国家魔法探索士の椿〜未確認幻獣探し旅〜

十一話 僕に乗っかった状態で空を飛んで欲しいんだワン！

　椿は先程あったことを丸夫に話した。

「なるほどワン。だったら、僕が飼い主にお願いして説得してもらえるよう頼んでみようかワン？」

「え？」

「まあ、説得したからって上手くいくとは限らないけど･･････」

「･･････」

　こんな会ったばかりの犬がこんなことを申すなんて怪しい･･････

　仮にほんとに親切心で言ったとしても、それはそれで申し訳ない。でも、上手くいくとは限らないけど、今のままよりはマシかもしれない･･････

「･･････ほんとにしてくれるの？」

「ただし、条件があるワン！」

「条件？」

「そうだワン！僕の空を飛ぶという願いを叶えて欲しいんだワン！」

「空を飛びたいの？」

「そうだワン！」

「･･････」

「それって、飼い主にはお願いできないの？」

「飼い主にお願いしたら、嫌がったワン」

「嫌がった？」

「僕に乗っかった状態で空を飛んでほしいんだワン！」

「箒じゃなくて？」

「そうだワン！自分が空を飛んでるような感じで空を飛びたいんだワン！でも、飼い主はぼくにまたがるなんて恥ずかしくてできないと言ってやってくれないんだワン！」

「なるほど･･････」

　椿は条件の話を聞いて、逆に安心した。

「わかった。やってみる」

「ありがとうワン！」　

　さっそく椿は丸夫にまたがると、今さらあることに気づいた。

「あれ？首輪してないの？」

「･････飼い主とは心で繋がれても、首輪では繋がれたくないんだワン！」

「･･････そう。ちなみに散歩の時はどうしてるの？」

「ハーネスのみを使用してるワン」

「なるほど･･････じゃあ、どこに掴まればいいかな？」
　
「心配ないワン。僕には人や物を離れないようにする魔法が使えるんだワン！」

「へえーそんな魔法使えるんだ」

「試しに今触れてる手を離そうとしてみるワン！」

「うん」

　椿が離そうとすると、

「ほんとに離れない！」

　いくら離そうとしても離れなかった。

「すごい！これなら心配ないね」

「そうだワン！この魔法は例えるなら接着剤をつけた物をさらに紐で優しく縛って、離れないようにしてる感じなんだワン！」

「･･････」

　椿はなんか、もっといい例えなかったのかなと思ったが、いやそれよりも空を飛ぶことに専念しようと心を切り替えた。

「じゃあさっそく行くよ！」
　
「よろしくお願いだワン！」