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懇親会
しおりを挟む「お嬢様!飲んでますか?」
「えぇ、頂いてるわ」
ニコニコと愛らしい笑顔を浮かべてくる騎士達に笑顔で返す。皆小さい頃から知ってる顔馴染み達ばかりで、自然と笑顔になってしまうのだ。豪勢な食事に数々の種類のお酒。毎日のストレスも少し和らいでいくような少しの安堵感。それが今はとても心地いい。
「ほら、もう一杯」
「え?そ、そんなに飲めないわ!」
「いいから飲めって」
リムはこんなに無邪気に笑う人だったっけ?
いつも彼は無表情というか、眉間に皺を寄せて暗い印象だったはず…幼い頃は、まだ笑っていたはずだけれど…。
いつから笑わなくなった?
胸に何か突っかかる。一抹の不安を消す様にお酒を浴びるが如く飲み込んだ。
「あーぁ、こんな飲んじゃって…」
痛む頭と酔いから来るふらつきで無理矢理椅子に座らされ、困ったように笑うリムにリルの面影を見ていた。こうやって自分の傍に居てくれたらいいのに…。
「ちょっと水持ってくるわ」
「え…あ、うん…」
まだもう少し傍に居て欲しいと言いたかった。婚約者でもない女にそんな事を言われても困るだろうとその言葉を飲み込む。
いつの間にか他の騎士達の姿も疎らで、寝入ってしまっているものなどがほとんどだった。ふわふわする思考をどうにかしようと外の風に当たりに歩を進めた。思いの外、冷たい風にふわふわしていた思考も少しはマシになってきた。冷たい風を浴びながら、何をやってんだろうと乾いた笑いがぽろりと零れた。
「あ…リル」
少し離れた木陰に女性騎士と楽しく話しているリルを見つけた。彼も騎士団ではあるので来ているのは知っていたが、自分の元に来ることはなかった。なんなの…愛してると言っていたのに、今は女性と親しげに話している。一体、彼は何をしたいの?訳の分からない婚約者の行動に目の前が曇り空のように暗く歪んてゆく。
「何やってんだ」
大声で叫んだ声に伏せていた目線を上げれば、リムがリルに掴み掛かっていた。少し距離がある為、こちらから話の内容は途切れ途切れしか聞こえない。
「___違う」
「__しろと?」
「___、______にしないなら俺にも考えがある」
「狂ってるよ、お前…」
最後の言葉だけははっきり聞こえた。狂ってる?何を言ってるのか皆目見当もつかない。酒で痛む頭にはこれ以上何も考えらずに屋敷に帰ることにした。
「シェリー!」
「お兄様…」
「酒を飲んだのか?大丈夫か?」
「ふふ、いつまでも子供じゃないのよ?少し寝れば大丈夫よ」
「何言ってるんだ、俺にはいつまで経っても手のかかる女の子だよ」
「お兄様と結婚出来たら良かったのに…」
自室に運んでくれた兄の顔を見ながら微笑むとそうだねと微笑み返してくれた。優しく頭を撫でて、眠るまで傍に居てくれる。こんな婚約者だったらいい。他に何も望まないのに…。
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