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1話
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「1話 出会い」
未だに慣れない広大な体育館で、体操座りになって校長の長ったらしい話を聞く。
話もいよいよ終盤かと思ったら、まだ話す気でいるらしい。周りもどうやら集中力が切れ始めていたようで、少しずつ姿勢が崩れていくのが見える。
自分もこれ以上は気が持たなかったので、新学期に思いを寄せる。隣の席がラノベのヒロイン並の美少女だったらなとか。
ラノベにありがちな、陽キャだけど優しい男友達ができたらなとか。そんな感じのたわいのない事を考える。
1学期ではどうやら道を踏み外してしまったようで、入学してからというもの、ろくに友達も出来ずにいる。
昼休みには自分の世界に入ってお気に入りのラノベを読み、昼食は人の気配のない教室練の隣のB棟で1人静かに弁当を広げていた。
2学期こそは―― とは思えど、恐らくこのままいけば前と変わらずボッチだろう。だったら期待するだけ無駄だ。
変に期待していると、現実を突きつけられたときに帰って辛くなるだけだ。そう自分に言い聞かせ、これから始まる2学期についてはもう考えないことにした。
後の時間はボーッとして聞き流していると、周りから無気力な拍手が聞こえてきた。どうやら長ったらしい話も終わったようだ。最後に生徒指導の先生からの話もあったが、こっちは思っていたよりもすんなりと終わった。
そしてしばらくすると、クラスごとに教室に戻るようにとの指示があった。周りから少しずつ私語が聞こえてき、次第にはほとんどが、
夏休みがどうだったとか。夏アニメがどうだったとか。宿題がどうだったとか。などと話し合っていた。
当然俺に話し相手がいる訳がないので、
一人静かに体育館の出口へと歩いていった。
すると、誰かがかなりの力で俺の肩にぶつかってきた。いったい誰がやったのかと少し怒りを覚えたが、気づけばそんな気力も失せていた。どうせ、あまりにも俺の存在感が無さすぎて見えなかっただけだろうと思い、俺は体育館シューズからスリッパに履き替えて教室へと向かうのであった。
――――――――――
1年生の教室は4階にあるので、これから階段を上がるとなると先程までの体育座りからくる腰の痛みが辛い。
おそらく、教室に着いてからはまず課題の提出だろう。あ・・・・・・ 数学の問題集って丸つけしたっけな。
まあ1年生のうちはそこまで気にする必要はなかろう。
教室に入ると、期待とは異なり蒸し暑かった。部屋に入った瞬間涼しいー! 的なことを期待していた俺が馬鹿だった。
懐かしの席に座ると、夏休み前を少し思い出した気がした。
ちなみに席の位置はラノベあるあるの窓側の一番後ろ。なんてはずがなく、廊下側の一番前である。
だんだんと教室内の人数も増えてき、クラス担任もどうやら教室に上がってきたようだ。
しばらくして教室が静まると、担任が話し始めた。
「みんな久しぶりー。夏休みはどうだったでしょうかと。
まあ、まずは夏休み課題回収していくぞ」
おそらく数学以外はしっかりと丸つけまでした記憶があるので心配は要らないだろう。
「っとその前に、席替えするか」
ん? 席替え? 何だかんだで今の席は結構落ち着きやすくて気に入っていたので若干悲しい。ついでに隣の人もあんまり話し合いとかが好きじゃない感じだったので、ペアワークのときとかは互いの承認のもと無言でやってたから、
隣人が変わるのも痛い。
「今回の席替えはドラフトでいくぞ」
ドラフトとは、それぞれ自分の第一志望の席を決め、重なったらジャンケンというものである。もちろん後ろの方の席は人気なので倍率が高い。そしてジャンケンに負ければ2周目に回される為、この方法はギャンブル要素が強い。
ハイリスクハイリターンか、ローリスクローリターンか。
実に難しいところであるのだが・・・・・・
俺は窓側の一番後ろの席を選択した。理由はラノベの主人公の気分を味わいたいから。もちろん人気は高く、リスクは高い。だがしかし、これには策がある。考える事は皆同じであるため、おそらく微妙に人気が低いが地味に良い席が一番人気だろう。そして本来最も人気で倍率が高いとされる席がなんだかんだで最も取りやすい。そう考えたのだ。
そして運命の時。
「ほんならまず一番前の列いくぞ。この席がいいやついるか」
窓側の一番前の席から希望者がのつられていく。
どうやら最前列に第1希望で飛び込むやつはいないようだ。そして次第に進み、
3列目くらいになってくるとちらほらと希望者が現れてきた。今の所はまだジャンケンにはなっていない。
ちなみに合計で7列ある。ただ今4列目。
ここで窓側の席に6名ほどが名乗り出た。
ジャンケンが始まり・・・・・・ どうやら学級委員長が勝ったようだ。そしてその後は何度かジャンケンになり、いよいよ7列目。
一番後ろの列が来た。そして、
ついに窓側の一番後ろの席。俺の本命の席が呼ばれた。
反射的に手を上げると、他には誰も希望者がいなかった。
「他には誰もいないな。そしたらこの席は遠野で決定」
俺はこの勝負に勝った!! 周りの空気を見るからに、おそらくほとんどのやつらが既に死亡し、
2週目に回っているようだ。
そんなことを思っていると、次は俺の隣の席が呼ばれる。隣人が決まるので、俺にとってこれはそれなりに重要なことだ。
「次、窓側から2つ目のとこがいいやついるか」
「はい!!」
一瞬誰かと思ったら、細川さんだった。俺は今までほとんど細川さんとは会話したことがなかったのだが、なんとなく普段の行動からドジな印象がある。髪は少し薄めの茶髪で、身長は150cm代で小柄だった気がする。
あと普通に可愛かったような気もする。まあ、悪い人じゃないし何とかなるだろう。
それから20分ほど経ち、全ての席が決め終わった。
「そしたら席動かせー 5分で済ませろ」
担任の一声とともに、一瞬にして教室中にゴーっと机が床の上を引きずる音が響く。
俺は教室の一番前の廊下側の席から一番後ろの窓側になったので、教室内の角から反対側の角への移動となり、かなり大変だった。
そして途中で幾度か交通事故を起こしたが、
なんとか辿り着くことができた。
するとチャイムが鳴り、いつしか15分間の休みに入っていた。
どうやら隣の席の細川さんは既に移動が終わっていたようで、俺が席に座ると細川さんはこちらに振り向き、ニコッと微笑んだ。
うっ、、、 可愛い・・・・・・ 普通に可愛いって印象だったけど、校内トップの美少女だったのかもしれない。
一体どうしたものか。流石にずっと細川さんの笑顔を見つめているとドキドキしてしまうので、目線を自分の机に落とした。
そしてしばらくすると相手から元気に満ち溢れた声が飛んできた。
「遠野くんだったよね?!」
「あ、うん・・・・・・ 細川さんだったよね?」
突然のことだったので少し焦ったが何とか返した。
すると細川さんは
「そだよーー!」
と言って右手をグッドの形で大きく俺に向かって突き出した。
しかし、どうやら右手の肘が筆箱に当たってしまったようで、不幸にもチャックが閉められていなかったこともあり、バシャっと筆箱に入っていたシャーペンやボールペンやらが床にぶちまけられた。
「はわわ! 私としたことがやってしまいました!」
「だ、大丈夫?」
俺も拾うのを手伝う。すると、2人で向き合った状態でかがんでしまったせいか、軽く互いの頭が触れ合った。ふわっと彼女のいい香りがした。そして拾い終えると、
「ありがとう。早速助けられちゃいました! えへっ」
と言って教室を出ていった。
いや細川さん可愛すぎる――
未だに慣れない広大な体育館で、体操座りになって校長の長ったらしい話を聞く。
話もいよいよ終盤かと思ったら、まだ話す気でいるらしい。周りもどうやら集中力が切れ始めていたようで、少しずつ姿勢が崩れていくのが見える。
自分もこれ以上は気が持たなかったので、新学期に思いを寄せる。隣の席がラノベのヒロイン並の美少女だったらなとか。
ラノベにありがちな、陽キャだけど優しい男友達ができたらなとか。そんな感じのたわいのない事を考える。
1学期ではどうやら道を踏み外してしまったようで、入学してからというもの、ろくに友達も出来ずにいる。
昼休みには自分の世界に入ってお気に入りのラノベを読み、昼食は人の気配のない教室練の隣のB棟で1人静かに弁当を広げていた。
2学期こそは―― とは思えど、恐らくこのままいけば前と変わらずボッチだろう。だったら期待するだけ無駄だ。
変に期待していると、現実を突きつけられたときに帰って辛くなるだけだ。そう自分に言い聞かせ、これから始まる2学期についてはもう考えないことにした。
後の時間はボーッとして聞き流していると、周りから無気力な拍手が聞こえてきた。どうやら長ったらしい話も終わったようだ。最後に生徒指導の先生からの話もあったが、こっちは思っていたよりもすんなりと終わった。
そしてしばらくすると、クラスごとに教室に戻るようにとの指示があった。周りから少しずつ私語が聞こえてき、次第にはほとんどが、
夏休みがどうだったとか。夏アニメがどうだったとか。宿題がどうだったとか。などと話し合っていた。
当然俺に話し相手がいる訳がないので、
一人静かに体育館の出口へと歩いていった。
すると、誰かがかなりの力で俺の肩にぶつかってきた。いったい誰がやったのかと少し怒りを覚えたが、気づけばそんな気力も失せていた。どうせ、あまりにも俺の存在感が無さすぎて見えなかっただけだろうと思い、俺は体育館シューズからスリッパに履き替えて教室へと向かうのであった。
――――――――――
1年生の教室は4階にあるので、これから階段を上がるとなると先程までの体育座りからくる腰の痛みが辛い。
おそらく、教室に着いてからはまず課題の提出だろう。あ・・・・・・ 数学の問題集って丸つけしたっけな。
まあ1年生のうちはそこまで気にする必要はなかろう。
教室に入ると、期待とは異なり蒸し暑かった。部屋に入った瞬間涼しいー! 的なことを期待していた俺が馬鹿だった。
懐かしの席に座ると、夏休み前を少し思い出した気がした。
ちなみに席の位置はラノベあるあるの窓側の一番後ろ。なんてはずがなく、廊下側の一番前である。
だんだんと教室内の人数も増えてき、クラス担任もどうやら教室に上がってきたようだ。
しばらくして教室が静まると、担任が話し始めた。
「みんな久しぶりー。夏休みはどうだったでしょうかと。
まあ、まずは夏休み課題回収していくぞ」
おそらく数学以外はしっかりと丸つけまでした記憶があるので心配は要らないだろう。
「っとその前に、席替えするか」
ん? 席替え? 何だかんだで今の席は結構落ち着きやすくて気に入っていたので若干悲しい。ついでに隣の人もあんまり話し合いとかが好きじゃない感じだったので、ペアワークのときとかは互いの承認のもと無言でやってたから、
隣人が変わるのも痛い。
「今回の席替えはドラフトでいくぞ」
ドラフトとは、それぞれ自分の第一志望の席を決め、重なったらジャンケンというものである。もちろん後ろの方の席は人気なので倍率が高い。そしてジャンケンに負ければ2周目に回される為、この方法はギャンブル要素が強い。
ハイリスクハイリターンか、ローリスクローリターンか。
実に難しいところであるのだが・・・・・・
俺は窓側の一番後ろの席を選択した。理由はラノベの主人公の気分を味わいたいから。もちろん人気は高く、リスクは高い。だがしかし、これには策がある。考える事は皆同じであるため、おそらく微妙に人気が低いが地味に良い席が一番人気だろう。そして本来最も人気で倍率が高いとされる席がなんだかんだで最も取りやすい。そう考えたのだ。
そして運命の時。
「ほんならまず一番前の列いくぞ。この席がいいやついるか」
窓側の一番前の席から希望者がのつられていく。
どうやら最前列に第1希望で飛び込むやつはいないようだ。そして次第に進み、
3列目くらいになってくるとちらほらと希望者が現れてきた。今の所はまだジャンケンにはなっていない。
ちなみに合計で7列ある。ただ今4列目。
ここで窓側の席に6名ほどが名乗り出た。
ジャンケンが始まり・・・・・・ どうやら学級委員長が勝ったようだ。そしてその後は何度かジャンケンになり、いよいよ7列目。
一番後ろの列が来た。そして、
ついに窓側の一番後ろの席。俺の本命の席が呼ばれた。
反射的に手を上げると、他には誰も希望者がいなかった。
「他には誰もいないな。そしたらこの席は遠野で決定」
俺はこの勝負に勝った!! 周りの空気を見るからに、おそらくほとんどのやつらが既に死亡し、
2週目に回っているようだ。
そんなことを思っていると、次は俺の隣の席が呼ばれる。隣人が決まるので、俺にとってこれはそれなりに重要なことだ。
「次、窓側から2つ目のとこがいいやついるか」
「はい!!」
一瞬誰かと思ったら、細川さんだった。俺は今までほとんど細川さんとは会話したことがなかったのだが、なんとなく普段の行動からドジな印象がある。髪は少し薄めの茶髪で、身長は150cm代で小柄だった気がする。
あと普通に可愛かったような気もする。まあ、悪い人じゃないし何とかなるだろう。
それから20分ほど経ち、全ての席が決め終わった。
「そしたら席動かせー 5分で済ませろ」
担任の一声とともに、一瞬にして教室中にゴーっと机が床の上を引きずる音が響く。
俺は教室の一番前の廊下側の席から一番後ろの窓側になったので、教室内の角から反対側の角への移動となり、かなり大変だった。
そして途中で幾度か交通事故を起こしたが、
なんとか辿り着くことができた。
するとチャイムが鳴り、いつしか15分間の休みに入っていた。
どうやら隣の席の細川さんは既に移動が終わっていたようで、俺が席に座ると細川さんはこちらに振り向き、ニコッと微笑んだ。
うっ、、、 可愛い・・・・・・ 普通に可愛いって印象だったけど、校内トップの美少女だったのかもしれない。
一体どうしたものか。流石にずっと細川さんの笑顔を見つめているとドキドキしてしまうので、目線を自分の机に落とした。
そしてしばらくすると相手から元気に満ち溢れた声が飛んできた。
「遠野くんだったよね?!」
「あ、うん・・・・・・ 細川さんだったよね?」
突然のことだったので少し焦ったが何とか返した。
すると細川さんは
「そだよーー!」
と言って右手をグッドの形で大きく俺に向かって突き出した。
しかし、どうやら右手の肘が筆箱に当たってしまったようで、不幸にもチャックが閉められていなかったこともあり、バシャっと筆箱に入っていたシャーペンやボールペンやらが床にぶちまけられた。
「はわわ! 私としたことがやってしまいました!」
「だ、大丈夫?」
俺も拾うのを手伝う。すると、2人で向き合った状態でかがんでしまったせいか、軽く互いの頭が触れ合った。ふわっと彼女のいい香りがした。そして拾い終えると、
「ありがとう。早速助けられちゃいました! えへっ」
と言って教室を出ていった。
いや細川さん可愛すぎる――
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