【完結】転生王子は、今日も婚約者が愛しい

珊瑚

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「ステファン様~っ!」

黄色いと表現して差し支えのない甲高い声とパタパタと走り寄ってくる軽快な足音。
声のしてきた方に軽く目をやると、頬を上記させたジュリーがいた。
胸元に手を当てて息を整えると、後ろ手に持っていた包みを差し出してきた。


「これ……お弁当、作ってきたんです。お昼ご一緒しても?頑張ったから、きっと味は美味しいはずです!」
「いや、遠慮しておこう。」
「はい!では一緒に中庭に…………え……?」
「遠慮する、と言った。王族たるもの、毒味も住んでいない他人の作ったものなど迂闊に口にすることはできないからな。」
「私がそんなことするわけないじゃないですか!それに、一緒に同じものを食べれば解決でしょう?私が自分の食べるものに毒を盛るわけないんですから!」
「さぁな。中には捨て身で殺そうとしてくる刺客もいる。今後も君の手料理を食べることはないだろうから心遣いは無用だ。――――あぁ、それと。令嬢が大きな足音を立てて廊下を走るなんてはしたないとは思わないか?学園の風紀を見出すのは控えるように。以上だ。それでは。」

言いたいことだけ言うと、さっさとジュリーを意識から追い出し、その横をするりと通り抜けた。
なおも追い縋ろうとしたジュリーは、くるりと振り返ったステファンの放った一言にそん場に縫い付けられる。注意という形を取ってはいるが、これは紛れもなく王子の放った『命令』であった。
体格差のある二人は自然、足のリーチにも差がある。『走るな』と言う命令をされてしまったジュリーがステファンに追いつくことなど、不可能なことであった。

ステファンが向かった先は、ジュリーに呼び止められた廊下を曲がってすぐの教室。
彼女と話しているときにその会話を聞かれていたのだ。走り去っていく人影を何としても逃してはいけないような気がしていた。
人影がにげこんだのを確認してからドアを開ける。
そこには――


「な、にをして……?」
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