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友人の願い
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次の日、学園に着くとひそひそとまたあの気持ち悪い陰口が始まった。きっと婚約破棄の事が広まっているのねと思うと気が重い。
「シェイリー嬢」
「どなたですか…?」
口を聞いたこともない令嬢に呼び止められて、足を止める。すぐそこは教室だけど、まだ始業時間までは少し時間がある。
「男爵家のカリナと申します。身分が下の者からお声がけしてしまってご無礼をお許し下さい」
「いえ…大丈夫です」
「実は…バーバラの事なんです」
昨日の事を思い出し、吐き気が襲う。一番信用していた友人のあられもない姿が脳裏に浮かび、顔が勝手歪む。
「彼女のした事はとても許せない事だとは思います。私がされたらきっと彼女を殺してしまうかもしれない」
令嬢とは思えない物騒な言葉に少しだけ驚いたが、どうやら真剣に言っているみたいだ。
「でも…最後に彼女と話す機会くらいあげてもいいんじゃないかなって思って」
「最後とは…?」
「彼女は平民ですよ?しかも、特別に入学が認められた人間。そんな人間が貴族の婚約者を寝取ったとなって無事でいられるはずないですよ。今日付けで退学処分になってます」
「そう…なんですか。なんでそれを貴方が?」
「バーバラとは従妹なんです。うちは運よく男爵位を貰いましたが…バーバラの所は親がどうしようもなくて…きっと学園を退学なったとなれば、娼館に売られるかもしれません」
「な!?実の娘を?」
「そういうのも厭わない親です。クズなんです…親戚からも嫌われていますし」
「バーバラは今どこに?」
「行ってどうなさるのです?」
「でも…」
冷たく言い放つカリナに何と答えるのが正解か、自分には言葉に詰まった。
「はぁ…申し訳ございません。一番心に傷を負ったのはシェイリー嬢だというのに…私が何も伝えなければ貴方様が気を病む必要もなかった。差し出がましいことを言いました」
「いえ…」
「まだ学園にいるはずです。さっき退学を言い渡されたと聞きましたから」
ありがとうとだけ伝え、バーバラを探しに足を進めた。きっと退学を伝えられるのは学園長の執務室。そこから辿っていけば…。
「バーバラ!」
「シェイリー…」
とぼとぼと歩く後ろ姿に必死に呼びかけた。それが良い事なのかなんて考えられなかった。ただ、今話さないともうきっと話せなくなる。それだけだった。
「もう聞いた?」
「えぇ…退学になったって」
「友人を裏切った報いよ。気にしないで…」
乾いた笑いを浮かべるバーバラは顔色が悪かった。昨日はあんなに気持ちが悪かったのに今は心配の方が大きい。とことんお人好しだなって自分でも思う。
「バーバラ…私達ちゃんと友達だったよね…?」
「何言ってるのよ…貴方の婚約者寝取った女よ、そんなわけない…じゃない」
「でも…私の為にリルに問い詰めてくれたじゃない」
「それで、まんまと惚れてしまったけどね…」
「仕方ないわ、私の婚約者だった人よ。そりゃカッコイイはずよ」
「なんでシェイリーが誇らしげなのよ…馬鹿じゃないの…」
泣かないでとバーバラに言うとお人好しと言われてしまったけれど、彼女に会うのはもうこれっきりだろうから後悔したくない。ごめんなさいと何度も謝るバーバラを慰めることは出来なかった。友人だから憎い。友人だったら余計に許せない。
「さよなら、バーバラ」
「…さよなら、シェイリー」
何か言いたそうにしてたけど、ぐっと堪えたバーバラは学園を去って行った。
一生彼女を許せない。けれど、友人だった記憶がなくなるわけじゃない。両方の記憶があるから苦しい。けれど、最後に話が出来て良かった。
数か月後、バーバラは客の質が悪いと悪名高い娼館に名があったと風に噂で聞いた。
「シェイリー嬢」
「どなたですか…?」
口を聞いたこともない令嬢に呼び止められて、足を止める。すぐそこは教室だけど、まだ始業時間までは少し時間がある。
「男爵家のカリナと申します。身分が下の者からお声がけしてしまってご無礼をお許し下さい」
「いえ…大丈夫です」
「実は…バーバラの事なんです」
昨日の事を思い出し、吐き気が襲う。一番信用していた友人のあられもない姿が脳裏に浮かび、顔が勝手歪む。
「彼女のした事はとても許せない事だとは思います。私がされたらきっと彼女を殺してしまうかもしれない」
令嬢とは思えない物騒な言葉に少しだけ驚いたが、どうやら真剣に言っているみたいだ。
「でも…最後に彼女と話す機会くらいあげてもいいんじゃないかなって思って」
「最後とは…?」
「彼女は平民ですよ?しかも、特別に入学が認められた人間。そんな人間が貴族の婚約者を寝取ったとなって無事でいられるはずないですよ。今日付けで退学処分になってます」
「そう…なんですか。なんでそれを貴方が?」
「バーバラとは従妹なんです。うちは運よく男爵位を貰いましたが…バーバラの所は親がどうしようもなくて…きっと学園を退学なったとなれば、娼館に売られるかもしれません」
「な!?実の娘を?」
「そういうのも厭わない親です。クズなんです…親戚からも嫌われていますし」
「バーバラは今どこに?」
「行ってどうなさるのです?」
「でも…」
冷たく言い放つカリナに何と答えるのが正解か、自分には言葉に詰まった。
「はぁ…申し訳ございません。一番心に傷を負ったのはシェイリー嬢だというのに…私が何も伝えなければ貴方様が気を病む必要もなかった。差し出がましいことを言いました」
「いえ…」
「まだ学園にいるはずです。さっき退学を言い渡されたと聞きましたから」
ありがとうとだけ伝え、バーバラを探しに足を進めた。きっと退学を伝えられるのは学園長の執務室。そこから辿っていけば…。
「バーバラ!」
「シェイリー…」
とぼとぼと歩く後ろ姿に必死に呼びかけた。それが良い事なのかなんて考えられなかった。ただ、今話さないともうきっと話せなくなる。それだけだった。
「もう聞いた?」
「えぇ…退学になったって」
「友人を裏切った報いよ。気にしないで…」
乾いた笑いを浮かべるバーバラは顔色が悪かった。昨日はあんなに気持ちが悪かったのに今は心配の方が大きい。とことんお人好しだなって自分でも思う。
「バーバラ…私達ちゃんと友達だったよね…?」
「何言ってるのよ…貴方の婚約者寝取った女よ、そんなわけない…じゃない」
「でも…私の為にリルに問い詰めてくれたじゃない」
「それで、まんまと惚れてしまったけどね…」
「仕方ないわ、私の婚約者だった人よ。そりゃカッコイイはずよ」
「なんでシェイリーが誇らしげなのよ…馬鹿じゃないの…」
泣かないでとバーバラに言うとお人好しと言われてしまったけれど、彼女に会うのはもうこれっきりだろうから後悔したくない。ごめんなさいと何度も謝るバーバラを慰めることは出来なかった。友人だから憎い。友人だったら余計に許せない。
「さよなら、バーバラ」
「…さよなら、シェイリー」
何か言いたそうにしてたけど、ぐっと堪えたバーバラは学園を去って行った。
一生彼女を許せない。けれど、友人だった記憶がなくなるわけじゃない。両方の記憶があるから苦しい。けれど、最後に話が出来て良かった。
数か月後、バーバラは客の質が悪いと悪名高い娼館に名があったと風に噂で聞いた。
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