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第二章 剣士となりて
第九話 従者の里へⅡ
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Szene-01 レアルプドルフ内ブーズ、北・東地区境界
早朝に出発してから随分時が流れた。
雪雲に覆われて時が分かりづらいが、鐘楼の音が届いていたことから昼下がりだと思われる。
周りを深い森に囲まれたブーズの北地区と東地区の境界辺りに到着したエールタインたち。
森の中にある開けた場所に出て民家が見えるようになった。
いや、森の中の開けた場所というよりは、人が住み着くうちに開けていったと言う方が正しいだろうか。
エールタインは白い息を吐きながらブーズの風景を眺めていた。
「いよいよ来たね」
「はい。私の家はここから真っすぐ行けば見えてきます」
「なんだか緊張してきちゃった」
「うふふ。ご主人様がブーズで緊張するなんて。意識するのはここの人たちですよ」
立場から言えばティベルダの言う通りだ。
主従関係を意識するか、報酬を受け取るための奉公と捉えるか。
「エール様、足場の悪い所を歩き詰めでしたから回復しておきましょう」
そう言うとティベルダは目をオレンジ色に変えて主人の手を両手で握った。
「修練はしているから大丈夫……うわあ、あったかい」
「ふふふ。エール様はこの感覚が好きでしょ?」
「ズルいよ、ティベルダ。主人を虜にするのは反則だ」
と言いつつも、エールタインは手を握られたままじっと立っている。
手を放す気は全くない様子だ。
「虜になるかどうかはエール様次第ですよお。従者がご主人様を癒して差し上げているのです」
「う……間違っていないから反論できないじゃないか」
ティベルダは主人の手を愛おしそうに握っている。
Szene-02 ダン家
ヨハナとヘルマは話しながら家の中で寒期支度をしていた。
ダンは敷地内を見回っている。
「これからはヘルマと話すことが増えるわね」
「今までもよく話していると思うけど」
「エール様を挟んでの会話が多かったわ。二人だけの時間が増えるって話」
「これは重症ね。エール様立ちをしないとあなたは抜け殻になってしまう」
保管場所から運んできた保存食を出しながらヨハナが言う。
「エール様抜きの生活なんて考えたこと無いから。これからもお手伝いはするし」
ヘルマは武具の手入れ作業を一瞬止めてあきれ顔をした。
「毎日その話をしていくつもり? 勘弁してよ。こっちの耳が壊れるじゃない」
目線は武具へ戻しながら片手をヨハナに向けてブラブラと振って見せるヘルマ。
ヨハナは少し膨れ顔をして呟いた。
「何回でも聞いてよ」
「嫌よ」
「ケチ」
二人きりになると随分砕けた会話になる二人。
相手にしてもらえなくなったヨハナは仕方なく作業を続ける。
武具の手入れを再開したヘルマだが、すぐに手を止めてヨハナに言う。
「エール様たち楽しくやっているのかしらね」
「どちらも大好き同士だから。邪魔がいなくて凄いんじゃない?」
「はあ、凄いのか……。男から守ることが多いのかなと思ったけど、女に人気だったわね」
ヨハナがエプロンの紐を結び直しながら答える。
「エール様は美人さんだから。綺麗過ぎると男性って声を掛けづらいのかしらね」
「そっか。女って綺麗な人には大好きになるか毛嫌いするかの両極端な気がする」
「あとは、エール様が女性であることを隠しているしね。いまだに気づいていない人が多いそうよ」
結局ヘルマもヨハナの話に乗る形となり、エールタインの話に花が咲いた。
早朝に出発してから随分時が流れた。
雪雲に覆われて時が分かりづらいが、鐘楼の音が届いていたことから昼下がりだと思われる。
周りを深い森に囲まれたブーズの北地区と東地区の境界辺りに到着したエールタインたち。
森の中にある開けた場所に出て民家が見えるようになった。
いや、森の中の開けた場所というよりは、人が住み着くうちに開けていったと言う方が正しいだろうか。
エールタインは白い息を吐きながらブーズの風景を眺めていた。
「いよいよ来たね」
「はい。私の家はここから真っすぐ行けば見えてきます」
「なんだか緊張してきちゃった」
「うふふ。ご主人様がブーズで緊張するなんて。意識するのはここの人たちですよ」
立場から言えばティベルダの言う通りだ。
主従関係を意識するか、報酬を受け取るための奉公と捉えるか。
「エール様、足場の悪い所を歩き詰めでしたから回復しておきましょう」
そう言うとティベルダは目をオレンジ色に変えて主人の手を両手で握った。
「修練はしているから大丈夫……うわあ、あったかい」
「ふふふ。エール様はこの感覚が好きでしょ?」
「ズルいよ、ティベルダ。主人を虜にするのは反則だ」
と言いつつも、エールタインは手を握られたままじっと立っている。
手を放す気は全くない様子だ。
「虜になるかどうかはエール様次第ですよお。従者がご主人様を癒して差し上げているのです」
「う……間違っていないから反論できないじゃないか」
ティベルダは主人の手を愛おしそうに握っている。
Szene-02 ダン家
ヨハナとヘルマは話しながら家の中で寒期支度をしていた。
ダンは敷地内を見回っている。
「これからはヘルマと話すことが増えるわね」
「今までもよく話していると思うけど」
「エール様を挟んでの会話が多かったわ。二人だけの時間が増えるって話」
「これは重症ね。エール様立ちをしないとあなたは抜け殻になってしまう」
保管場所から運んできた保存食を出しながらヨハナが言う。
「エール様抜きの生活なんて考えたこと無いから。これからもお手伝いはするし」
ヘルマは武具の手入れ作業を一瞬止めてあきれ顔をした。
「毎日その話をしていくつもり? 勘弁してよ。こっちの耳が壊れるじゃない」
目線は武具へ戻しながら片手をヨハナに向けてブラブラと振って見せるヘルマ。
ヨハナは少し膨れ顔をして呟いた。
「何回でも聞いてよ」
「嫌よ」
「ケチ」
二人きりになると随分砕けた会話になる二人。
相手にしてもらえなくなったヨハナは仕方なく作業を続ける。
武具の手入れを再開したヘルマだが、すぐに手を止めてヨハナに言う。
「エール様たち楽しくやっているのかしらね」
「どちらも大好き同士だから。邪魔がいなくて凄いんじゃない?」
「はあ、凄いのか……。男から守ることが多いのかなと思ったけど、女に人気だったわね」
ヨハナがエプロンの紐を結び直しながら答える。
「エール様は美人さんだから。綺麗過ぎると男性って声を掛けづらいのかしらね」
「そっか。女って綺麗な人には大好きになるか毛嫌いするかの両極端な気がする」
「あとは、エール様が女性であることを隠しているしね。いまだに気づいていない人が多いそうよ」
結局ヘルマもヨハナの話に乗る形となり、エールタインの話に花が咲いた。
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