【完結】転生王子は、今日も婚約者が愛しい

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だって考えてみてほしい。
どんなに好きでも所詮はゲームのキャラクター。そこには次元という超えられない壁が存在するのだ。
それが取り払われた！自由に推しと話し、笑い合い、果ては結婚することまで決まっているのだ！
こんなに素晴らしいことがあって本当にいいのだろうか。
ゲームの中では、一途だったオリヴィアは最後の最後まで婚約者を信じて愛そうとした。
つまり！大好きなキャラクターが無条件で愛してくれる立場にいるのだ！
自分なら絶対に彼女を裏切ったりしない。
絶対に彼女を悲しませたりしない！

だからまず最初に望んだのはヒロインの攻略対象が自分にならないことだった。
彼女に引っ掻き回されなければ心配するようなことはない。
ただただ平穏に、彼女と幸せな家庭を築きたかったのだ。
だが人生そううまくはいかない。
なんの冗談か、ヒロインの攻略対象は、数々の男性キャラクターの中から自分に選ばれてしまったのだった。


「もうっ、ステファン様ったら！今日はお話ししたいことがあるからホールに入らずに待っててねって行ったじゃないですか！」

ぷんっと頬を膨らませて腰に手を当てて自分が可愛く見える角度を計算し尽くした角度から上目遣いに睨んでくるのはジュリーだ。
ステファンは自分の心と視線が急速に冷えていくのを確かに感じた。
今、ステファンの隣にはオリヴィアがいる。今日も婚約者として、エスコートさせてほしいとステファン側から申し入れたのだ。
わずかに頬を赤らめながら自分の手を取ってくれたオリヴィアのかわいらしかったことと言ったら！
その彼女が今、不安げに自分を見つめている。ほんの少しでも彼女を不安にさせてなるものか！


「男爵令嬢、わたしはあなたの申し出に首を縦に振った覚えはないのだが。」