混沌の女神の騎士 

翔田美琴

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第4章 遺された希望、遺した絶望

4-5 遺した絶望

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「嫌っ……嫌っ……お父さん……お父さん──!」
「──ジェニファー! どうした?」
「ジェニファー!」 

 唐突に苦しみ出したジェニファーに、セラフィックゲートで新たなる矛盾現象パラドクスの大地にたどり着いた、ジョニー、ギリアム、ハザード、キッドの皆は何が起きたのか彼女に聞いた。
 
「レム大佐がどうしたんだ?」
「お父さんが──また! 女の人に──殺されて──! 嫌っ──見たくない! 視たくない……!」
「【女神の瞳】は勝手に発動するんだ。それが宿る本人には視たくないのに、勝手に【女神の瞳】は見せてしまうんだよ……」
「休憩する場所を探そう」
「──とは、言うものここは何処だ?」

 周辺には深いジャングルが広がる。
 しかもやけに蒸し暑い。この気候はいわゆる熱帯雨林と呼ばれる気候の場所か。
 そうなるとカルベローナ公国の軍人達の中ではそこはかなりの難所だった。
 ジョニーは己の持つ端末でナビシステムを使って何処にいるのかを衛星で見る事にした。
 導かれた場所は南米大陸。
 しかも、ギアナ高地と呼ばれる場所らしい。
 GPSでは国はベネズエラを指している。またとんでもない所に飛ばされたものだ。
 ここは国立公園に指定されている場所だ。密猟者と思われると殺されかねない。
 早い所、ここにある矛盾現象パラドクスを解決しないと先に警察が来て事情聴取される羽目になる。
 という事はここにも例の隕石が落ちているという事か──?
 
「──どうやら、ベネズエラのギアナ高地にいるな。俺達。テーブルマウンテンの一つにいるんじゃないかな」
「隠れる場所を捜してみようぜ。こんななりじゃ密猟者と言われても文句言えねーよ」
「それな」

 【女神の瞳】にてひどい光景を視てしまってジェニファーをキッドが宥めつつ、彼らは国立公園の中を歩く。カナイマ国立公園という場所だ。彼らは観光という気分ではなかったが、テーブルマウンテンの壮大な景色に思わず感嘆とする。
 そして恐れも抱いた。
 もし、テーブルマウンテンの頂上とか、自らの脚では向かう事が難しい所にセラフィックゲートがあったら、どのように向かうか? と。
 しかも観光ビザ無しでいきなり入国してしまった。これでは密猟者と処断されても文句も言えない。
 幸い、かの有名なエンジェルフォールという観光地からは遠い場所にいるらしい。余程の物好きでない限り、観光者も訪れない僻地へ飛ばされたらしい。
 やることやってセラフィックゲートを見つけたら、名残り惜しいが去った方が賢明かもしれない──。
 
 森の中を歩くと、明らかに国立公園では生息していないような生物が出現してきた。
 例の水色の羽根の昆虫に似ているが、水色の羽根は同じだとして、昆虫にしては大きい異形の魔物が空中から襲ってきた!
 
「うおっ! なんだありゃ!?」
「あれも魔物だよな。まさか国立公園が飼っている動物じゃないよな!?」
「ここの矛盾現象パラドクスはこの異形の魔物の出現かな。とりあえず倒すか?」
「倒す前に情報が欲しい。もしかしたらあんな粋狂な奴も国立公園では保護生物になっている可能性もあるし」

 こういう所で、現地の情報がないのはキツイ。
 せめて端末が使えるなら、そこから今の国立公園が保護認定している生物のリストが確認できるなら嬉しいが──。
 そうこうしている合間にも、水色の羽根の巨大昆虫は数を増やして自分たちを襲ってきている──。
 すると──森の奥からも拳銃の発砲音が聴こえた。誰か襲われているのか?
 地元のレンジャーとかなら情報が得られるのでは?
 彼らはその拳銃の発砲音の方向へ、森を抜けて向かう。

「誰か襲われているの?」
「落ち着いたかい? ジェニファー?」
「何とか……でも、泣いている場合じゃないみたいだし、足を引っ張る訳には」
「でも、無理はしないでいいよ。ここも戦場みたいなものだから危険だと思ったら木の陰とかに隠れてもいいからな」
「──どうして、戦場と言えるの?」
「拳銃の発砲音が聴こえた。こんな国立公園で拳銃の発砲音なら、あのデカい昆虫の仕業の可能性が高いからね」

 話しをしながら、でも、彼らは木陰に隠れながら、慎重に行軍する。
 ここがそこそこの密林地帯で良かった。隠れる場所があるのは助かる。弾が飛んできても自然の遮蔽物で盾にする事もできる。
 木陰に隠れながら、気配を少なくしながら、森を進んでいたおかげで水色の羽根の巨大昆虫の襲撃が収まった。
 しかし、森の向こう側は拳銃の発砲音が激しくなってきている。不意に頭を出して撃たれないように気を付けなければ──。
 茂みに隠れる彼らは双眼鏡で状況の確認をした。
 先程、彼らを襲った同じ生物に、拳銃や自動小銃で発砲して撃退しようとしている部隊がいる。とりあえず人間だ。話している言語から英語は使えるものと思われる。
 彼らは迷彩柄の服を纏い、あの巨大昆虫の駆除をしているらしい。
 この時点では味方とも敵とも断定はできない。
 少なくとも巨大昆虫とは敵対しているのは確かではあるが、全部が全部味方と言えないのが、異国の地である所以だろう。
 とりあえず戦闘が落ち着くまで接触は控えた方がいいかもしれない。
 彼らは茂みに隠れながら、少しずつ彼らとの距離を詰める。
 落ち着いたら、すぐにでも接触を試みて、どういった状況なのかを聞いてみよう。
 10分程の戦闘だった。
 自動小銃の発砲音もならない。一段落ついたって事かな。
 接触を試みる事にする。

「何者だ?!」
「カルベローナ公国軍の者だ」
「──カルベローナ公国軍だと?」
「しかし、あなた達に敵対の意志はない。この場所の情報が欲しいので姿を見せた」
「──さしずめ、レンジャーという所か。何の情報が欲しい?」
「先程、あなた達が接敵していたものの情報と、周辺地域の情報が欲しい」
「ああ、あの巨大昆虫の事か。安心しろ。国立公園もあいつらは保護生物では無いから安心して撃ち殺せと言ってる」
「──やはり。あなた達の所属は聞いても差し支えは無いかな?」
「あんた達も所属を明かしてくれたから、教えてもいいだろう。ベネズエラ政府に雇われたレンジャー部隊だ。任務はあの巨大昆虫などの駆除を担当している」
「名前は? 俺はロベルト・ギリアム」
「ルイスだ」
「いい名前だな」
「そっちもなかなか強そうな名前だ」
「連れがいてね。紹介しても良いかな?」
「では、こっちも紹介するよ。着いてきてくれ。丁度、ベースキャンプが近くにある」

 どうやら、接触は上手くいったかな。
 彼らは気を抜かないように、ルイスと名乗った男性の後を歩きながらベースキャンプへと目指した。ここから彼らとの共闘が始まる──。
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