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第4章 遺された希望、遺した絶望
4-7 闘う者達
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異形の魔物は人間を見つけるとすぐに排除を試みる凶暴な生態を持っている。
水色の羽根を持つその魔物は群れを成してルイス率いるレンジャー隊のベースキャンプへ近づいているが、イェーガーという名の男性が退却しても状況が変わる訳でもないと隊員を率いて奮闘している光景があった。
彼らは木の陰に隠れ、天然の遮蔽物を利用しながら一匹でも多く退治する為に自動小銃を発砲しつつ、細かく場所を変えながら応戦している。
昆虫達はその鋭い脚や爪や防護服を腐らせる腐食液を放出しながら、鋭い角で突撃してくる。
その姿はまさに巨大な昆虫そのもの。既存の昆虫とは規格外の大きさの魔物と形容するに相応しい虫である。
その奥からは巨大な戦車のような女王虫が、羽虫達を操りながら重々しく進んでいる。脚が何本も生えて、尻尾はまるで蠍のような棘が無数にあり、匂いは非常に悪臭を放つ。
この悪臭はオスの虫を操るフェロモンの役割を持つ。フェロモンに毒された虫達はまるで手足のように操られ、女王に遣える尖兵として人間に襲い掛かる。
太陽の陽が落ち、空が徐々に暗くなる程に、元々暗い色彩の虫達の方に有利になりつつある。目立つ水色の羽根も空が暗闇に染まれば人間の目には何もかもが黒く視えてしまうので関係ないのである。
状況は悪くなる一方、しかしそれでも闘うしかなかった。
イェーガーの部隊は暗視スコープをおもむろに装備して、木の陰に隠れながら、部隊への連絡を試みる。だが、そんな暇もない程に絶えず攻撃を仕掛けてくる羽虫であった。
「このうざったい虫め! 死にやがれ!」
「これ以上、この方角に行くとベースキャンプが危険に晒される!」
「こいつら、本当に何者なんだよ! いきなり地球に現れたら我が物顔で暴れやがって!」
「キリがない!」
すると、そこに真っ白な光の矢が昆虫の脳天に直撃した。そこから光線が幾重にも渡って昆虫に向けて放たれる。
増援なのか? 木の陰に隠れるレンジャー達が見渡すと、見慣れない武器を担ぐどこかのレンジャー達が魔物の駆逐を始めている。
しかも戦い慣れているのか、その勢いは止まる事なく次から次へ素早く処理していった。
「彼らは一体……?」
驚きを隠せないレンジャー達。そこにロベルトが声をかけた。
「無事か?!」
「あ、あんた達は一体?」
「ルイス隊長の部隊の人かい?」
「ルイス隊長を知ってる? いかにもルイス隊長は我々の隊長だが……」
「安心してくれ。ルイス隊長と共同戦線を張る事になった部隊だ。我々もあの異形の虫の駆逐が任務なんだ」
「凄いな、あの虫を次から次へ仕留めて」
「もしかしてイェーガーって?」
「私の名前だ。君は?」
「ロベルトだ。一応、カルベローナ公国軍の所属だ。でも今はプライベートで地球に降りていてね」
「目的は同じって事だな。奥の方に戦車みたいな昆虫がいるよ。仲間が数人、殺された。許せないし逃げたら死ぬだけだから退治してやろうとしたらこんな状況だ」
「……糞ったれな昆虫だな。あなた達はとりあえず撤退を。俺達がこいつらを倒す」
「……すまない」
「みんな、増援がきた! 我々は撤退するぞ!」
イェーガーの部隊が撤退を始める。
その間にも無数の光線と光の矢が彼らを射抜いてバラバラにしていった。
「ロベルト! どうだ? 他の国のレンジャーは撤退したか?!」
「撤退した!」
「ジェニファー! とりあえず俺達は一旦、休もう。ここからはキッドとジョニーとロベルトの出番だ」
「ええ!」
とりあえず20体は倒したハザードとジェニファーは一旦、木の陰で一息つく。代わりに躍り出たのは近接武器を担ぐロベルト、ジョニー、キッドの3人だ。
彼らはアルトカークス製の武器を構えて、残りの虫を駆逐していく。
「この昆虫、銃弾には滅法強いけど、斬撃には弱いんたな。それともこっちの武器の斬れ味が鋭いのか?」
ジョニーは手にしている大剣を振り下ろし、一刀両断していく。
キッドも軽い身のこなしでナイフで次から次へ斬り裂いていった。
ロベルトもキッドと同じくデュアルウェポンの剣撃で昆虫の息の根を止めていく。
順調に駆逐していると思われた瞬間、イェーガーが言ってた戦車のような女王虫が奥の森から現れた。濃い緑色の体躯をした重装甲戦車のような重厚感、独特のフェロモンの匂いは吐き気を催す程の悪臭で、口から放たれる液体は腐蝕性の酸性が強い液体だ。
重装甲戦車の女王は眼の前に立ち塞がる者達を轢き殺そうと突撃してくる。
彼らは反射神経で咄嗟に回避すると、戦車の女王は旋回して轢き殺そうとまたもや突撃してくる。
重量は軽く地球の自動車並にありそうだ。それは地球に例えるなら車に轢かれるのと同じ痛みが伴う。あんなのに轢かれたら重症間違いなしだ。しかも耐弾性も高い。
「もしかしてこいつが戦車の女王か? どうやって闘う!? とりあえずこの突進を躱すので精一杯だぞ!」
「ハザード! 高所から狙撃を頼む! ジェニファーちゃんもハザードに続いて!」
「キッド、あれは何て名前の魔物なんだ!?」
「重甲虫、スロータークイーンって名前だよ!」
「無差別殺戮の女王か。確かにその通りだな。呑気に感心している場合じゃねー!」
「あの女王戦車、動きに特徴があるぞ!」
「ジョニー、どういった特徴だ!? 躱すだけで精一杯だぞ!」
彼らが話している間もスロータークイーンは車の走る速度で彼らに突進してくる。それは地球に住む人々から観れば、戦車に生身で戦いを挑んでいるような光景だ。
イェーガー達は女王戦車を倒す為に携行していたバズーカなどを用意して茂みに隠れて狙撃の瞬間を待ち構えている。
その他の隊員も携行していたマシンガンなどを構えて、一斉狙撃の準備を整えていた。
ハザードとジェニファーは高台に昇り、そこから狙撃する準備をしている。
ギリアムの無線からはハザードの準備OKの報せが届いた。
「ロベルト! あの女王戦車を真正面の崖まで誘導してくれ!」
「崖まで来たら森に飛び込んでくれ! 一斉狙撃をする!」
「やるしかないか! こっちに来やがれ! 戦車クイーン!」
ロベルト、キッド、ジョニーは真正面の崖を目指して走る。
その先にはハザードやジェニファー、イェーガーの部隊が森に隠れて銃口を向けて待ち構えていた。
ありったけの武装を持ってこの女王戦車を駆逐する。
ジョニーは大剣を収めて全力で走り、タイミングを図る。得物が少し重みのある大剣なので背負っていても少し脚が遅くなっている。早めに森へ飛び込まないと俺も蜂の巣にされる。
キッドはこのような状況でも面白そうに不敵な笑みを浮かべて走っている。
ロベルトはただ真正面の崖を見つめて、全力で走り抜ける。
崖が見えた。後、50メートル!
そこで彼らは一斉に森の茂みへとダイブした!
──その瞬間。
全ての火力がスロータークイーンに向けて、放たれた。
国立公園に、まるで戦争のような轟音が響き渡る。
水色の羽根を持つその魔物は群れを成してルイス率いるレンジャー隊のベースキャンプへ近づいているが、イェーガーという名の男性が退却しても状況が変わる訳でもないと隊員を率いて奮闘している光景があった。
彼らは木の陰に隠れ、天然の遮蔽物を利用しながら一匹でも多く退治する為に自動小銃を発砲しつつ、細かく場所を変えながら応戦している。
昆虫達はその鋭い脚や爪や防護服を腐らせる腐食液を放出しながら、鋭い角で突撃してくる。
その姿はまさに巨大な昆虫そのもの。既存の昆虫とは規格外の大きさの魔物と形容するに相応しい虫である。
その奥からは巨大な戦車のような女王虫が、羽虫達を操りながら重々しく進んでいる。脚が何本も生えて、尻尾はまるで蠍のような棘が無数にあり、匂いは非常に悪臭を放つ。
この悪臭はオスの虫を操るフェロモンの役割を持つ。フェロモンに毒された虫達はまるで手足のように操られ、女王に遣える尖兵として人間に襲い掛かる。
太陽の陽が落ち、空が徐々に暗くなる程に、元々暗い色彩の虫達の方に有利になりつつある。目立つ水色の羽根も空が暗闇に染まれば人間の目には何もかもが黒く視えてしまうので関係ないのである。
状況は悪くなる一方、しかしそれでも闘うしかなかった。
イェーガーの部隊は暗視スコープをおもむろに装備して、木の陰に隠れながら、部隊への連絡を試みる。だが、そんな暇もない程に絶えず攻撃を仕掛けてくる羽虫であった。
「このうざったい虫め! 死にやがれ!」
「これ以上、この方角に行くとベースキャンプが危険に晒される!」
「こいつら、本当に何者なんだよ! いきなり地球に現れたら我が物顔で暴れやがって!」
「キリがない!」
すると、そこに真っ白な光の矢が昆虫の脳天に直撃した。そこから光線が幾重にも渡って昆虫に向けて放たれる。
増援なのか? 木の陰に隠れるレンジャー達が見渡すと、見慣れない武器を担ぐどこかのレンジャー達が魔物の駆逐を始めている。
しかも戦い慣れているのか、その勢いは止まる事なく次から次へ素早く処理していった。
「彼らは一体……?」
驚きを隠せないレンジャー達。そこにロベルトが声をかけた。
「無事か?!」
「あ、あんた達は一体?」
「ルイス隊長の部隊の人かい?」
「ルイス隊長を知ってる? いかにもルイス隊長は我々の隊長だが……」
「安心してくれ。ルイス隊長と共同戦線を張る事になった部隊だ。我々もあの異形の虫の駆逐が任務なんだ」
「凄いな、あの虫を次から次へ仕留めて」
「もしかしてイェーガーって?」
「私の名前だ。君は?」
「ロベルトだ。一応、カルベローナ公国軍の所属だ。でも今はプライベートで地球に降りていてね」
「目的は同じって事だな。奥の方に戦車みたいな昆虫がいるよ。仲間が数人、殺された。許せないし逃げたら死ぬだけだから退治してやろうとしたらこんな状況だ」
「……糞ったれな昆虫だな。あなた達はとりあえず撤退を。俺達がこいつらを倒す」
「……すまない」
「みんな、増援がきた! 我々は撤退するぞ!」
イェーガーの部隊が撤退を始める。
その間にも無数の光線と光の矢が彼らを射抜いてバラバラにしていった。
「ロベルト! どうだ? 他の国のレンジャーは撤退したか?!」
「撤退した!」
「ジェニファー! とりあえず俺達は一旦、休もう。ここからはキッドとジョニーとロベルトの出番だ」
「ええ!」
とりあえず20体は倒したハザードとジェニファーは一旦、木の陰で一息つく。代わりに躍り出たのは近接武器を担ぐロベルト、ジョニー、キッドの3人だ。
彼らはアルトカークス製の武器を構えて、残りの虫を駆逐していく。
「この昆虫、銃弾には滅法強いけど、斬撃には弱いんたな。それともこっちの武器の斬れ味が鋭いのか?」
ジョニーは手にしている大剣を振り下ろし、一刀両断していく。
キッドも軽い身のこなしでナイフで次から次へ斬り裂いていった。
ロベルトもキッドと同じくデュアルウェポンの剣撃で昆虫の息の根を止めていく。
順調に駆逐していると思われた瞬間、イェーガーが言ってた戦車のような女王虫が奥の森から現れた。濃い緑色の体躯をした重装甲戦車のような重厚感、独特のフェロモンの匂いは吐き気を催す程の悪臭で、口から放たれる液体は腐蝕性の酸性が強い液体だ。
重装甲戦車の女王は眼の前に立ち塞がる者達を轢き殺そうと突撃してくる。
彼らは反射神経で咄嗟に回避すると、戦車の女王は旋回して轢き殺そうとまたもや突撃してくる。
重量は軽く地球の自動車並にありそうだ。それは地球に例えるなら車に轢かれるのと同じ痛みが伴う。あんなのに轢かれたら重症間違いなしだ。しかも耐弾性も高い。
「もしかしてこいつが戦車の女王か? どうやって闘う!? とりあえずこの突進を躱すので精一杯だぞ!」
「ハザード! 高所から狙撃を頼む! ジェニファーちゃんもハザードに続いて!」
「キッド、あれは何て名前の魔物なんだ!?」
「重甲虫、スロータークイーンって名前だよ!」
「無差別殺戮の女王か。確かにその通りだな。呑気に感心している場合じゃねー!」
「あの女王戦車、動きに特徴があるぞ!」
「ジョニー、どういった特徴だ!? 躱すだけで精一杯だぞ!」
彼らが話している間もスロータークイーンは車の走る速度で彼らに突進してくる。それは地球に住む人々から観れば、戦車に生身で戦いを挑んでいるような光景だ。
イェーガー達は女王戦車を倒す為に携行していたバズーカなどを用意して茂みに隠れて狙撃の瞬間を待ち構えている。
その他の隊員も携行していたマシンガンなどを構えて、一斉狙撃の準備を整えていた。
ハザードとジェニファーは高台に昇り、そこから狙撃する準備をしている。
ギリアムの無線からはハザードの準備OKの報せが届いた。
「ロベルト! あの女王戦車を真正面の崖まで誘導してくれ!」
「崖まで来たら森に飛び込んでくれ! 一斉狙撃をする!」
「やるしかないか! こっちに来やがれ! 戦車クイーン!」
ロベルト、キッド、ジョニーは真正面の崖を目指して走る。
その先にはハザードやジェニファー、イェーガーの部隊が森に隠れて銃口を向けて待ち構えていた。
ありったけの武装を持ってこの女王戦車を駆逐する。
ジョニーは大剣を収めて全力で走り、タイミングを図る。得物が少し重みのある大剣なので背負っていても少し脚が遅くなっている。早めに森へ飛び込まないと俺も蜂の巣にされる。
キッドはこのような状況でも面白そうに不敵な笑みを浮かべて走っている。
ロベルトはただ真正面の崖を見つめて、全力で走り抜ける。
崖が見えた。後、50メートル!
そこで彼らは一斉に森の茂みへとダイブした!
──その瞬間。
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