背も胸も小さい仁奈の婚活物語

和山忍

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四十五話

 ***

 数分後──  

 希奈は席に着き、

「オムライスと唐揚げどうぞ」

 と仁奈がテーブルに置く。

(そうよ。どんなに満たされても、満足できないと言うだけでいいのよ」

 希奈はオムライスと唐揚げを見る。

 オムライスの包まれた卵は半熟でツヤツヤして輝き、唐揚げは黄褐色おうかっしょくでとても美味しそうに見えた。

「・・・・・・」

 希奈が箸で唐揚げを一口食べる。

「!」

(美味しい!・・・・・・いや、そんなのは最初からわかってる!そうじゃない!)

 次に箸を置き、スプーンでオムライスを一口食べた。

「!」

(これも美味──だから、わかってるって、そうじゃない!美味しいのは当たり前なのよ!仁奈ちゃんは料理人なのよ!美味いのは当たり前なの!というより、今までにこれより高級で美味しいのをいくつも食べたでしょ!)

 そう思いながら、希奈は唐揚げとオムライスを次々と口に運ぶ。

(これは料理で満足できるかできないかの話なの!)

 すると一瞬、母の顔が頭に浮かんだ。

「!」

(違う!これは仁奈ちゃんが作った料理!母の料理じゃない!)

 しかし、またしても頭の中で何かがよぎる。

(これは!)

 それは笑顔で食事をする父と母と妹の顔だった。

(いい加減にして!違うの!これは母の料理じゃない!美味くても違うの!)

 それから数分が経ち、オムライスも唐揚げも食べ終わり、希奈は手を止める。

(・・・・・・言うのよ!私!これは満足できないって!そうすれば、仁奈ちゃんにあんなこんなことをやり放題!可愛い仁奈ちゃんの恥じらう顔が見れるのよ!)
 
「・・・・・・どう美味しかった?」

 仁奈が尋ねる。

 その表情は監禁されてる身とは思えないような、なんとも嬉しそうな顔をしていた。

「なんで嬉しそうなの?」

「え?」

「仁奈ちゃんはまだ監禁されてる身で、今からの私一言でその監禁が終わるか続くかが決まるのよ。さらに続くことが決まれば今まで以上に辛い目に遭うのよ?なのに、なんでそんな顔になれるの?」

「それはわかってるんだけど、希奈さんが美味しそうに食べてるのを見てたら、なんだか嬉しくって」

(私が美味しそうに食べてた!?そんな馬鹿な!私は必死に葛藤しながら食べていたのよ!?そんな顔してたわけ──)

 またしても、頭の中で母の顔が思い浮かんだ。

(そんなの関係ない!私は仁奈ちゃんを──)

『駄目よ。希奈ちゃん』

「!」

(何!?今のは!お母さんの声が・・・・・・違う!昔、お母さんに言われたことが頭に思い浮かんだだけ!しっかりしなさい私!さあ言うのよ!)

「・・・・・・余裕ぶっていられるのも今のうちよ」

 と言った。

(さあ言うのよ私!満足できないって!さあ!)

『ほんとにいいの?希奈ちゃん?』

「っ!」

 母の言葉が頭をよぎる。
 
(そんな記憶の一部なんか気にしないで、さっさと言いなさい!私!)

『ねえ、希奈ちゃん?』

「!──」

 またしても、頭の中を母の言葉がよぎった。

(なんなの!邪魔しないで!私は満足できないって言うの!そして、仁奈ちゃんを──)

『嘘は駄目よ!』

「!」

 今度は言葉と一緒に母の顔が頭に思い浮かんだ。

「・・・・・・満足したわ。懐かしい味だわ。今まで食べた中で久しぶりに心が満たされた感じがする」

(駄目!嘘なんか言えない!)

 希奈の手が震える。そして、涙が目から溢れる。

「ごちそうさま!仁奈ちゃん」

 そう言って希奈は空になったお皿にスプーンを置いた。

「じゃあ・・・・・・」

「ええ。仁奈ちゃんを解放するわ」


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