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プロローグ
しおりを挟む“イタコ”という言葉を耳にしたことがあるだろうか?
イタコとは、東北地方の北部で口寄せを行う憑依巫女の呼称で、古くは縄文時代から存在していたのではないかと言われている。
死者の魂を口寄せしたり、悪魔祓いや未来予知など、その能力はイタコによって様々なもので。かつては、盲目あるいは弱視の女性の職業であったとされている。その修行の過酷さから時代の流れと共に後を継ぐ者は減少し、今では“本物”とされるイタコは一人しか存在しないのだとか。
そんなイタコを先祖代々生業としていた私の家系も、年々霊力が弱まってしまったことから徐々に衰退してゆくと、ついには四代前に完全に途絶えてしまったのだと。そんな話を祖母から聞かされたのは、まだ私に物心がついて間もない頃だった。
「杏奈は霊力が強いからね。その力はいつか役立つことがあるかもしれない。だけどね、気を付けるんだよ」
まるで口癖かのようにそんな台詞を口ずさんでは、優しい眼差しを向けながら私の頭を撫でてくれた祖母。
そんな祖母の言葉を、まだ幼かった当時の私が理解できるはずもなく、いまいちピンとこないまま流し聞いていたのを今でも憶えている。
これは、そんな私の怪奇な体験録──。
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