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浦島太郎part2

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竜宮城へ着くと、大宴会が催されていた。

乙姫の艶かしい踊り。
鯛やヒラメの舞い踊り。

太鼓や、笛、オーケストラに至るまで用意され、
素晴らしい照明が、美しい竜宮城を照らし出す。

海底でのロマンチックなひと時。



最初のうちは楽しんでいた浦島太郎だったが、
あることに気づく。

「おおい、素晴らしい宴会だが、
 食事が無いぞ。 
 海だから、魚かなんかを食べないのか。」

彼は思った事をすぐ口にするタイプ。
配慮というものが無い。
だからこそ、海亀をすぐに助けたのだが…



会場は凍りついた。

こういう時に、沈黙を放っておかないのが、
乙姫の優しさ。 そっと教えてあげた。


「鯛やヒラメは
 私達の大切な友達、パートナーなのです。
 だからこそ踊っているのですよ。

 この国では、そんな事を言ってはいけません。」




浦島太郎、納得がいかない。

「そんなおかしなことがあるか。
 じゃあ何か。
 この国ではワカメでも主食にしているのか。」




乙姫様がそっと優しく教えてくれた。

「ええ、そうですよ。
 この国ではワカメが主食なのです。

 もっとも、今日は
 珍しくとても良い食材が入った。

 なので、私達は喜び、
 この大宴会が催されているのですよ。」








 

 
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