君は愛しのバニーちゃん

邪神 白猫

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滾るシェンロン、フライアウェイ

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 今日は美兎ちゃんが受験した『葉練池はれんち高等学校』──略して”ハレ高”の合格発表の日。
 電話での結果報告を待っているだけだなんて、そんな事できなかった俺は美兎ちゃんに内緒でハレ高までやって来ると、ドキドキと鼓動を高鳴らせながら校門前で美兎ちゃんの姿を探した。
 きっと美兎ちゃんなら無事に合格しているはずだろう。そうは思ってもやはり緊張はする。

 嬉しそうに笑顔を咲かせている生徒達や、涙を流しながなら帰宅してゆく生徒達を横目に、俺は美兎ちゃんとお揃いで購入した合格祈願の御守りをギュッと握りしめた。
 何故受験生でもない俺が御守りを持っているかだなんて、そんなの理由は一つしかない。ただ美兎ちゃんとお揃いで持っていたかったからだ。
 きっとこれで御利益も2倍なはず。


(うさぎちゃん……)


 中々見つからない美兎ちゃんの姿を探し求めて、校門前をふらふらと彷徨い歩く俺。いくら探しても見つからない美兎ちゃんに、不安を募らせた俺は流れ出そうになる涙をグッと堪えた。
 その顔は堪えすぎるあまり般若の如く形相へと近付き、まるでメンチを切っているヤンキーのようだ。黒縁眼鏡に七三という髪型で、その見た目にそぐわずヤンキーのような表情を見せるダサ男。
 そんな俺の姿を見て、不審そうな顔を見せながら通り過ぎてゆく中学生達。


「──あっ! 瑛斗せんせぇ~!」


 ────!!


 待ち望んでいたその姿を捉えた瞬間、俺はヤンキー般若から瞬時に破顔させると、両手を目一杯広げて天使を受け止める体制に入った。
 今までにも何度か訪れたこの機会。きっと今回も、俺の期待も虚しく天使ちゃんは直前になって小悪魔ちゃんへと変わるのだろう。そうは思ってもニヤケ顔が止まらない。


(さぁ……! 今日こそ俺の胸に飛び込んでおいで♡♡♡♡)



 ────ポスッ



「はへ……?」


 軽い衝撃と共に間抜けな声を漏らした俺は、両手を広げたままその場で固まった。


「……瑛斗先生っ! 受かったよ! ミトも衣知佳ちゃんも2人共合格したよっ!」


 美兎ちゃんの可愛らしい声を聞きながら、俺の鼻からタラリと流れ出る鼻血。
 これは夢なのだろうか──? その確かな温もりに下へと視線を移してみると、俺の身体にギュッとしがみつきながら満面の笑顔を咲かせている美兎ちゃんがいる。


(フギュッ……!!? グホォォォオーー!?♡!?♡!?♡    なんだコレ!? 夢!!? 夢なのか!!? ……俺は白昼夢でも見ているのかっ!?♡!?♡)


「ガハァ……ッッ!!♡!!♡!!♡」


 その信じがたい光景に思わず吐血すると、その口元と鼻血をこっそりと拭って平静を装う。


「っ、……合格おめでとう、美兎ちゃん」

「うんっ!」


 大興奮の美兎ちゃんは、そう笑顔で答えながらもギュウギュウと俺を抱きしめる。そんな姿が愛おしすぎて、今すぐにでも抱きしめ返したいところだが……。俺のシェンロンが今にも暴れ出してしまいそうで、正直それどころではない。
 ズキズキと痛む股間をモジモジとさせながら、抱きしめたい欲望と我慢との狭間で宙に浮かせたままの両手の指をワキワキとさせる。


(っ、……ぐあぁぁぁああーー!!! 今すぐ押し倒したいっ♡!!♡!!♡!!♡)


 美兎ちゃんもその気のようだし、俺としては今すぐにでも押し倒してあげたいところなのだが……。こんな場所でフライアウェイしてしまったら、間違いなく俺はすぐさま複数の先生達によって取り押さえられてしまうだろう。
 そしてそのまま警察の元へとフライアウェイだ。

 俺は獄中結婚だなんて、そんな未来は望んじゃいない。ここは何とか堪えるしかないのだ。


(静まれ……っ、俺の燃えたぎるシェンロンよ……!!!)


 とろけた顔と般若の如く形相で、1人耐え忍ぶ俺の顔はまさに百面相状態。ここが学校でさえなければと、そればかりが悔やまれる。


「──あっ! 瑛斗先生だ!」


 そんな悪魔の声と共に、ワラワラと集まり出した美兎ちゃんの同窓生達。その中には勿論市橋少年の姿もあるが、今の俺は幸せだからそんな事は大して気にはならない。
 何より、全くしずまる気配を見せないシェンロンを抑えるのに手一杯で、正直それどころではなかったりする。


「もぉ~。美兎ったら突然いなくならないでよね」

「ごめんね。瑛斗先生が居るのが見えたから早く報告したくて」


 悪魔にそう返事を返しながらも、エヘヘと笑って誤魔化した美兎ちゃん。
 そんなに俺に会いたかったとは……。こんなにも情熱的に迫られてしまっては、俺のシェンロンは鎮まるどころか大暴走だ。こんな場所で人目もはばからずに迫ってくるとはなんて大胆なアプローチ。


(っ、……なんてどエロい小悪魔ちゃんなんだッッ♡♡♡♡)


 その素敵な脳内変換に、更なる暴走の兆しを見せ始める俺のシェンロン。もはや誰にも止められはしないだろう。
 未だ俺に抱きついたままの美兎ちゃんの温もりに酔いしれながら、まるで拷問のような苦しみに小さく呻いては苦悶の表情を浮かべる。

 もういっそのこと美兎ちゃんと一緒に大人の世界へとフライアウェイしてしまおうかと、覚悟を決めて抱きしめ返そうとした──その時。


「もぉ~、いつまで抱きしめてるの? 瑛斗先生困ってるよ」

「……あっ! ホントだ! つい嬉しくって……。瑛斗先生、ごめんなさい」


 悪魔の余計な一言で、あっさりと離れてしまった美兎ちゃん。俺のこの覚悟は一体どこへ着地すれば良いというのだろうか……?


(クソッッ!! っ、……この悪魔めっ!! 俺のせっかくの覚悟を邪魔しやがって!!!!)


 着地点を見失った両手をそのままに、俺はその悔しさから涙を滲ませると天を仰いだ。
 そもそもすぐに抱きしめ返す勇気をもてなかった俺が悪いのだ。そんなこと頭の片隅ではわかっている。
 できるものなら5分前に戻って全てをやり直したい。

 未だかつて、こんなにも悔やんだ事があっただろうか──? いや、無い。


「く、……っ」


 あまりの悔しさから小さく声を漏らすと、両手を握り締めてプルプルと震える。


「……あ、そ~だっ! 瑛斗先生! ミト受かったから、ご褒美にレストランに連れて行ってくれるんだよね!?」

 
 一人後悔に打ちひしがれている俺に向けて、期待に満ちた笑顔を見せる美兎ちゃん。その瞳はキラキラと輝き、まるでこの世に2つとないダイアモンドのように美しい。
 これは間違いなく、恋する乙女の瞳だ。


「……っ、うん♡」


 俺は瞬間に破顔させると、美兎ちゃんを見つめてだらしなく微笑む。


「え~! いいなぁ~!」

「前から約束してたの。合格したら美味しいレストランに連れて行ってくれるって。……瑛斗先生、衣知佳ちゃん達も一緒じゃダメ?」



 ────!!?



(フグゥ……ッッ!?♡!?♡!?♡)


 突然の美兎ちゃんからのおねだり攻撃に、ビクリと飛び跳ねた俺はその可愛さの衝撃に気を失いかけてフラリとよろける。
 恋する乙女の猛追は留まる気配を見せないばかりか、こんなにも俺に向けて必死にアピールをするとは……愛しすぎて堪らない。
 これはもう、シェンロン発動許可がおりたと言っても過言ではないだろう。
 

「……うん♡  (いつでも準備はできてるから)いいよ♡」
 
「えっ!? ホントに!? やったぁ~!」

「良かったね、衣知佳ちゃん」


 俺達の門出を祝ってくれているのか、それは大喜びで満面の笑顔を咲かせる悪魔。
 そんな悪魔の想いを決して無駄にはしない。俺は今から──。


(うさぎちゃんと一緒に大人の世界へとフライアウェイだッッ♡♡♡♡)


 もはやまともに話など聞いていない俺は、アダルトな妄想に取り憑かれたまま不気味な笑顔を浮かべる。もうすぐ美兎ちゃんも高校生。少しばかり早い気はするが、美兎ちゃんが望むのなら俺が応えないわけにはいかない。
 ゾロゾロと着いてくる生徒達に気付かないまま、その素敵な妄想にうっとりとしながらレストランへと向かい始めた俺。その目には、もはや隣にいる美兎ちゃんの姿しか映っていない。
 予め行く予定でいた少し高めのレストランへと着いた時には、時すでに遅し。途中、美兎ちゃんが大勢いるように見えたのはどうやら俺の錯覚ではなかったらしい。

 何故か美兎ちゃんを含めた計5人の生徒達にご馳走する羽目になった俺は、その後予定していたシェンロンを発動することもなく、代わりに財布から大量の現金をフライアウェイさせたのだった。


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