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妖精の魔法
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N氏は30歳。
小さな会社を経営し、
妻と子どももいる。
可もなく、不可もなくといった所。
ある晩、彼が眠りにつこうとすると、
枕元に、大変美しい妖精が現れた。
「おめでとう。
貴方は選ばれたわ。
3つ願いを叶える事ができるわ。
さぁ、何が良いかしら。考えてみて。」
N氏は喜び、妄想を膨らませた。
家を大きくする、会社をうまく軌道に乗せる。
出世する。
いやいや、その全ては金があればうまく…
そうだ。金だ。
彼がそれを口にしかけた時、
何という事だろう。
もう妖精はいなかった。
それから、3年が過ぎた。
N氏は時々考える。
あれは夢だったのか。
いや、あまりにも鮮明すぎる。
やはり、金という夢が良くなかったのか。
いやいや、願いを叶えると言っておいて、
良いも悪いも無いだろう。
ある晩。
今度は、枕元に、
スーツ姿の中年らしい妖精が、
5人組で訪れた。
「お前は、どうやら選ばれたそうだな。」
N氏は目を擦って答えた。
「ああ良かった。
すると、この間の話は嘘ではなかったのか。
願いを言う相手が急にいなくなってしまって…
しかも、担当者が違うようだが…」
彼等は答えた。
「違う違う。私達はまた別の仕事で来たのだ。
お前の身辺調査。
住所、勤務先、本籍地、交友関係、
生活スタイル、経済状況、親戚関係…
その全てを調べることになっている。
世知辛い世の中だ。
最近は妖精も無理難題を押し付けられ、
時間外労働、法外な搾取、モラハラ、セクハラ
終いには、性被害まで出ている。
トラブルを避けるため、
どんな人間であれ、選ばれたのなら、
一度精密な調査が必要なのだ。
そして、
これらの情報を持っていないと何かあった時に…
悪く思わないでくれ。」
「まぁ良い。
あれは夢ではなかったのだから。
俺の願いは本当に叶うんだろ。」
N氏は、そう怒らなかった。
人間がこのような状況を作ったとも言える。
何にせよ、願いを叶えてくれるのだ。
多少遅くなっても良い。
男達は一週間程滞在し、帰って行った。
しかし、残念な事に、
次妖精が枕元に現れたのは、更に30年後だった。
大変美しい、最初とはこれまた別の妖精。
「こんにちは。
ようやく貴方の願いが叶う時が来たわ。
願いを、3つこの紙に書いてね。」
これには、流石のN氏も怒り出した。
「おい、こんなに遅くなって、どう言うつもりだ。
人を期待させておいて。
私はもう60だぞ。
なぜもっと早く現れてくれなかった。
この30年の間に、妻は病気で先立ち、
息子は刑務所に入った。
今更叶えたい願いなんてない。
意味がないからだ。
お前達は、本当に人を救う気があるのか。」
すると、妖精は答えた。
「そうは言っても、これは規則なのよ。
個人の力ではどうすることもできないの。
確かに昔は、ある1人の優しい妖精によって、
始められた事業だけど。
妖精には寿命があるし、
何より無理難題を押し付ける人も大勢。
個人の力には限界があるわ。
初期の頃と違って、年々法規制も厳しくなるし、
私達も、うかつには動けないのよ。
規模も大きくなり、関わる人間が増え、
事業としてそれで生計を立てている人も大勢。
正直、予算を使う事のほうが大事で、
個人の願いなんてどうでも良いの。」
N氏は青ざめた。
「や。と言う事は、
この紙に書く願いも叶うかどうか…」
「そう言う事ね。
まずは妖精組合の方で、審査がされるわ。
現世への影響と、個人への影響。
その後、妖精研究所の方で、
実証実験が行われるわ。
それから、妖精警察署の立ち会いのもと、
ようやく魔力のある妖精が
派遣されてくるはずよ。
10年程かかるかしらね。」
「そんなにかかっていたら、
俺も生きているかどうか
分からないじゃないか。
何とかしてくれ。」
「クレーム対応は、別の会社がやっているから、
そこへ連絡してね。
連絡先は教えてあげるわよ。
もっとも、それが受理されて、
裁判になるとなると、
この先更に何十年も…」
小さな会社を経営し、
妻と子どももいる。
可もなく、不可もなくといった所。
ある晩、彼が眠りにつこうとすると、
枕元に、大変美しい妖精が現れた。
「おめでとう。
貴方は選ばれたわ。
3つ願いを叶える事ができるわ。
さぁ、何が良いかしら。考えてみて。」
N氏は喜び、妄想を膨らませた。
家を大きくする、会社をうまく軌道に乗せる。
出世する。
いやいや、その全ては金があればうまく…
そうだ。金だ。
彼がそれを口にしかけた時、
何という事だろう。
もう妖精はいなかった。
それから、3年が過ぎた。
N氏は時々考える。
あれは夢だったのか。
いや、あまりにも鮮明すぎる。
やはり、金という夢が良くなかったのか。
いやいや、願いを叶えると言っておいて、
良いも悪いも無いだろう。
ある晩。
今度は、枕元に、
スーツ姿の中年らしい妖精が、
5人組で訪れた。
「お前は、どうやら選ばれたそうだな。」
N氏は目を擦って答えた。
「ああ良かった。
すると、この間の話は嘘ではなかったのか。
願いを言う相手が急にいなくなってしまって…
しかも、担当者が違うようだが…」
彼等は答えた。
「違う違う。私達はまた別の仕事で来たのだ。
お前の身辺調査。
住所、勤務先、本籍地、交友関係、
生活スタイル、経済状況、親戚関係…
その全てを調べることになっている。
世知辛い世の中だ。
最近は妖精も無理難題を押し付けられ、
時間外労働、法外な搾取、モラハラ、セクハラ
終いには、性被害まで出ている。
トラブルを避けるため、
どんな人間であれ、選ばれたのなら、
一度精密な調査が必要なのだ。
そして、
これらの情報を持っていないと何かあった時に…
悪く思わないでくれ。」
「まぁ良い。
あれは夢ではなかったのだから。
俺の願いは本当に叶うんだろ。」
N氏は、そう怒らなかった。
人間がこのような状況を作ったとも言える。
何にせよ、願いを叶えてくれるのだ。
多少遅くなっても良い。
男達は一週間程滞在し、帰って行った。
しかし、残念な事に、
次妖精が枕元に現れたのは、更に30年後だった。
大変美しい、最初とはこれまた別の妖精。
「こんにちは。
ようやく貴方の願いが叶う時が来たわ。
願いを、3つこの紙に書いてね。」
これには、流石のN氏も怒り出した。
「おい、こんなに遅くなって、どう言うつもりだ。
人を期待させておいて。
私はもう60だぞ。
なぜもっと早く現れてくれなかった。
この30年の間に、妻は病気で先立ち、
息子は刑務所に入った。
今更叶えたい願いなんてない。
意味がないからだ。
お前達は、本当に人を救う気があるのか。」
すると、妖精は答えた。
「そうは言っても、これは規則なのよ。
個人の力ではどうすることもできないの。
確かに昔は、ある1人の優しい妖精によって、
始められた事業だけど。
妖精には寿命があるし、
何より無理難題を押し付ける人も大勢。
個人の力には限界があるわ。
初期の頃と違って、年々法規制も厳しくなるし、
私達も、うかつには動けないのよ。
規模も大きくなり、関わる人間が増え、
事業としてそれで生計を立てている人も大勢。
正直、予算を使う事のほうが大事で、
個人の願いなんてどうでも良いの。」
N氏は青ざめた。
「や。と言う事は、
この紙に書く願いも叶うかどうか…」
「そう言う事ね。
まずは妖精組合の方で、審査がされるわ。
現世への影響と、個人への影響。
その後、妖精研究所の方で、
実証実験が行われるわ。
それから、妖精警察署の立ち会いのもと、
ようやく魔力のある妖精が
派遣されてくるはずよ。
10年程かかるかしらね。」
「そんなにかかっていたら、
俺も生きているかどうか
分からないじゃないか。
何とかしてくれ。」
「クレーム対応は、別の会社がやっているから、
そこへ連絡してね。
連絡先は教えてあげるわよ。
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