38 / 218
第一章 見習い剣士と新人奴隷
第三十八話 主人への愛
しおりを挟む
Szene-01 東西街道上、トゥサイ村境界付近
ルイーサとヒルデガルドはひたすら走り続けていた。
そこへ森の中からアムレットが飛び出して来る。
「アムレット! 何かわかったの!?」
アムレットは跳ね上がってヒルデガルドの肩に乗った。
ヒルデガルドは優しく触れて頬を当てる。
「ルイーサ様、二人はトゥサイ村の南東にある賊のアジトに運ばれたとか」
アムレットがさらに情報を伝えているようで、一旦言葉を止める。
「そこでひと騒ぎあったようです」
「何よひと騒ぎって。心配しかないじゃない!」
ヒルデガルドはアムレットを再び走らせた。
「とにかくアジトへ行ってみましょう」
Szene-02 トゥサイ村北西部、賊のアジト
爆発が起きず無事なままのエールタインはティベルダを助けにアジトへと戻っていた。
そこには目をオレンジ色にした裸の少女が一人倒れている。
「ティベルダ!?」
慌てて近寄るエールタイン。
主人の声を聞いたティベルダは横になったまま微笑んだ。
「エール様……ご無事でしたか」
「この通り、大丈夫だよ! それよりティベルダはどうなの」
裸になっているのだから大丈夫とは考えにくい。
状況を把握できないエールタインは聞き出すしかないようだ。
「えっと、あの人たちを消しました」
「消したって……どうやって」
「爆発させたみたいです」
他人事の様にティベルダが話す。
エールタインは徐々に状況を把握し始めた。
「爆発は感じ取ったんだ。でも何も壊れていないしボクも無事だ」
「あの人たちだけを爆発させたみたいです」
周囲を見渡すエールタインだが、賊が一人もいない。
「そんなことができたの?」
「できたみたいですね」
「何も跡がないんだけど」
「跡形も無くなるように願ったら、叶ったようです」
エールタインはその場に両手をつく。
「服は燃えてしまったんだね」
「あは、そうなんです。恥ずかしいな」
少し膝を曲げる仕草をするティベルダ。
「今まで全身の火傷を治していました。エール様が来るまでに醜い姿を治せて良かった」
彼女は続ける。
「でも、髪の毛は治せなくって。これが精いっぱいなのですが、嫌われてしまうのかな」
エールタインは涙で床を濡らしていた。
胴体に巻き付けていたストールを取り、ティベルダに掛けてあげる。
「これだけの愛をもらって嫌いになるわけないだろ!」
エールタインは続ける。
「とっくにティベルダのことを好きだし、いやもう今では愛していると言えると思う」
涙を拭ってさらに続けた。
「愛なんてさっぱりわからないけどさ、自然に口から出たってことはこの気持ちがそうなんだろうね」
エールタインは顔を近づけて唇を触れさせた。
Szene-03 トゥサイ村南東部、賊のアジト
「何よ……これ」
エールタイン達が最初に運ばれたアジトに到着したルイーサたち。
一面に広がる乾きかけの血の海と死体を見て唖然とした。
「……ひどいですね」
「ここにいないということは――」
ルイーサが言い切る前にアムレットが到着した。
「アムレット……うん、ありがとう。北西にある別のアジトだそうです」
アムレットに木の実をあげるヒルデガルド。
「ルイーサ様、教えてくれると言っています。すぐに向かいましょう」
「わかったわ!」
Szene-04 トゥサイ村北西部、賊のアジト
まだエールタインとティベルダはアジトに残っていた。
ティベルダの回復に時間が掛かっているようだ。
爆発を直に受けているのだから能力が無ければ生存はあり得ない。
自力で回復をしているが、途中で力が切れてしまう。
切れるとエールタインが口づけをして回復させる。
これの繰り返しをしていた。
「私、ずっとこの方が幸せな気がしてきました」
「冗談はやめてよ。いつまでも傷ついたティベルダは見ていられないから」
「はい……エール様が幸せにならないといけませんから。頑張って治します」
そこへ二人分の足音が届く。
ルイーサ達が到着した。
「やっと見つけた! あなたたち、大丈夫……ではないわね」
エールタインが涙を拭いながらティベルダのそばにいる。
ルイーサたちからはストールからのぞく白い脚しか見えない。
目を潤ませたままエールタインが振り向いた。
「ルイーサさんにヒルデガルドちゃん。来てくれたの?」
エールタインが振り向いたことで、横たわる人の顔が見える。
「ティベルダさん、なの!?」
「そうです。ボクのためにこんなになってしまって……」
ティベルダの頭を撫でてあげるエールタイン。
「詳しい事は後で話します。今はこの子が回復するのを待ってもらえますか」
「回復? あなたが泣くほどのことが起きたのだから簡単に回復する状態ではないのでは?」
「この子はヒールが使えます。今は自分で治療中なんだ」
ヒルデガルドが話に混ざった。
「どんな能力を持っているのか聞こうと思っていました。ヒールだったのですね」
「うん。でもね、今回のことで他の能力も覚醒したんだ」
「ん、んん」
力が尽きてきたティベルダは主人を求めた。
「ごめん、また後で」
エールタインはその言葉を残してティベルダへと向き直る。
撫でていた手が位置を変えるとストールからティベルダの頭が露になった。
「それ……い、行きましょう、ヒルデガルド」
ルイーサはヒルデガルドの背中へ手を当てこの場を離れるように促す。
ゆっくりと、そして項垂れたまま二人は離れた。
ルイーサとヒルデガルドはひたすら走り続けていた。
そこへ森の中からアムレットが飛び出して来る。
「アムレット! 何かわかったの!?」
アムレットは跳ね上がってヒルデガルドの肩に乗った。
ヒルデガルドは優しく触れて頬を当てる。
「ルイーサ様、二人はトゥサイ村の南東にある賊のアジトに運ばれたとか」
アムレットがさらに情報を伝えているようで、一旦言葉を止める。
「そこでひと騒ぎあったようです」
「何よひと騒ぎって。心配しかないじゃない!」
ヒルデガルドはアムレットを再び走らせた。
「とにかくアジトへ行ってみましょう」
Szene-02 トゥサイ村北西部、賊のアジト
爆発が起きず無事なままのエールタインはティベルダを助けにアジトへと戻っていた。
そこには目をオレンジ色にした裸の少女が一人倒れている。
「ティベルダ!?」
慌てて近寄るエールタイン。
主人の声を聞いたティベルダは横になったまま微笑んだ。
「エール様……ご無事でしたか」
「この通り、大丈夫だよ! それよりティベルダはどうなの」
裸になっているのだから大丈夫とは考えにくい。
状況を把握できないエールタインは聞き出すしかないようだ。
「えっと、あの人たちを消しました」
「消したって……どうやって」
「爆発させたみたいです」
他人事の様にティベルダが話す。
エールタインは徐々に状況を把握し始めた。
「爆発は感じ取ったんだ。でも何も壊れていないしボクも無事だ」
「あの人たちだけを爆発させたみたいです」
周囲を見渡すエールタインだが、賊が一人もいない。
「そんなことができたの?」
「できたみたいですね」
「何も跡がないんだけど」
「跡形も無くなるように願ったら、叶ったようです」
エールタインはその場に両手をつく。
「服は燃えてしまったんだね」
「あは、そうなんです。恥ずかしいな」
少し膝を曲げる仕草をするティベルダ。
「今まで全身の火傷を治していました。エール様が来るまでに醜い姿を治せて良かった」
彼女は続ける。
「でも、髪の毛は治せなくって。これが精いっぱいなのですが、嫌われてしまうのかな」
エールタインは涙で床を濡らしていた。
胴体に巻き付けていたストールを取り、ティベルダに掛けてあげる。
「これだけの愛をもらって嫌いになるわけないだろ!」
エールタインは続ける。
「とっくにティベルダのことを好きだし、いやもう今では愛していると言えると思う」
涙を拭ってさらに続けた。
「愛なんてさっぱりわからないけどさ、自然に口から出たってことはこの気持ちがそうなんだろうね」
エールタインは顔を近づけて唇を触れさせた。
Szene-03 トゥサイ村南東部、賊のアジト
「何よ……これ」
エールタイン達が最初に運ばれたアジトに到着したルイーサたち。
一面に広がる乾きかけの血の海と死体を見て唖然とした。
「……ひどいですね」
「ここにいないということは――」
ルイーサが言い切る前にアムレットが到着した。
「アムレット……うん、ありがとう。北西にある別のアジトだそうです」
アムレットに木の実をあげるヒルデガルド。
「ルイーサ様、教えてくれると言っています。すぐに向かいましょう」
「わかったわ!」
Szene-04 トゥサイ村北西部、賊のアジト
まだエールタインとティベルダはアジトに残っていた。
ティベルダの回復に時間が掛かっているようだ。
爆発を直に受けているのだから能力が無ければ生存はあり得ない。
自力で回復をしているが、途中で力が切れてしまう。
切れるとエールタインが口づけをして回復させる。
これの繰り返しをしていた。
「私、ずっとこの方が幸せな気がしてきました」
「冗談はやめてよ。いつまでも傷ついたティベルダは見ていられないから」
「はい……エール様が幸せにならないといけませんから。頑張って治します」
そこへ二人分の足音が届く。
ルイーサ達が到着した。
「やっと見つけた! あなたたち、大丈夫……ではないわね」
エールタインが涙を拭いながらティベルダのそばにいる。
ルイーサたちからはストールからのぞく白い脚しか見えない。
目を潤ませたままエールタインが振り向いた。
「ルイーサさんにヒルデガルドちゃん。来てくれたの?」
エールタインが振り向いたことで、横たわる人の顔が見える。
「ティベルダさん、なの!?」
「そうです。ボクのためにこんなになってしまって……」
ティベルダの頭を撫でてあげるエールタイン。
「詳しい事は後で話します。今はこの子が回復するのを待ってもらえますか」
「回復? あなたが泣くほどのことが起きたのだから簡単に回復する状態ではないのでは?」
「この子はヒールが使えます。今は自分で治療中なんだ」
ヒルデガルドが話に混ざった。
「どんな能力を持っているのか聞こうと思っていました。ヒールだったのですね」
「うん。でもね、今回のことで他の能力も覚醒したんだ」
「ん、んん」
力が尽きてきたティベルダは主人を求めた。
「ごめん、また後で」
エールタインはその言葉を残してティベルダへと向き直る。
撫でていた手が位置を変えるとストールからティベルダの頭が露になった。
「それ……い、行きましょう、ヒルデガルド」
ルイーサはヒルデガルドの背中へ手を当てこの場を離れるように促す。
ゆっくりと、そして項垂れたまま二人は離れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる