答える。
「実は一度、『あなたなんて大嫌い』と言われているんだ。でも、俺は諦めたくない。だから、今年の社交は頑張るつもりなんだ。」
「社交は苦手ではなかったですか?家を継がない次男には必要ないってあれほど逃げ回っていたのに。」
ロナルドが辛辣にそう言うとサミュエルは恥ずかしそうに頬を掻いた。
「女辺境伯の夫になるのにそうも言ってられまい?俺はな、何もせずに彼女を失って後悔したくないんだ。」
そう言ってサミュエルはジェニファーを見た。その目はとても力強かった。
(だから、お前も後悔しないように動けってことね)
ジェニファーはサミュエルを見て頷いた。
兄は嫌いだと言われても頑張るのだと言う。何も言われていないのに諦めようとしていたジェニファーは自分を情けなく感じた。
「私も前を向いて頑張らなきゃいけないわね」
そう呟いてからのジェニファーの行動は早かった。ジェニファーは元来、前向きでガッツがあるタイプなのである。
ジェニファーは次の日に早速ミッドラッツェル伯爵家とコリンに手紙を書いた。コリンには春に友人の結婚式があるのでエスコートをお願いしたいと書いた。
彼からは承諾の旨の手紙がすぐに返ってきた。
もしかすると手紙を無視されたり断られるかもしれないと思っていたのでとても嬉しかった。
コリンの字は縦に長くとても綺麗な字だった。
それからは、ナットの結婚式に向けてドレスを注文したりと忙しい日を過ごした。
日に日に陽射しが強くなってきた。
結婚式は隣の領地で行われる。日帰りできる距離であるがショウ家から参列する人数も多いので結婚式の日は一泊する予定である。
その一週間前からコリンはショウ家に滞在する手筈になっていた。
ジェニファーをエスコートする為の揃えの衣装を手直しする事を考えるとそのくらいは時間が必要なのだ。
コリンが来る日、ジェニファーはいつもに増してそわそわしていた。
事情を知っているサミュエル兄さんが苦笑しながら、ほら、馬車の音がするからコリン殿が来たのではないか、と扉を開けた。
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