9 / 24
9
しおりを挟む
9
「ステファン様~っ!」
黄色いと表現して差し支えのない甲高い声とパタパタと走り寄ってくる軽快な足音。
声のしてきた方に軽く目をやると、頬を上記させたジュリーがいた。
胸元に手を当てて息を整えると、後ろ手に持っていた包みを差し出してきた。
「これ……お弁当、作ってきたんです。お昼ご一緒しても?頑張ったから、きっと味は美味しいはずです!」
「いや、遠慮しておこう。」
「はい!では一緒に中庭に…………え……?」
「遠慮する、と言った。王族たるもの、毒味も住んでいない他人の作ったものなど迂闊に口にすることはできないからな。」
「私がそんなことするわけないじゃないですか!それに、一緒に同じものを食べれば解決でしょう?私が自分の食べるものに毒を盛るわけないんですから!」
「さぁな。中には捨て身で殺そうとしてくる刺客もいる。今後も君の手料理を食べることはないだろうから心遣いは無用だ。――――あぁ、それと。令嬢が大きな足音を立てて廊下を走るなんてはしたないとは思わないか?学園の風紀を見出すのは控えるように。以上だ。それでは。」
言いたいことだけ言うと、さっさとジュリーを意識から追い出し、その横をするりと通り抜けた。
なおも追い縋ろうとしたジュリーは、くるりと振り返ったステファンの放った一言にそん場に縫い付けられる。注意という形を取ってはいるが、これは紛れもなく王子の放った『命令』であった。
体格差のある二人は自然、足のリーチにも差がある。『走るな』と言う命令をされてしまったジュリーがステファンに追いつくことなど、不可能なことであった。
ステファンが向かった先は、ジュリーに呼び止められた廊下を曲がってすぐの教室。
彼女と話しているときにその会話を聞かれていたのだ。走り去っていく人影を何としても逃してはいけないような気がしていた。
人影がにげこんだのを確認してからドアを開ける。
そこには――
「な、にをして……?」
「ステファン様~っ!」
黄色いと表現して差し支えのない甲高い声とパタパタと走り寄ってくる軽快な足音。
声のしてきた方に軽く目をやると、頬を上記させたジュリーがいた。
胸元に手を当てて息を整えると、後ろ手に持っていた包みを差し出してきた。
「これ……お弁当、作ってきたんです。お昼ご一緒しても?頑張ったから、きっと味は美味しいはずです!」
「いや、遠慮しておこう。」
「はい!では一緒に中庭に…………え……?」
「遠慮する、と言った。王族たるもの、毒味も住んでいない他人の作ったものなど迂闊に口にすることはできないからな。」
「私がそんなことするわけないじゃないですか!それに、一緒に同じものを食べれば解決でしょう?私が自分の食べるものに毒を盛るわけないんですから!」
「さぁな。中には捨て身で殺そうとしてくる刺客もいる。今後も君の手料理を食べることはないだろうから心遣いは無用だ。――――あぁ、それと。令嬢が大きな足音を立てて廊下を走るなんてはしたないとは思わないか?学園の風紀を見出すのは控えるように。以上だ。それでは。」
言いたいことだけ言うと、さっさとジュリーを意識から追い出し、その横をするりと通り抜けた。
なおも追い縋ろうとしたジュリーは、くるりと振り返ったステファンの放った一言にそん場に縫い付けられる。注意という形を取ってはいるが、これは紛れもなく王子の放った『命令』であった。
体格差のある二人は自然、足のリーチにも差がある。『走るな』と言う命令をされてしまったジュリーがステファンに追いつくことなど、不可能なことであった。
ステファンが向かった先は、ジュリーに呼び止められた廊下を曲がってすぐの教室。
彼女と話しているときにその会話を聞かれていたのだ。走り去っていく人影を何としても逃してはいけないような気がしていた。
人影がにげこんだのを確認してからドアを開ける。
そこには――
「な、にをして……?」
66
あなたにおすすめの小説
地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
婚約者を奪われるのは運命ですか?
ぽんぽこ狸
恋愛
転生者であるエリアナは、婚約者のカイルと聖女ベルティーナが仲睦まじげに横並びで座っている様子に表情を硬くしていた。
そしてカイルは、エリアナが今までカイルに指一本触れさせなかったことを引き合いに婚約破棄を申し出てきた。
終始イチャイチャしている彼らを腹立たしく思いながらも、了承できないと伝えると「ヤれない女には意味がない」ときっぱり言われ、エリアナは産まれて十五年寄り添ってきた婚約者を失うことになった。
自身の屋敷に帰ると、転生者であるエリアナをよく思っていない兄に絡まれ、感情のままに荷物を纏めて従者たちと屋敷を出た。
頭の中には「こうなる運命だったのよ」というベルティーナの言葉が反芻される。
そう言われてしまうと、エリアナには”やはり”そうなのかと思ってしまう理由があったのだった。
こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる