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古い儀式

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「おばちゃまっ!おばちゃまっ!」
浴衣を着た小さな女の子が、着物を着た年老いた老婆の膝に手を付き、こう言った。
「おはなちって、なぁに?」
すると老婆はゆっくりと顔を上げ、
「おお、神狐か…」
「ねーねー、みこ、早くおはなち聞きたいっ!」
「はいはい。」
そう言うと老婆は、ゆっくりと話し始めた。


平安時代っていう大昔…
ある御稲荷さんがある神社の神主の息子に恋をした。
「おいなりしゃんってだぁれ?」
「お稲荷さんってのは、狐さんのことだよ。」
「きつねしゃん!」
「そう。」


そしてその御稲荷さんと神主の息子の弧矢李様は愛し合ったんだよ。
「こやいー?」
「そう。弧矢李様。」
「ラブラブゥ?」
「こらこら。」


だがな~。その神社は狼の神様、狼然神様の宿る神社だったもんで、そんな恋愛が許されるはずはなかったんだよ。
「ろおねんしん…?」


でも、ある条件付きで、結婚が許されたのだよ。
「条件ってなぁに~?」
「それは…」


その神主と御稲荷さんの間に出来た女の子を、狼然神様の神子に捧げる。
「しゃしゃげるー!」
「神狐…お主はこのお話に出てきた女の子と同じ運命をたどるだろう。」
「おなじ?」
「そう。同じ。」
「みこ、どーなるのー?」
「神狐はな…」

十六になったら、狼然神様の神子の長男に嫁入りするんだよ。
「よめいりー!」

そう、狐の嫁入り…   
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