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第八夜 そして知る、一つの闇
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今宵も奥様の愛欲の供にされるのかと考えていたが、誘いが一向に来ないのを、寂しく感じるのは何故だろうか?
部屋の蓄音機からは優雅な交響曲が鳴り、芳しいお茶をメイドの亜美さんから頂いている。
そしてあの雪菜様の扇情的な姿に少し興奮していた──。
もう忘れろって昼間、言われたばかりなのに。
少しは懲りた筈なのに。
何故、俺はこんなに『黒猫館』の事を知りたがる。調べたいと考える。
考えるな──そんな危険な事を。
気にするな──お前はセックスで金を稼げばいいんだ。
言い聞かせるように、目を閉じて、お茶を一口含む。
この『黒猫館』にきて約二週間が過ぎた。
やっと二週間と取るか、もう二週間と取るか──。
初日から味わったあの過激な快楽を味合わないと物足りなく感じてしまうのは、ちょっとした禁断症状にも似ている──。
今夜は亜美さんとどっぷり愉しむか?
俺の愛欲の矛先にメイドの亜美さんを向けようとしている俺に、自分で呆れた。
奥様は一体、どうしているのだろうか?
あの地下室にいるのか?
もしかしたら扇情的な姿を見られるのでは?
ダメだ──忘れようとするほど、無理がある事に気付いた。
交響曲が終わり、蓄音機の針がレコードから上がり、亜美さんがレコードの交換をしている時に彼女はどれにしようか俺に訊く。
「次はどの曲をかけましょうか? 松下様」
「……」
「松下様?」
「──あ、ごめん」
「まだ昼間の事が気になるのですね?」
「あんな衝撃的なものを観たらそりゃあ」
「そそられてしまいましたか? 雪菜様のお姿に」
「何だ、わかったか?」
「女の私が観ても美しいって見惚れてしまいますもの──。男性が観たら欲情してしまいます」
「でも、美しい薔薇には棘があるように、彼女らにも毒がある。その毒がでも魅力的だ──」
「松下様、いけない方──」
「フフ……そういう危険な部分を観るのが好きって男性もいるって事さ」
亜美さんはそこで奥様の今夜の予定を思い出すように呟いた。
「そう言えば、今夜、奥様。例の場所で少し楽しんでから来るって言ってましたわ」
「例の場所?」
「あの地下室です」
もしかしたら今、地下室に向えば、奥様の扇情的な姿が観られるのでは? と不覚にも思ってしまった。
亜美さんはそんなふしだらな考えをする俺に釘を刺す。
「観に行こうなんてよした方がいいですよ」
「でも、そんな事を言われると退かないのは、昼間の時に知ったでしょう?」
「懲りてないんですね──」
呆れたと亜美さんはため息をする。
もしかしたら俺は肉体的に痛い目に遭わないと判らない人間かもしれない。
「覗いてみたいですか? 奥様のイケない姿」
「亜美さん」
「実は私も観てみたいんです。奥様の艶やかな姿」
「一緒に観に行って共犯者になって、二人で後で愉しみません──?」
「いいね。行こうか」
俺達は共に共犯者となるべくあの地下室の入口へと向かう。
カラクリを始動させると地下への階段が現れる。
階段が現れると俺達は高揚感に浸りながら地下へ降りていく。
夜でも明るさは昼間と変わらない。
ローソクの炎だけが照らす螺旋階段。
地下室へ降りると全部で五つの扉がある。
さっきは真正面の中心の扉へ入った。
奥様はどの部屋にいるのだろうか──。
亜美さんは何処に奥様がいるのか知っているようだ。迷いなく一番右の扉に向かった。
幸運にも鍵は開いているらしい。
ドアの隙間から観るように手招きしてくれた。
ドアの隙間から観えた奥様の直美様の姿はとても扇情的な姿だった。
ドレス姿も良いが、あんなにボンテージ姿が絵になるのはそんなにいない。
真紅のボンテージに真紅のハイヒール。相変わらず花びらには男が群がり、激しいキスや舌を捧げさせて、発情した雌のような声で喘いでいる。
四方八方からは男達の象徴が剥き出しにされて両手に握り、口に運んだり、愛液を飲んだり。
腰をかけているのがしかも男性の背中、人間椅子にしていた。
しかしそんな耽美的な光景がずっと続くかと思っていたが、そこで彼女、直美様のドス黒い闇が剥き出しにされた──。
少しでも精力を衰えさせると人間椅子に座ったままで真紅のハイヒールで頭を踏みつけ、蹴りを入れる。
そしてそれを恍惚と受ける男達は黒い布で目を覆われて、先程踏みつけられたハイヒールに誓いの接吻を捧げさせられたのだ。
奴隷には口と口の触れ合いはしていない。
あくまでも唇との触れ合いは俺のような男性とする線引きはしている様子だ──。
周囲の男性奴隷達からは直美様は『女王様』と呼ばれている。
喘ぐ姿とその反動するような凶暴性が危険過ぎる魅力になっているようだ。
もっと観ていたい衝動を傍らの亜美さんが諌めて、首を横に振って、去りましょう──と促す。
俺も痛い目に遭う前に、後ろ髪を引かれる想いで地下室から去った──。
元の地上の館に戻り、カラクリを元に戻した亜美さんは、先程からの無言を破り、息苦しさから解放されたように会話を交わす。
「凄かったですね! 奥様のお姿」
「いや~確かに刺激的な姿だった。今日は濃い一日だね──本当にさ」
「松下様、さっきから興奮が収まらないのでは?」
「当たりだよ。もう待ちきれない──ここで君を抱かせてくれないかな?」
「共犯者として二人の濃厚な時間を過ごしましょう──」
俺と亜美さんはその部屋のソファで、愛欲に溺れる事にした──。
二人で『観てはならないものを観た共犯者』として激しく愛を交わす事にしたのだ──。
部屋の蓄音機からは優雅な交響曲が鳴り、芳しいお茶をメイドの亜美さんから頂いている。
そしてあの雪菜様の扇情的な姿に少し興奮していた──。
もう忘れろって昼間、言われたばかりなのに。
少しは懲りた筈なのに。
何故、俺はこんなに『黒猫館』の事を知りたがる。調べたいと考える。
考えるな──そんな危険な事を。
気にするな──お前はセックスで金を稼げばいいんだ。
言い聞かせるように、目を閉じて、お茶を一口含む。
この『黒猫館』にきて約二週間が過ぎた。
やっと二週間と取るか、もう二週間と取るか──。
初日から味わったあの過激な快楽を味合わないと物足りなく感じてしまうのは、ちょっとした禁断症状にも似ている──。
今夜は亜美さんとどっぷり愉しむか?
俺の愛欲の矛先にメイドの亜美さんを向けようとしている俺に、自分で呆れた。
奥様は一体、どうしているのだろうか?
あの地下室にいるのか?
もしかしたら扇情的な姿を見られるのでは?
ダメだ──忘れようとするほど、無理がある事に気付いた。
交響曲が終わり、蓄音機の針がレコードから上がり、亜美さんがレコードの交換をしている時に彼女はどれにしようか俺に訊く。
「次はどの曲をかけましょうか? 松下様」
「……」
「松下様?」
「──あ、ごめん」
「まだ昼間の事が気になるのですね?」
「あんな衝撃的なものを観たらそりゃあ」
「そそられてしまいましたか? 雪菜様のお姿に」
「何だ、わかったか?」
「女の私が観ても美しいって見惚れてしまいますもの──。男性が観たら欲情してしまいます」
「でも、美しい薔薇には棘があるように、彼女らにも毒がある。その毒がでも魅力的だ──」
「松下様、いけない方──」
「フフ……そういう危険な部分を観るのが好きって男性もいるって事さ」
亜美さんはそこで奥様の今夜の予定を思い出すように呟いた。
「そう言えば、今夜、奥様。例の場所で少し楽しんでから来るって言ってましたわ」
「例の場所?」
「あの地下室です」
もしかしたら今、地下室に向えば、奥様の扇情的な姿が観られるのでは? と不覚にも思ってしまった。
亜美さんはそんなふしだらな考えをする俺に釘を刺す。
「観に行こうなんてよした方がいいですよ」
「でも、そんな事を言われると退かないのは、昼間の時に知ったでしょう?」
「懲りてないんですね──」
呆れたと亜美さんはため息をする。
もしかしたら俺は肉体的に痛い目に遭わないと判らない人間かもしれない。
「覗いてみたいですか? 奥様のイケない姿」
「亜美さん」
「実は私も観てみたいんです。奥様の艶やかな姿」
「一緒に観に行って共犯者になって、二人で後で愉しみません──?」
「いいね。行こうか」
俺達は共に共犯者となるべくあの地下室の入口へと向かう。
カラクリを始動させると地下への階段が現れる。
階段が現れると俺達は高揚感に浸りながら地下へ降りていく。
夜でも明るさは昼間と変わらない。
ローソクの炎だけが照らす螺旋階段。
地下室へ降りると全部で五つの扉がある。
さっきは真正面の中心の扉へ入った。
奥様はどの部屋にいるのだろうか──。
亜美さんは何処に奥様がいるのか知っているようだ。迷いなく一番右の扉に向かった。
幸運にも鍵は開いているらしい。
ドアの隙間から観るように手招きしてくれた。
ドアの隙間から観えた奥様の直美様の姿はとても扇情的な姿だった。
ドレス姿も良いが、あんなにボンテージ姿が絵になるのはそんなにいない。
真紅のボンテージに真紅のハイヒール。相変わらず花びらには男が群がり、激しいキスや舌を捧げさせて、発情した雌のような声で喘いでいる。
四方八方からは男達の象徴が剥き出しにされて両手に握り、口に運んだり、愛液を飲んだり。
腰をかけているのがしかも男性の背中、人間椅子にしていた。
しかしそんな耽美的な光景がずっと続くかと思っていたが、そこで彼女、直美様のドス黒い闇が剥き出しにされた──。
少しでも精力を衰えさせると人間椅子に座ったままで真紅のハイヒールで頭を踏みつけ、蹴りを入れる。
そしてそれを恍惚と受ける男達は黒い布で目を覆われて、先程踏みつけられたハイヒールに誓いの接吻を捧げさせられたのだ。
奴隷には口と口の触れ合いはしていない。
あくまでも唇との触れ合いは俺のような男性とする線引きはしている様子だ──。
周囲の男性奴隷達からは直美様は『女王様』と呼ばれている。
喘ぐ姿とその反動するような凶暴性が危険過ぎる魅力になっているようだ。
もっと観ていたい衝動を傍らの亜美さんが諌めて、首を横に振って、去りましょう──と促す。
俺も痛い目に遭う前に、後ろ髪を引かれる想いで地下室から去った──。
元の地上の館に戻り、カラクリを元に戻した亜美さんは、先程からの無言を破り、息苦しさから解放されたように会話を交わす。
「凄かったですね! 奥様のお姿」
「いや~確かに刺激的な姿だった。今日は濃い一日だね──本当にさ」
「松下様、さっきから興奮が収まらないのでは?」
「当たりだよ。もう待ちきれない──ここで君を抱かせてくれないかな?」
「共犯者として二人の濃厚な時間を過ごしましょう──」
俺と亜美さんはその部屋のソファで、愛欲に溺れる事にした──。
二人で『観てはならないものを観た共犯者』として激しく愛を交わす事にしたのだ──。
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