天真爛漫な婚約者様は笑顔で私の顔に唾を吐く

りこりー

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どれが真実なの?

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「ふざけるな!」

 リルの私室から聞こえる怒鳴り声に思わず足を止めた。なにやら言い合いをしているようで、開けてもいいのかと躊躇してしまう。

「仕方ないだろ…」

「何の為にここまでやってきたんだよ!すべて無駄にしやがって!この前の金借りた時だって俺はもうやめろっていっただろ!」

「まさか、あんな所に来るなんて思わなかったんだ」

「まさかまさかって…本当にどうしようもないやつだな!下半身で生きてるのかお前は!よりにもよって、シェリーの友人とだなんて」

 どうやらリムがリルに対して怒っているようだった。いつもリムだけは、自分の為に怒ってくれて心配してくれていたし、今回もそれで怒っているんだと思う。申し訳なさでますますドアが開けられなくなってしまった。

「俺が入れ替わってシェリーに執着させるようにしてたってのに…」

「ねぇ、入れ替わってたってどういうこと?」

「シェリー!?」

 入れ替わりって言葉に思わず部屋に入って聞いてしまった。そこにいたのは、リルとリムのはずなのに…リルが二人いるようにしか見えなかった。

「ねぇ、どうしてリルが二人いるの?」

「いや…これは…」

「リム、もうやめよう。僕も疲れたし…」

「何言ってやがんだ!お前も金を借りたり、良い様にしてただろ!」

「でも、やっぱり…このまま領地で戦争になんてなったら無駄な命が失われることになる」

「クソッ、クソッ、こんなはずじゃ…」

「シェリー…ごめん。謝って済む話じゃないけど、聞いてくれる?」

「…えぇ」

 昼間とは違い、リムはもう何か疲れたように顔がやつれていた。多分、口が悪い方がリムだと思うけど…二人はそっくりで、今まで似てないと思っていたけど…一体何がどうなってるか分からない。

「似てて驚いただろう?僕たちは元は似ているんだよ?双子だからね」

「えぇ…なんで似てないなんて思っていたのかしら…」

「髪型、表情で似てないように見せてたっていうのが正しい、かな」

「そうなの…何も分かっていなかったのね、私…」

「そういう風に見せてたんだよ!シェリーは何も悪くないんだ、ごめん…」

 リムが跪き、自分の手を握ってくる。けれど、自分にはそれが謝罪なのかなんなのか分からなかった。何に謝罪しているのかも分からない。

「リルが婚約者に選ばれた時、俺がリルになりたかった。だから、何度かリルに頼んでお茶会や観劇に行くのを代わりに行ってたんだ」

「僕は、君が可愛かったはずなのに…ずっと小さい頃から一緒にいるから、その…見慣れたというか」

「それで、リムと入れ替わりを?」

「あぁ…本当にすまない…その内、他の女性と遊ぶのが楽しくなってしまってほとんどリムが君との交流は行ってた」

「なんてことなの…」

 今まで、私が好きだったのはリム?それともリル?もう訳が分からない。説明されてもどこから理解すればいいのか…。
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