天真爛漫な婚約者様は笑顔で私の顔に唾を吐く

りこりー

文字の大きさ
3 / 25

学園

しおりを挟む
 貴族学園に入学すると三年間。淑女、紳士のマナーやダンス、社交の教育が受けられる。もちろん、家庭教師でもいいのだが、社交界にデビューする前準備と言った感じだろうか。だから、軽い夜会やお茶会などもあるし、下位や高位の貴族の交流の場所でもある。一回社交に出てしまえば、位がネックになりあまり話しかけられない。学園ならば、位を気にせず交流を楽しみ、新しい発見などもある。すべて位に縛られた貴族社会に少しの風を通そうとした陛下の恩情で考えられた学園なのだ。

「ねぇ…あれがリル様の婚約者なの?」

「えぇ、地味よねぇ…」

「あんなのが婚約者だなんてお可哀想に…」

 こんな声はいつもことだ。その声を無視して、私の愛しい婚約者の姿を探す。学園はそんなに広くないが、三階まであるから探すのは結構大変である。急ぎたい所だが、淑女らしく歩きで探す。

 お昼時だからか、皆食堂や広場で友達とご飯を共にしている。私もリルといつもお昼を共にしているこの時間が大好きだ。デートや観劇などはたまに行くが、うちの騎士団に鍛錬に来ているせいかいつも眠そうだ。そんなリルに無理はして欲しくないから、自分を優先して欲しいとお願いをした。それから二人の時間は減ってしまったが、お昼のこのランチタイムだけは一緒に居られる。一秒でも一緒に居たい私は物凄い急いでいるのにリルが見つからない。いつもだったら、教室に迎えにやってくるんだけど…。

「はぁ…どこ行っちゃったの?」

「あれ?姉上様~誰かお探しですか?」

 この気だるげな声を拒否するように不愉快さを体が訴えてくる。

「リム…まだ婚約者だから姉ではないわ」

「もう卒業まで一年。卒業したら結婚ですよね?そしたら晴れて姉上じゃないですか。何か間違ってます?」

「間違ってはないけど…」

 私はこの男が嫌いだ。嫌い?いや、生理的に無理。リルの双子の弟のくせに生意気で、女を下に見ている節があるし、なんせこの容姿を揶揄って自分を馬鹿にしてくる。本当は愛人の子なのでは?といった噂が出るほど似てないし、誰にでも愛想の良いリルとは違い、リムは基本他人には一歩引いている。いつも眉間に皺を寄せてて、怖いと令嬢には嫌われているし、令息には物事を包み隠さずズバリと言ってしまう性格で友人も少ない。

「じゃ、いいじゃん。姉上?」

「私より剣術弱いくせに…」

「な!?はぁ!?今だけだって!すぐ追いつくし!」

「はは、いつでも挑戦受け付けるわ!」

「シェリー?」

「あ、リル」

 揶揄われてそれを揶揄い返していると馴染んだ声に目線を迎える。相変わらず透き通った橙色の髪が似合う整った容姿に息を呑む。もう九年も婚約者なのにいまだにドキドキと胸が高鳴る。

「リム、シェリーが世話になったな」

「いや、兄上は色々とみたいだから」

「……」

 ぴくりとリルの眉が反応を見せたが、すぐにいつもの笑みに戻る。何かあったのかと聞いてみても、教師の所にいっていただけだと言われた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

クリスティーヌの本当の幸せ

宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。 この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

【完結】親の理想は都合の良い令嬢~愛されることを諦めて毒親から逃げたら幸せになれました。後悔はしません。

涼石
恋愛
毒親の自覚がないオリスナ=クルード子爵とその妻マリア。 その長女アリシアは両親からの愛情に飢えていた。 親の都合に振り回され、親の決めた相手と結婚するが、これがクズな男で大失敗。 家族と離れて暮らすようになったアリシアの元に、死の間際だという父オリスナが書いた手紙が届く。 その手紙はアリシアを激怒させる。 書きたいものを心のままに書いた話です。 毒親に悩まされている人たちが、一日でも早く毒親と絶縁できますように。 本編終了しました。 本編に登場したエミリア視点で追加の話を書き終えました。 本編を補足した感じになってます。@全4話

花言葉は「私のものになって」

岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。) そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。 その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。 美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。 青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。

【完結】人形と呼ばれる私が隣国の貴方に溺愛される訳がない

恋愛
「お姉様に次期王妃の責務は重いでしょう?」 実の妹に婚約者と立場を奪われた侯爵令嬢ソフィアは、事実上の厄介払いとも取れる隣国の公爵への嫁入りを勝手に決められた。 相手は冷酷で無愛想と名高いが、むしろ仮面夫婦大歓迎のソフィアは嬉々として相手の元に向かう。が、どうやら聞いていた話と全然違うんですけど…… 仮面夫婦の筈がまさかの溺愛?! ※誤字脱字はご了承下さい。 ※ファンタジー作品です。非現実な表現がある場合もございます。

幼馴染に婚約者を奪われましたが、私を愛してくれるお方は別に居ました

マルローネ
恋愛
ミアスタ・ハンプリンは伯爵令嬢であり、侯爵令息のアウザー・スネークと婚約していた。 しかし、幼馴染の令嬢にアウザーは奪われてしまう。 信じていた幼馴染のメリス・ロークに裏切られ、婚約者にも裏切られた彼女は酷い人間不信になってしまった。 その時に現れたのが、フィリップ・トルストイ公爵令息だ。彼はずっとミアスタに片想いをしており 一生、ミアスタを幸せにすると約束したのだった。ミアスタの人間不信は徐々に晴れていくことになる。 そして、完全復活を遂げるミアスタとは逆に、アウザーとメリスの二人の関係には亀裂が入るようになって行き……。

我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。 そこで目撃してしまったのだ。 婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。 よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!  長くなって来たので長編に変更しました。

処理中です...