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サタン@異世界編PART1

父親探しの依頼料は少年の"動画出演"

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その後、クロエが全ての客を気絶させ、店内は静かになった。

少年が尻もちをつきながら目を丸くする。

「び、びっくりした……。や、やっぱり強いんだね……」

「あいつがな」

俺はクロエを指差して言うと、クロエはメイジーの服に付着した怪物ウニをおしぼりで拭いていた。

「そ、それで……。サタンさん……。父ちゃんを探してくれる……?」

少年が目線を逸らしながら聞いてくる。

「えー?タダで?」

「そ、それは……」

少年は涙目になった。

「お、おい。サタン……。確かにそうだけど言い方ってもんが……」

カトリーナが微妙な気遣いをする。

「ま、俺もピッピンプンスカ教会には行く予定だったし。行き先は一致してるけど、タダ働きはしない主義なんだ」

「………」

少年は唇を噛む。

「それに、将来お前が『人間は善意で助けてくれるもんだ』って思うのも良くない」

「そ、そんなことわかってらぁ!誰も助けてなんかくれないって!」

少年が立ち上がって拳を握る。

「じゃあさ。この子にも仕事してもらえば良いんじゃない?」

カトリーナが笑顔で提案する。

「仕事って?」

俺は耳をほじほじしながら聞き返した。

「うん!だから、この子にも『ピッピンプンスカ教会の闇を暴いてみた!』動画の出演者になってもらうんだよ」

カトリーナは自分の思いつきに胸を叩いた。

「し、出演者?」

少年も驚いた声を上げる。

「そう!お父さんのこととか、怪物ウニの話とか、ピッピンプンスカ教会の闇をぜんぶこの『カトサタンおんえあ』の動画にぶつけるんだ!」

「ぶ、ぶつけるって……」

「思ってることを全部話せばいいんだよ!それで再生回数が上がれば、私とサタンも人気になってお金になるし!」

カトリーナなりの優しさだったのだろう。

その粋な提案をされてしまっては俺も諦めるしかなかった。

「ったく。わかったよ……。今回だけな。次回依頼する時はお小遣いで10000万ギルは用意しとけよ」

子供にはありえない金額に「ははは!」とみんなで笑い合う。

「サタン様とカトリーナさんはお優しいですのね」

メイジーもほほほ、と笑う。

そんな優しい雰囲気に包まれた店内に、少年の声が響く。



「え、個人情報特定されるから嫌なんですけど」



「「「おい!!!」」」



思わず全員でツッコむ。

「ガキが個人情報なんて気にしてんじゃねぇ!!」

「そこは"パァァ"とか笑顔になるとこだろ!!なんだお前!!!」

「ま、まあまあ……」

「気持ちはわからなくもないですが……」

各々が声を上げる。



「特定されたら責任取れるんですか?」


「うるせーよ!!」


俺はガタガタ言う少年をなんとか説得すると、動画を撮るため店を出た。
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