背も胸も小さい仁奈の婚活物語

和山忍

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四十三話

 そんなことを思っていると、

「!」

 希奈は仁奈の方を向く。

(このニオイ・・・・・・)

 仁奈がちょうどフライパンで具材に調味料を入れて炒めていた。

 希奈はそこから香るニオイをもう一度嗅ぐ。

(嘘でしょ)

 そして、希奈は仁奈の調理してる姿を見て、仁奈とは身長も釣り合わない母の姿を思い起こした。

(ありえない・・・・・・)

 希奈はベッドから降りて、トイレへと駆け込む。

 便座のふたを閉めたまま、座る


(母の作った料理と同じ・・・・・・いや、それに近いニオイ・・・・・・)

 希奈は頭を抱える。

 約一週間前──

 希奈は留置所で父の慎之介に暴言、罵倒した後、その場から立ち去ろうとする。しかし、

「夏山食堂で懐かしいニオイがした」

 と慎之介が突然に口を開いた。

「は?・・・・・・急に何?とうとう頭がイカれちゃった?」

「おい!それはいくらなんでも言い過ぎじゃないか!」

 と留置担当官が言い放つ。
 
 慎之介が留置担当官に手の平を向けて制止させる。

「あそこの店で唐揚げのニオイを嗅いだ。妻が作った唐揚げと全くではないが、それに近かった」

「だから、何?同じようなニオイなんていくらでもあるでしょ?それにニオイが同じだからって味が同じとは限らないでしょ?」

「お前の言う通りだ。しかし、俺はそれを食べたらなんだか自分がやってきたことが否定されてしまうように感じた。だから、それを食わずに俺は逃げるようにその店から立ち去った。正直、あの女の作った料理が怖かった」

「だから、後になって襲ったって言うの!?」

「・・・・・・かもしれない」

「馬鹿らしい!わたしは帰るわよ!」

「ちょっと待て!」

「何?」

「今、仕事は何してるんだ?」

「・・・・・・永戸でケーキ屋をやってるわ」

「そうか。しかし、世間はせめえもんだな。まさか、希奈が永戸でケーキ屋なんてよ」

「それはこっちのセリフよ!なんでこっちに引っ越してきたのよ!」

「ここで母さんと初めてあった。後輩が店をやってるとかでな」

「悪いけど、惚気話なんか聞くつもりないわ!」

「思い出に浸りたかった。だから、永戸に引っ越した」

「あ、そう。じゃあ、今度こそ帰るわよ!」

「ああ」

 そして、現在──

(まさか、私まで父と同じことを思うとはおもわなかったわ)

 希奈が頭を抱えるのをやめる。

(けど、だからなんだって言うの!味まで同じとは限らないわ!いや、そもそも仮に同じだったとしても、満足させられるとは限らないし、満足しても満足できなかったと言えばいいだけでしょ?)

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