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誠の凱旋
しおりを挟むある日のこと、気持ちの読めない光ちゃんが、誠の傍に来て、小さい声で言った。
「色々教えてくれてありがとう、僕は、マコたんが、いないとダメなんだ」
光ちゃんは、確かに、自分を必要としているという趣旨のことを言った。でも、誠は、いくら考えても、必要とされていると思えない……。
「そんな筈がないよ」
誠は、光ちゃんに、真剣に見返した。
誠は、光ちゃん様子を見て、唐突に笑うと、光ちゃんは、誠の笑い声に釣られて「ははは」と笑った。
誠は、光ちゃんに言う……。
「光ちゃんの好きな、テレビ番組のMステ見るよ」
「そうですか、面白いですよ」
誠は、光ちゃんの一言で、自分は、独りじゃなかったことに気付いた。
その事で、彼の心は、ヒーロー惑星の殻から離れて、心の元気を取り戻し始めた。
誠と光ちゃんが、繋がると、そこを目指して綾香とリサが、集まってきた。リサが、誠に声をかけた。
「マコたん、元気になった?」
「まあね」
リサは、元気になった誠を、心密かに喜んでいる。
リサは、もしもの時を決めている。
……マコたんが、辞めたら、私も辞める……
そんなリサの思い、誠が好きで、守りたいという気持ちが、誠と、その仲間たちにウマク伝えられない、もどかしいリサだった。
すると、悠作は、誠に、「やあ」、「やあ」と、言いながら、照れた笑いを、浮かべながらやってきた。
「マコたん、また一緒に、勉強しょうー」
悠作が、誠に言った。
「ああ」
誠は、悠作に、にっこり笑って、答えた。
綾香は、誠の元に集まってくる、彼の事を見て思った。
……貴方は、きっと、自力で、この局面を切り抜けられる、私は、貴方の理想に賭けるわ……。
誠は、みんなの前で呟いた。
「私が、立ち上がるのを待っていたのか?」
悠作は、「そうだよ」と、言った。
「リサポンも、光ちゃんも、綾香もまっていたのか?」
リサが、みんなの代表となって、大声で言った。
「待っていたわょ……」
仲間たちは、にっこりと笑っている。
誠は、遥か遠いヒーロー惑星から、凱旋した。
誠には、心から湧き上がる、熱いものがあった。
誠と、その仲間たちは再び結束した。
光ちゃんは、誠の復活に、喜びを感じ「チョ―、チョー」と、言って、コブシを天に突き出した。彼らは急速に、元の勢力を取り戻していった。
そして、前よりも更に大きな力が、そこにあった。
「いいんですか?」
信義が猪熊に言った。
緊張感のない寅蔵は寝ている。猪熊は、誠と誠達の変化を感じていたが、「どうせ、又、軽く潰して遣るわい」と、軽く考えて、何ら有効な手を、打つことはなかった。
「馬鹿野郎」
猪熊はクロウを、張りセンで痛めつけて、悦に浸っていた。
猪熊は、誠を甘く見ていた。
そこで、誠は、猪熊から奪われた縄張りを、取り戻す作戦を考え始めた。
誠は、考える。
……力ってなんだ? ……
確かに、猪熊と、戦う時には、猪熊だけでなく、その上のルールを作れる、強い人達の大きな力が邪魔になる。
それを避けるには、ルールを作れる強い人間「支援員さん達」の大きな力の動きに注意しなくてはならない……。 誠は考えた。
でも、その種の力は、無欠ではない、強力なのが故に、最初は、ゆっくりとしか動かせず、その力のインパクトが、決まるまでは、時間が掛かるからだ……。
その大きな力が、誠の頭上に落ちる前に、猪熊を倒せば、この勝負、勝てるかもしれない……。
誠は確信した。
……勝って、安心して仲間たちと過ごせる、自由な世界を、取り戻そう……
誠は、そこで、時間との勝負に賭け、短期決戦で猪熊との対決を決意した。
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