魔法力士（旧タイトル: ギルドに冒険者登録しに行ったら、なれる職業が魔法力士しかなかった）

第六十四話 素手

　今さら遅えよ！もっと、はやくに掴めばよかったのによ。

「！」

「タケシ！」　

「ヒロキさん！もしかして、こいつ身体を硬くすることができるんですか？」

「そうだ。岩化って魔法技だ。一部しかできねえって言ってたが、本当は全身にできるかもしれねえ」

　その通りだ。敵に本当のことなど教えはしねえ。

「よくわかったな。どうする？このまま、岩化の効果が切れるのを待つか？」

　これで身体を回復するための時間が稼げる。

「いや、待たない」

　タケシは風魔法を解いた。

「え？」

　なんのつもりだ？まさか、素手でやるつもりか？何考えてんだ⁉俺の身体、岩と同じ硬さだぞ！お前の手もただではすまないぞ！

　タケシはギターノの腹目掛けて、突っ張りを放つ。

　まあいい･･････そのほうが好都合だ。

　ギターノの身体に突っ張りが当たる。

　ミシッ

「ぎゃあああああ！」

　おいおい、嘘だろ⁉ヒビが入ったぞ！つーか、痛え！

「やっぱ、一発じゃあ気絶しないか･･････両手で連続でいくか」

「やめてくれええええ！俺、死んじまうよぉ！」

「大丈夫、大丈夫。その為に魔法を解いたんだから。人間の素手ごときで魔族は死なないから」

「いや、腹にヒビ入ってるから！これ以上やったら、俺死んじゃうから！頼むから止めてくれ！」

「俺は言ったはずだぞ！地中潜りしたら容赦しないって」

「やめてくれええええ！」

　タケシは連続で突っ張りを放つ。

　ギターノの腹に何度も突っ張りが当たる。

　ミシッミシミシミシミシミシッ。

「ぎゃあああああああああああ！」

　ギターノの腹にはかなりのヒビ割れができる。そして、ギターノの意識が遠のいていく。

　もう駄目･･････。

　ギターノの目が白目を向いた。