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第3章
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これ以上にないくらい幸せなことなのに、ふと現実的な不安がよぎる。
ユウマくんはそれでいいのだろうか。付き合う以前に結婚の話をして早まったとか思ったりしないだろうか。再会して感情が昂っているせいで勢いで言ってるんじゃないかと、また卑屈な自分が顔を出してくる。
「急に黙んないでよ、不安になるから。なに考えてんの」
「ん……ユウマくんは、いいのかなって。結婚とか指輪のこととか嬉しいんだけど、私しか見えてないから」
「今まで付き合った相手に何を言われてきたんだよ。もしかして今もなんか言われてんの? そこまで自分を卑下してさ」
「…………」
呆れ顔のユウマくんの言ったことは半分は外れていて半分は当たっていたから、ぐっと喉が詰まった。相手の浮気が発覚して別れ話をするとき、自分が悪いと言って反省する人と、私が至らないからだと怒る人がいた。それで、付き合うたびに自信がどんどん削れていく。自信がないから、私でいいのか不安になる。
「俺、別に雰囲気とかその場のノリで軽々しく結婚したいとか言ってるわけじゃないよ。そうでもしないと先輩がまたどっか行きそうで嫌だから。ただ付き合うだけじゃ足りない。口約束じゃなくて、ずっと一緒にいてくれるっていう確証が欲しい」
ユウマくんの腕が伸びてきて、また私を抱きしめた。額が鎖骨にぶつかってユウマくんの体温に包まれる。
「……先輩の卒業式の日のこと、いまだに夢に出てくる。どうしたら引き止められたんだろうとか、何を言えば良かったんだろうとか、そもそも、泣いてもう会わないって言われたんだからもう諦めるしかないんだなとか、色々考えてしんどくなってる夢。……今も、こうしてるのが夢なんじゃないかって思う」
「……ユウマくん?」
声の最後が震えていたから泣いているのかと思って、顔を上げて思わず名前を呼んだ。泣いてはいなかったけど、うっすらと笑う顔が悲しいのを堪えているように見える。こんなに不安がっているユウマくんは見たことがない。
「……ん?」
「ユウマくん、私、ユウマくんのこと好きだよ」
「うん、でもまだ俺のものじゃないから。明日になったら、先輩は帰っちゃうでしょ」
「……それは、そうだね、うん、帰らなきゃ」
嘘でも「そんなことないよ」とは言えなかった。何を不安がっていたのだろう。また自分のことばっかり考えていた。これ以上後回しにしていられない。ユウマくんと一緒にいるためには、婚約者と別れなきゃいけない。そのための話し合いをしなくちゃいけない。
あんなに話し合うのが億劫だと感じていたのに、ユウマくんがいるならもう何を言われても大丈夫な気がしてきた。マリッジブルーでもわがままでもいい。それで早く終わるなら。
「帰って話してくる。明日、婚約破棄したいってちゃんと相手に言ってくるよ」
「俺も」
「仕事なんでしょ。一人で大丈夫だよ。向こうも彼女がいるんだからあっさり終わるよ」
「……明日は、昼なら一旦外に出れるかもしれないけど、早くて21時には終わる。明後日は休みだから、できれば明後日にして欲しい」
何がなんでも同席したがるユウマくんに苦笑した。だけど巻き込みたくない。ずるい考えだけど、ユウマくんのことは何も言わずに終わらせたい。だから、私も婚約者には相手のピアスだけ返して、深く追求しないで話を進めるつもりでいた。
プライドの高い人だから、きっと私に責められさえしなければあっさりと婚約破棄してくれるはずだ。何度も嘘をつくくらい軽く扱ってくるのだから、私に対する愛情なんてないだろうし。
「大丈夫だよ。話し合いが済んだら連絡するね」
「……んー……」
絶対納得していない声を出してユウマくんがタオルケットを半分引っ張った。中に入って潜ろうとしたところでシーツが濡れていることに気づいたのか、ぴたりと動きが止まる。
「あ……ごめんなさい」
とっさに謝ると「いいえ、こちらこそ」とユウマくんが笑った。
ユウマくんはそれでいいのだろうか。付き合う以前に結婚の話をして早まったとか思ったりしないだろうか。再会して感情が昂っているせいで勢いで言ってるんじゃないかと、また卑屈な自分が顔を出してくる。
「急に黙んないでよ、不安になるから。なに考えてんの」
「ん……ユウマくんは、いいのかなって。結婚とか指輪のこととか嬉しいんだけど、私しか見えてないから」
「今まで付き合った相手に何を言われてきたんだよ。もしかして今もなんか言われてんの? そこまで自分を卑下してさ」
「…………」
呆れ顔のユウマくんの言ったことは半分は外れていて半分は当たっていたから、ぐっと喉が詰まった。相手の浮気が発覚して別れ話をするとき、自分が悪いと言って反省する人と、私が至らないからだと怒る人がいた。それで、付き合うたびに自信がどんどん削れていく。自信がないから、私でいいのか不安になる。
「俺、別に雰囲気とかその場のノリで軽々しく結婚したいとか言ってるわけじゃないよ。そうでもしないと先輩がまたどっか行きそうで嫌だから。ただ付き合うだけじゃ足りない。口約束じゃなくて、ずっと一緒にいてくれるっていう確証が欲しい」
ユウマくんの腕が伸びてきて、また私を抱きしめた。額が鎖骨にぶつかってユウマくんの体温に包まれる。
「……先輩の卒業式の日のこと、いまだに夢に出てくる。どうしたら引き止められたんだろうとか、何を言えば良かったんだろうとか、そもそも、泣いてもう会わないって言われたんだからもう諦めるしかないんだなとか、色々考えてしんどくなってる夢。……今も、こうしてるのが夢なんじゃないかって思う」
「……ユウマくん?」
声の最後が震えていたから泣いているのかと思って、顔を上げて思わず名前を呼んだ。泣いてはいなかったけど、うっすらと笑う顔が悲しいのを堪えているように見える。こんなに不安がっているユウマくんは見たことがない。
「……ん?」
「ユウマくん、私、ユウマくんのこと好きだよ」
「うん、でもまだ俺のものじゃないから。明日になったら、先輩は帰っちゃうでしょ」
「……それは、そうだね、うん、帰らなきゃ」
嘘でも「そんなことないよ」とは言えなかった。何を不安がっていたのだろう。また自分のことばっかり考えていた。これ以上後回しにしていられない。ユウマくんと一緒にいるためには、婚約者と別れなきゃいけない。そのための話し合いをしなくちゃいけない。
あんなに話し合うのが億劫だと感じていたのに、ユウマくんがいるならもう何を言われても大丈夫な気がしてきた。マリッジブルーでもわがままでもいい。それで早く終わるなら。
「帰って話してくる。明日、婚約破棄したいってちゃんと相手に言ってくるよ」
「俺も」
「仕事なんでしょ。一人で大丈夫だよ。向こうも彼女がいるんだからあっさり終わるよ」
「……明日は、昼なら一旦外に出れるかもしれないけど、早くて21時には終わる。明後日は休みだから、できれば明後日にして欲しい」
何がなんでも同席したがるユウマくんに苦笑した。だけど巻き込みたくない。ずるい考えだけど、ユウマくんのことは何も言わずに終わらせたい。だから、私も婚約者には相手のピアスだけ返して、深く追求しないで話を進めるつもりでいた。
プライドの高い人だから、きっと私に責められさえしなければあっさりと婚約破棄してくれるはずだ。何度も嘘をつくくらい軽く扱ってくるのだから、私に対する愛情なんてないだろうし。
「大丈夫だよ。話し合いが済んだら連絡するね」
「……んー……」
絶対納得していない声を出してユウマくんがタオルケットを半分引っ張った。中に入って潜ろうとしたところでシーツが濡れていることに気づいたのか、ぴたりと動きが止まる。
「あ……ごめんなさい」
とっさに謝ると「いいえ、こちらこそ」とユウマくんが笑った。
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