上 下
7 / 12

偽りの神夜(今回ちょっと残酷です)

しおりを挟む
「此処は…僕の回想です。」
「回想?」
「はい。」

僕の母、美夢うつむは、僕が生まれるまでは、名前の通り、美しくて、夢ではないかと目を疑うほどに、優しくて美しい女性でした。

「生まれるまで?」

だけど、僕が生まれる1日前、父のやさが、事故で亡くなりました。

「っ!」

母は、父を心の底から愛していました。その頃の僕への愛は、男の子を産んで、夫の役にたてたのならば、もっともっと愛してもらえる。
という、母の願いのためだったのです。

「そんなのって…」

そんなときに生まれた僕は…
『オギャー オギャー』
『はあっ、はあっ、お医者様、生まれた子の性別は…?』
『おめでとう御座います。元気なですよ。』
『女の子…?そんな…』
要らない子でした。

「女の子…」

母は、医者とその近くにいた医療関係者を脅し、僕の性別を「男の子」にした。
僕は毎日のように
『なんであんたは女なんだっ!』
『お前なんて要らない!優を返せっ!』
『ゴミ 役立たず 要らない子』
と、暴言を吐かれ、時には暴力を受けることもありました。
「それって…」
虐○

ですが、母は神術を使い、臓器を潰したり骨を折って体の中に突き刺したりして傷つけては直す。そして、警察が口からの出血の跡について尋ねると、
『あぁ…この子は生まれつき持病を持っていて、たまに吐血してしまうんです…うぅっ。そのせいで学校にも行けてなくて…グスッ。私がこんなんだから。頼りないから…息子にも悲しい思いをさせて…母親失格だわ…ぐすっ…』
まぁ、演技の上手いこと上手いこと。それと、相手の不都合な思考は消してしまう。
『そ、そうでしたか。大変失礼いたしました。何かあれば、いつでも仰って下さい。』
(にやぁ。)
母は、この日を境に、援助金をもらい、家を引っ越した。
『此処まで協力していただき、本当に有難う御座いましたっ!あああっ!うぅ…ぐすっ…ほら、神夜も。』
『…ありがとうございました。』
『いえ。神夜君、手術成功おめでとう!』
『はい、ありがとうございました。』
神夜は、何もかもを過去形で話していた。
なぜなら、その時既に、神夜はシんでいたのだから。

「え、ちょっと、どうゆう。」
「しっ。」

実は三日前、神夜は感情に理想の闇を被せる術を、闇神社の神主と一緒に行ったのだ。
『あ”あ”あ”…ぐぅあ”あ”あ”ぁ”』
『おお、これは素晴らしい。』
『神主様、もう少し苦しみを与えることはできなくて?』
『勿論でございます。』
『うぐあ”あ”あ”…ぎゃああああっ!』
『はは。素晴らしい!』
『もっともっと強めてください。』
『え、そんなことしたら命は…』
『いいえ。そんなのです。』
『…』
『ぐ、あ”…』
『死亡確認。これより膜を貼る。』
『あははははっ!いい気味ね!泡を吹いて白目を向いて!とっても苦しそう!あはははっ!』

「きゃあっ!」
私は、幼い神夜が苦しむのを見てられず、顔を抑えて泣いた。

『神主様。』
『何か?膜はもう貼れたでしょう?』
『神夜に痛覚を加えて?』
『そ、そんなことしたら、いつも膜に苦しめられ、いつも苦痛に…』
『あら、その素晴らしいことがどうかしたの?』
『…』
『ぐ…ううう…苦しい…』
神夜は痙攣した。
だが、母親がぱっと手を動かすと、神夜はいつもに戻った。だが、体の中の苦しみは続いているようだ。
『うう…』

「神夜…あなたは此処でシんだの?」
「…」
神夜は何も言わない。

「行ってきます。お母様」
日野夜高校入学式に、神夜は向かう。
「いってらっしゃ~い。帰ってきたら、また遊ぼうね?」
「はい。」


だけど、入学式で、君の姿を見たとき、僕の中に何かができた。
【こんにちは!●●ちゃん!】

「●●って…」
「…魂の名前です。」

【…あなた だあれ。】
【僕はみや!君を助けに来たの!】
【あたし たすけに?】
【うん!じゃ、まずは言葉から直そう。】
【…あたし いかない ここ いい】
【なんで?】
【…おそと くるしい いたい かなしい】
【大丈夫!痛くなくなった頃、お外に行こう!】
【いたい ない? おそと いく!】
【うん!行こ!】
僕の膜は、その日からみやと入れ替わった。

「神夜!遊びましょ。」
ぐしゃぐしゃ…バキッ…メリ…
「ごふっ…」
「楽しいね」
「はい…」
みやは、しばらく神夜のフリをしていた。
「ぐううあああ…ぅあ”あ”…」
「あ、シんだ。饒覽鵞繪糲。」
「はあっ。ふー、ふー、」
メリメリ バキッバキバキ 
「あぁ…」

【もうだめ みやちゃん もうだめ】
【大丈夫だよ☆●●ちゃんは僕が守るから!】
しおりを挟む

処理中です...